12球団ドラフト展望②~東京ヤクルト編~

昨年のドラフト会議で目玉候補の奥川恭伸をクジで引き当てるなど、ドラフト会議における主役となったのがヤクルトだ。とはいうものの、今シーズンも苦戦が続いている。村上宗隆が主砲として一本立ちした反面、チームは多くの課題を抱えている。3つの気がかりな点から、今年のヤクルトのドラフト戦略を考えたい。

① 山田哲人の去就

今オフ最大のトピックは、国内FA権を取得した山田哲人の去就だ。今シーズンは故障の影響で本来の成績ではないが、権利を行使した場合は、大型契約が成立するような争奪戦は濃厚だ。山田哲が流出となると、どの選手をもってしても穴埋めはまず不可能と言ってよい。

昨年のドラフトでは、2名の高校生内野手を続けて指名したが、今年も内野手を指名する可能性は高い。特に右打ちの内野手は是が非でも指名したいところだ。現時点で右打ちの内野手は4名しかおらず、うち1名は外国人選手のエスコバーだ。飛躍が期待されている廣岡大志も足踏みが続いている。

以上のことを踏まえると、いずれも左打ちの昨年の2選手とは異なる右打ちで、高校生ではなく即戦力に近い大学生・社会人がターゲットになる。最有力候補は大学日本代表で主軸を担う牧秀悟(中央大)だ。広角に長打も打てることに加えて、穴も少ないため失敗が少ない選手といえる。守備面でも本職が二塁手なだけにポスト・山田哲人にうってつけだ。

② 投手陣の更なる補強

昨年のドラフト会議では、奥川恭伸を抽選で引き当ててから立て続けに4投手を指名した。4投手の中では、2位指名の吉田が先発ローテーションに入ったものの、チーム防御率はセ・リーグ最下位だ。その他の投手指標も軒並みリーグ下位であることから、1年ではチーム状態が改善できないことが分かる。

更なる懸念材料として、主戦格として活躍する小川泰弘もFA権を取得した問題もある。他球団に流出となった場合は、泣きっ面に蜂だ。昨年に引き続き、投手陣の更なる強化は不可欠といえる。

小川自身、近年は波のあるシーズンを送っていたが、今シーズンは現時点でキャリアハイのルーキーイヤーに匹敵する成績を残している。9月4日(土)の試合終了時点で、セ・リーグで4投手しかいない規定投球回数もクリアし、エース級の活躍を見せているといっても過言ではない。

現状の先発陣で、QSを安定して達成できる投手は小川しかおらず、計算できる先発投手が1人でも欲しいところだ。昨年指名した4投手は、いずれも右投手だっただけに、今年は左投手も指名しておきたい。

候補となるのは、早川隆久(早稲田大)山野太一(東北福祉大)あたりか。8月に行われた東京六大学野球春季リーグ戦で好投を見せるなど、1位で競合する可能性が高い。競合を避ける意味では、山野の指名を勧めたい。タイプとしては、杉内俊哉(元ソフトバンクなど)が近い。ゆったりとしたフォームから、ストレートにスライダーとチェンジアップを織り交ぜる。

厳しい状況の投手陣の中、清水昇や長谷川宙輝が中継ぎで一軍に定着したのは明るい材料だ。彼らの成長促しながら、負担を軽減する意味で中継ぎ投手を指名しても良い。先発投手が長いイニングを投げないシワ寄せが、中継ぎに来るのは当然の帰結なのだから。

③ ベテランが多い外野手

今シーズンは山崎晃大朗のレギュラー定着が明るいニュースだ。バレンティンの移籍、青木宣親のコンバートに伴うセンターのレギュラー争いを制したものの、外野手の主力選手にベテランが多いことに変わりはない。特にライトは絶対的な選手が不在なだけに、大きな不安材料だ。ポジション別のOPSも、同一リーグの打球団と比べて低い値を出している。

ファームでは濱田太貴が本塁打を量産中なだけに、続く選手が出てくるかが今後のカギになる。今年のドラフトでは、俊足巧打のタイプなら細川凌平(智辯和歌山)、長打も兼ね備えた選手なら来田涼斗(明石商)の指名を考えたい。ホームランが出やすい本拠地の特性も生かして、打撃に特化した選手の指名も面白い。

まとめ

2015年にリーグ優勝した一方で、シーズンによって成績の波が大きいだけに、一人でも多く計算できる選手を揃えてシーズンに臨みたいところだ。山田哲をはじめ、青木や村上といった替えの利かない選手が多いだけに、「個の力」への依存を低くできるドラフトにしたい。

そのなかで「1位・牧」「2位・山野」ができたら文句なしだ。

参考


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