《児童小説》 吾、猫になる 1 ようこそ、キャットストリー島7

夢話ノ漆 よろしくお元気三ネズミ、案内人

 「おぉ〜お!怖いにゃんねぇ〜。でも仕方ないにゃん。この島に住むには、条件があるにゃ〜よ〜」

 睨んでる花にそう言うが、オットは特には怖がってる様子はない。条件と言った時に、にやぁ〜と大きい三日月みたいな笑みが溢れ、ピンと一本だけ器用に指を立てる。

 「一つ、この島で必ず働くことにゃ。ただそれだけ、実に簡単にゃ。なんでも好きな仕事を選べるにゃんから〜」

 口元に片方の前足を添え、にひひっと笑うと話を締めくくる。

 「なんでもいいなら、あなたの所で働かなくても問題はないのよね?」

 花はきゅっと、そらを守るように抱きしめる。

 「まぁ、にゃん。でもにゃ〜、記憶を取り戻すなら、ここで働いてた方がお得にゃんだけどにゃ〜」

 「なら、ここで働くにゃよ」

 花に抱きしめられたままのそらは、片方の前足を上げてると、そう言った。

 「そら!」

 「だって、花、ここは、魔法を取り扱ってるにゃよ?魔法!すなわち、ミラクル!」

 「...そら、都合が良すぎると思わないの?」

 「魔法くらじゃなきゃ、吾が人間に戻れる方法は思いつかないにゃ...」

 「...そら...」

 二匹はまた抱きしめあって、慰め合っているように見える。

 「...お取り込み中に悪いけどにゃ、別にここの手伝いは竜と戦ってツノ持ってこいとかそんな恐ろしい感じじゃないにゃ。むしろ、どっかいった魔法を拾って集めるだけでいいにゃんから、簡単にゃよ。それに、特別サービス!そこの陽気なお元気三ネズミつけるから、もーチョチョイのちょいにゃよ〜」

 「そうにゃか!それはありがたいにゃ!」

 先ほどの重たげな空気はどこへやら、そらは嬉しそうにそう言って両前足で万歳した。それを見た花はやれやれと小さく首を振り、もう止めるのをやめたようだった。

 「じゃー、そういうことにゃんから、お元気三ネズミ、これからの案内はよろしくにゃよ〜」

 三匹のネズミはイエッサーっと掛け声あげて敬礼をポーズをオットにすると、くるりと回ってそらと花に向き合う。

 「はい!どんな小さなことも見逃さない、まるっとお見通しのヨクミとはあたいのことよ!」

 最初に、小さい目に、前足で双眼鏡を作って覗いて言ったのは一番右の少し小さいネズミ。

 「ふっふっふっ、壁にわっちの耳あり、よく聞こえちゃうジゴク耳のヨクキとは、わっちでやんす!」

 次に、真ん中の少しイケメン風の一番背に高いネズミは、耳の後ろに前後ろ足を添えて言った。

 「あぁ〜〜い!なんでもかんでも口が先に出ちゃうってしゃべれば暴走特急、機関銃イヤイヤ、回る回る誰よりもベリなら魔剣イヤイヤ、負けんです!巧みな匠のヨクハとは、アチキのことよ、よろ、よろしくですよ!」

 最後に、左の一番小柄なネズミが元気いっぱいにペラペラととめどなく、前足でメガホンみたいな形を作り口に付けて喋った。

 三匹は全て言い終えたタイミングで、顔を見合わせると小さく頷き、左前足と左後足を大きく前に出し、右前足と右後足は後ろに引くという歌舞伎みたいなポーズをする。

 「我ら、お助け戦隊案内人、お元気三ネズミ、ヨ〜ロ〜シ〜ク〜ねー!」

 三匹同時にそう言って、後足は揃えくの字でお尻を突き出し、左前足は腰に、ペロリと小さく舌を左上に出せば、元気よく右前足でVサイン決めた。

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