《児童小説》 吾、猫になる 1 ようこそ、キャットストリー島9

夢話ノ玖(9) レッサーパンダとペンギン夫婦

 お元気三ネズミと一緒に、そらと花は食堂の中へと入った。中もガヤガヤとにぎわって活気があって、みんな美味しそうにご飯を食べて嬉しそうで楽しそう。
 一番奥のオープンキッチンからぷんぷんとただよってきた美味しそうな匂いで、我慢できないとそらのお腹の虫がぐーぐー鳴り出して、クークー合唱する様に誰かのお腹の虫も鳴き出した。
 そらは恥ずかしそうに両前足でくるくるお腹を撫でながら何気なしに花を見ると、すまし顔なのにどこか恥ずかしいそうにしている様に見える。

 「あっ!!おーい!!ぱんだのおばちゃん!!おはちわですですー!!」

 ヨクハが真っ白な小さなパンダの顔がししゅうされた割烹着と三角巾を身に付けて、ちょっとふっくらした体形に二本足で立っているレッサーパンダへ、片手を上げて元気よく呼びかけた。もちろん、他の二匹のネズミも同時、同じく手を上げている。

 「あんらぁ〜!ヨクハちゃん!まぁ!ヨクミちゃんに、ヨクキちゃん!お久しぶりやんねぇ〜、元気そうやん...ん?何、その子ら、もしや...」

 レッサーパンダのぱんだのおばちゃんは、丸いお盆を脇で抱え、片方の前足をパタパタ振りながら嬉しそうな顔をしながら近寄ってきて、そらと花に気づくとお盆で口元を隠し、真面目な顔してまじまじと見ている。

 「新しいご主人さまさまーです!」

 「そう、犯人なんやね」

 「「犯人ではない」」

 ヨクハが喋ると同時に、ぱんだが真顔のまま意味不明な言葉を発し、そらと花は即座にツッコミを入れる。

 「あんらぁ〜、いーぃ、ツッコミ!花丸、合格!さぁ〜、今日のスペシャル定食を食べさせてあげましょーね。ちょー、キッチン近くのカウンターあいたやん!メガちゃん!オリちゃん!この子ら新入りさんやから、スペニぃといつものチーズ三つちょうだいなぁ〜!!」

 「「ガァッテン、承知のスケー!!」」

 キッチンの中で野菜を宙に舞わし中華鍋を器用にふるって料理を作る、頭の白ヘアバンド模様が可愛いのっぽで眼鏡のジェンツーペンギンと、カウンターの上を片付けてる、キチンのペンギンそっくりだが少し小柄でまん丸つぶらな瞳が可愛くて鮮やかなオレンジの嘴が目立つジェンツーペンギンが、元気よく同時に返事を返す。
 二匹のペンギンは夫婦なのか仲良さそうに、お揃いの三角巾とパンダのエプロンをして、嬉しそうにニコニコ笑いながら作業を続ける。

 「さーさ、キュッキュッと綺麗にしたからここ使って、使って!今日から、この島の仲間なんだから、遠慮しないで、さーさ!」

 テーブルを片付けているジェンツーペンギンが、少し早口でニコニコしながら手招きしている。もう片方の羽根で、お盆に乗ったエベレストかというほど山積みの食器を器用に軽々しく持っている。

 「きょーはね、いーいおっきな魚が釣れたんだよぉぅ〜。刺身ぶつ切りてんこ盛り盛りだよ、座ぁって座ぁって!」

 そう言ったジェンツーペンギンは、さっきまで中華鍋を振るっていたはずが、今は二本の大きな包丁を両手に持っていた。
 まな板のメジマグロを包丁で刺して宙に投げると、シュッパパパパっと宙で身と骨と皮に一気に解体して、まな板へ落ちた身だけを手早くぶつ切りにしていく。

 「オリちゃん!はいよぉぅ〜!スペニっーお待ち!」

 「あいよ、メガちゃん!」

 あっという間にオリの手の上にあった山盛りの食器は、洗剤もこもこの洗い場の中。オリはニンジャかというくらい素早い動きで、メガがキッチンからお盆に乗せて出してきた、色んな魚が富士山の様に山盛りの海鮮丼と骨付き尾っぽがぷかぷか浮かぶあら汁を受け取って、カウンターテーブルに二つ並べた。
 それを見たら、そらと花はぐーぐークークーお腹を鳴らし、目をキラキラ輝かせて嬉しそうに席に着いた。

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