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社会人野球での2年間とファームでの2年間

先日、ある大学生投手が社会人野球入りを表明した。順調にシーズンを送っていたら、ドラフト上位指名は確実の存在だった。勿論、痛めた右肘のリハビリを考えてのことだけに、社会人入りの決断を尊重するとともに、鮮烈な印象を与える投球を目にする日が来るのを待ちたい。

大学から社会人野球に進んだ場合、NPBのドラフト対象となるのは、最短で2年後の2022年になる。仮に冒頭で紹介した投手が、社会人野球での2年間を過ごすか、NPBののファームで2年間リハビリした場合について考えてみたい。双方のメリットとデメリットを簡単にまとめると以下のとおりになる。

<社会人野球>

・メリット

①都市対抗野球を筆頭に、ハイレベルかつシビアな公式戦を経験できる。

②自ら環境を選択し、プロとは異なる形でお金を稼ぐことができる。

③万一ドラフト指名されなくても、社業があるため将来の不安が小さい。

・デメリット

①必ずしも将来のNPB入りを保証するわけではない。

②個人を育成するための場所ではない。

③一つ一つの大会に合わせて調整するので、年間通して試合を行うプロ野球と野球の性質が異なる。

<NPBのファーム>

・メリット

①プロの環境に馴染むことができる。

②育成や調整のための場所であるため、自分自身の課題に集中できる。

③超一流選手との実力差が図りやすい

・デメリット

①ドラフト会議で指名される際に、自ら環境を選択できない。

②様々な誘惑が多かったり、ぬるま湯につかる可能性がある。

③引退後が決して保証されているわけではない。

<今後>

2020年、社会を取り巻く環境が一変したのは周知のとおりだ。社会人野球も激変した社会情勢に翻弄されている。チーム運営が困難になっている中で、休部や来年度の採用人数を縮小する動きがみられている。現在の状況が続く限り、事態が好転することを望むのは酷だろう。

 厳しい状況が続いているのはNPBも同様だ。今期は観客動員を大幅に減らすなど、球団経営も昨年までとは全く異なる状況になっている。ドラフトを巡る情勢も選手にとっては厳しい状況が予想される。指名人数が抑制されたり、選手に支払われる契約金も低く設定される可能性もある。

社会構造の劇的な変化によって、両者ともに今後の見通しが立っていないのが実情だろう。先述した双方のメリットとデメリットも、近い将来非常識になる日が来ることだってあり得る。

世界中の誰しもが想定外の現状の中で下した選択が、数年後どうなるか現時点では分からない。冒頭で紹介した投手の場合も同様だ。しかしながら、難しい状況でも最高の決断だったと証明できる力が彼の右腕には宿っている。そのためにも、万全な身体を今は取り戻そう。

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