《児童小説》 吾、猫になる 1 ようこそ、キャットストリー島3

夢話ノ参 獅子舞舞の魔法の館

 笛の音が響いて、続いて、太鼓の音がする。

 どこだ、どこだと、ソワソワ、キョロキョロ、黒ネコ。
 竜の空の遊戯のように、獅子舞が、ゆったり、大きく舞っている。

 ピーーーと通る音色、ドンと重く響く音、優雅な獅子舞の舞につられて、トコトコトコと、黒ネコは、尻尾をブンブン振って引き寄せられた。

 獅子舞に、興奮気味に、一緒に舞って、右に左に。

 ドンと、太鼓が鳴るたびに、ビクッと驚き跳ねて、また真似て。

 右に、左に、右に、左、ストンと開いていた穴に、黒ネコ落ちてった。

 その穴から、激しく暴れ大波のように舞う、楽しげな獅子舞が見えれば、黒ネコは落ちてるのに、はしゃいで、興奮気味。

 ドカッっと、床に頭を打って、目を覚ましたのは、黒ネコ。
 ふかふか大きなソファーから、落ちた黒ネコ。
 そのソファーには、香箱座りの三毛猫がいて、ちらっと、落ちた黒ネコを、片目を開けて見たが、眠いのか、また目を閉じた。

 「イタタタタタ」

 頭を両手で器用に抑え、黒猫は半泣き顔で、おじさん座り。

 「にゃんで、もう...にゃ?」

 黒ネコは、喋りづらそうで、頭の手を口元に持っていき、小首を、可愛らしく傾げる。

 「起きたんにゃぁ〜。ずいぶん、派手な起き方だにゃぁ〜」

 ドン ドン ドン

 そんな音が似合いそうな、大きな大きな、二足歩行のハチワレネコがやってくる。タキシードを着て、くつ下を履いたような模様で、涙の雫のような、ラピスラズリのペンダントトップを、首に下げている。

 「どこの、飼いネコにゃぁ?」

 「誰が、飼いネコにゃ!人間だにゃ!にゃ!ネコが立ってるにゃ!喋ってるにゃ!にゃにゃにゃ!!!」

 「うるさい、黒ネコだにゃぁ〜。落ち着けだにゃぁ〜」

 ハチワレネコは、左人差し指をピンと上に立て、くるくるっと二回転、パチンと指を鳴す。
 ぽんっと、ハチワレネコの手の中に、アンティークな金縁丸型の鏡が現れた。

 「ほれぇ〜、よぉ〜く、見てみるにゃぁ〜ん」

 鏡を両手で持って、ずいっと黒ネコの方へ出す。
 黒ネコは、目をキョロキョロおどおどしていたが、恐る恐る、鏡に写る、自分の姿を見て、固まってしまう。

 「ん?まいったにゃぁ〜」

 鏡の横から顔を出して、黒ネコを見た後に、鏡をヒョイっと上に投げれば、鏡はすぅーっと蜃気楼みたいに消える。
 困り顔のハチワレネコは、頭をぽりぽり掻いた後、腕を組んでから近づけば、黒ネコを覗き込む。

 「わたしゃ〜、この魔法の館、ちきゅうやの主人、OTTOと書いて、オット。みんなは、はっちゃんって、呼んでるにゃぁ〜。で、きみゃぁ〜、どっから、落っこちてきたんにゃぁ?」

 オットの瞳と、黒ネコの瞳が、重なる。
 黒ネコは、オットの黄金に輝く瞳が、怖いと思う反面、お月様みたいで綺麗だなと、ぽぉっと魔法に掛かったみたいに、見惚れた。

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雨月そら
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