見出し画像

智辯和歌山・小林樹斗が創る新たなトレンド

小林樹斗について

甲子園での交流試合で、高橋宏斗(中京大中京・右投・3年)や中森俊介(明石商・右投・3年)とともに、「ドラフト上位候補」として熱視線を浴びていたのが小林樹斗(智辯和歌山・右投・3年)だ。先発・完投した前2人とは異なり、小林はリリーフで登板して150キロを超えるストレートで相手打者を力で抑え込んだ。

リリーフで起用された背景には、適正プラス智辯和歌山のチーム事情もあった。矢田真那斗(左投・3年)ら他の投手が充実しており、小林を抑えで起用できる体制が整っていたからだ。先発投手としての実績が殆どない点は、多くのドラフト候補の高校生との大きな違いだ。

持っている素質の高さを評価する声は多いものの、長いイニングを投げていない高校生投手をドラフトで上位指名することに疑問を持つ方は多い。しかしながら、小林の空振りを奪えるストレートには懐疑的な意見を跳ね返すだけの魅力が詰まっている。

「高校野球の投手起用の更なる分業化」

今後の高校球界では、投手起用の分業化が現在以上に進むことによって、高校生でリリーフを専門とするドラフト上位候補は増加すると思われる。

高校野球に球数制限ができたことで、勝ち上がるためには複数投手を揃えざるを得ない。加えて、金属バットの力によるホームランやゲリラ豪雨のようなビッグイニングの攻撃が投手の負担を大きくしている。

複数投手を擁するチームは多数あるものの、その中で差別化を図るとなると投手起用の分業化の推進が不可欠になる。最終的には以下のような分業体制が出来上がるだろう。

① 先発①

② 先発②

③ 変則タイプ(サイドスローやアンダースロー)

④ ユーティリティー(起用法を問わない)

⑤ 中継ぎ

⑥ 抑え

①~⑥に加えて、野手として出場しつつ投手起用のできる選手も加わると、より層の厚い投手陣になる。能力の高い選手が集まると、能力差ではなく適性で役割が変化することが予想される。

分業化の先に

高校野球で投手の分業体制を敷くことで、適正ポジションを早い段階で知ることができるようになる。一方で、プロ入り後に紆余曲折を経て自分の立ち位置を見つけていく過程が失われてしまう側面もある。プロ入団時に出来上がってしまった先入観が、選手の成長の妨げにならないことを祈るばかりだ。逆に言えば、新たな魅力を見出すプロのスカウトとコーチの手腕が、今まで以上に問われる時代が到来する。

小林のような起用法をされた投手が上位指名されることが当たり前になるためにも、小林自身の右腕には野球界の新たなトレンドを生み出すかどうかの命運がかかっている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?