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155キロ左腕・早川隆久を中日視点で考える

“竜ドラフト1位急浮上 早大 早川 155キロ 12K 1失点完投“

8月11日付の中日スポーツ1面は中日でもなく、高校野球でもなく東京六大学野球リーグで早大・早川隆久の快投だった。中日ドラゴンズ歴史研究家の木俣はようやっとる氏(@kimata23)によると、中日スポーツにおける大学生の選手個人での1面は、2015年の大晦日の創価大・田中正義(現ソフトバンク)以来(※)の快挙とのことだ。

勿論中日にとって早川は、複数いるドラフト1位候補の一人という位置づけだろうが、ドラ1・早川は現在のチーム事情を鑑みると現実味のある話だ。というわけで、早川と中日のチーム事情について掘り下げたい。

※中日にドラフト指名された選手は除く

1 選手としての特徴

コンスタントに150キロ前後を記録するストレートに加え、スライダーやツーシームを投げる。140キロ前後のストレートを投げていた高校時代から、10キロ程度球速が上がったことで、コーナーワークの勝負が多かった高校時代から力勝負もできる投手に変身した。

2 ドラフト1位候補に浮上した背景

中日のドラフト1位候補に早川が浮上してもおかしくない理由としては3つある。

① 大野雄大の国内FA権取得

② 大野以外の先発左腕も不足気味

③ 速い球を投げる先発左腕の希少性

まず中日にとって頭を悩ませるのが、エース大野雄大の去就だ。2019年には最優秀防御率のタイトルを獲得し、イニングイーターの役割を果たす左腕の動向次第で来シーズン以降の先発陣のやり繰りに大きな影響を与える。万一流出した場合は、投手陣が崩壊しかねない。

次に悩ましい点としては、大野以外の先発左腕も不足気味の点だ。ロメロはオープン戦で長期離脱し、ポスト大野として本来名前が上がるべき小笠原慎之介と笠原祥太郎も、病み上がりのシーズンで低迷している。投手陣の年齢構成から考えても、両投手より年齢が下の支配下登録の投手は、中継ぎで一軍デビューを果たした大卒ルーキーの橋本侑樹と、故障中の高卒2年目の垣越建伸しかいない。チームの置かれた状況を踏まえると、即戦力の見込みがある先発型左腕を確保するメリットは大きい。

そして最後に触れたいのが、スピードボールを投げる先発左腕の希少価値が高い点だ。

2019年のNPBにおいて規定投球回に到達した全15名のうち左投手は、大野雄大(中日)とジョンソン(広島)、今永昇太(DeNA)の3名しかいない。加えて3投手ともストレートの平均球速は、セ・リーグの平均より上だ。

先発完投という時代は過去の遺物になりつつあるが、リリーフ陣の運用を考えると長い回を投げる先発投手は、チームに必要になる。しかもその投手が左投げかつスピードボールを投げることができれば、他球団に対して大きなアドバンテージを手にすることができる。

以上のことから、「ドラフト1位・早川隆久」は中日の現実に即した指名といえる。

3 今後の展望

早川に関して今後注視したい点は投球内容だ。高校時代から注目を集め、大学でも1年次から起用されてきたものの、勿体ない失点が多く、勝ちきれない面があった。3年終了時点では7勝12敗と負け越しており、歯痒さが拭えなかっただけに、次戦以降の投球内容には目を光らせたい。エアポケットに入る場面や終盤のスタミナ切れがなくなれば、中日スポーツの1面を飾った投球は本物だ。

ちなみに現在の早川と似た境遇の選手が昨年もいた。広島で新人ながら一軍で活躍する森下暢仁だ。森下も明大時代の3年次までは高い素質にに結果が伴わなかったが、4年時に「勝てる投手」に変貌を遂げ、大学ナンバーワン投手を確固たるものにした。早川も同様に今季限定の真夏の短期決戦を制し、文句なしの1位指名候補としてドラフト会議当日を迎えてほしい。


注) 平均球速のデータは以下のサイトから参照


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