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シドニー五輪4位から考えるプロとアマの融合⑤

シドニー五輪後の日本代表は、周知のとおりプロ選手が中心の編成に変化した。とはいうものの、アテネ五輪は銅メダル、北京五輪は4位という結果に終わり、金メダル獲得はならなかった。また、北京五輪以降の大会で野球が五輪の公式競技から外される憂き目にもあっている。そのような状況にあって、「五輪への復活」を目指す過程で「侍ジャパン」が設立され、代表チームを取り巻く環境の整備もされていった。だからこそ、プロとアマチュアが融合するチームを五輪で編成する意義がある。

ワールド・ベースボール・クラシック(以下WBC)やプレミア12といった大会が真の意味で野球世界一を決める大会に発展する今後を考えると、アマチュア選手が入る余地はほぼないだろう。しかしながら、五輪にはその余地はあってもよいのではないか。

アマチュア選手のみのチーム編成では結果を残すことが困難になってきたために、プロ選手の力を求めた経緯はあるものの、アマチュア選手、特に社会人野球の選手に五輪があることは、競技を続けるうえでの大きなモチベーションになる可能性があるからだ。また、バブル経済の崩壊後に企業チームの休部・廃部が相次ぐ社会人野球を盛り上げるきっかけの1つにもなるのではないか。

勿論,五輪に向けた継続的な強化が必要になるため、都市対抗野球を始めとした各種大会の日程の調整が必要になってくるものの、実行する価値はあるはずだ。

一方、プロ選手のことを思うと、「侍ジャパン」で結果を残してきた面々が、今更アマチュアとの混成チームを再結成することに懐疑的な意見の方が多くなるのは否めない。プロ選手も国際大会を多く経験してきている中で、シドニー五輪時のようにアマチュア選手の国際大会での経験値を頼ることは少なくなるだろう。また、当時と同様に立場の違う両者の間を持つ選手が果たしているのだろうかという問題にどうしても帰結する。

更に、IOCや世論の声に耳を傾けると、アマチュア選手だけの編成は不可能に近い。それ故に、アマチュア球界のためにもプロが一肌脱ぐことは大きな意味を持つ。

「日本シリーズ」、「都市対抗野球」、「甲子園」等多くのカテゴリーで頂点を決める舞台が整備されているからこそ、この国の野球は発展してきた。その一つが欠けても現在の野球界の姿は無かったはずだ。もし、五輪の舞台に野球という種目があるならば、様々なカテゴリーの枠を超えたチームを編成する価値はあるはずだ。

シドニーでの苦い経験が、本当の意味で生きる瞬間はあらゆる垣根を超えた真のドリームチームが完成し、最高の結果を残したときになるだろう。


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