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4回目のデートから別れまで

平日の朝、いつもより1時間遅く目が覚めた。スマホをみるとアラームは時間通り鳴っていたようだったが全く気がつかなかった。
いつもなら急いで準備を済ませ会社へと向かうのだが、今日は仕事終わりにまやさんと焼肉デートに行くため1時間早く早退する予定だったので出勤するか悩んだ。

どうあがいても遅刻するのは確定している現実と向き合い、15分ほど葛藤した後に僕は先輩に電話をかけ素直に寝坊したことを伝えて今日は有給扱いにしてもらった。いつも通り仕事もそんなに忙しくないので、遅刻した上に早退という舐め腐った勤務態度を選択するより、いっそ有給で休んでしまったほうがいいという考えに至ったのだ。
それにもしかしたらまやさんが暇なら1日遊べるかも、とも思っていたので「今日寝坊して休んじゃった」とまやさんに連絡を入れた。
しばらくすると返信が返ってきた。

「そうなんだ!」
「私も何もなかったらよかったのにね」
「16時からリハビリがあるの」

まやさんはスノボで痛めた肩のリハビリに通っていたことを思い出した。
16時という今日に限っては中途半端すぎる時間からのリハビリをうまく乗り切りる解決策を考えたが、そんな都合よく遊ぶ案は思い浮かばなかった。
どうしようもないかと思いつつも、せっかくだし遊びに行きたいよねと話し合っていたらまやさんはリハビリをキャンセルしてくれた。
リハビリをキャンセルしてまで、僕と遊びたいと思ってくれてるんだと考えたら嬉しくなって頬が緩んだ。そうと決まれば何をして遊ぶかだが、少し考えたかったので先にシャワーを浴びて身支度を進めることにした。

シャワーを済ませてまやさんに3つ提案をした。
一つは動物園、もう一つは水族館、最後の一つは今日オープンのカステラを食べに行くというプランだ。
カステラを食べに行くプランは、カステラを食べた後は提案した時点ではノープランだったので、個人的には動物園か水族館がいいなと思っていた。
まやさんから返事が返ってきた。

「わー!久しぶりに動物園行きたいです!」

ということで、急遽動物園デートが決定した。
僕は残りの身支度をテキパキと済ませて、平日の優越感を感じながら待ち合わせの駅へと向かった。

お昼前ぐらいに待ち合わせの駅に着いた。
5分ぐらい待っていると電車の到着時間通りにまやさんはホームの階段を降りてきて僕を見つけると手を振ってこっちへと歩いてきた。
「おはよう!」と二人ともニコニコしながら挨拶をした。
待ち合わせした駅は乗り換えをするための駅だったので、二人でまた電車に乗って仲良くおしゃべりしながら動物園に向かった。

動物園に着くと平日の割には人が多いと思ったが、休日に比べたら全然空いてるほうだろう。特に並ぶ必要もなくチケットを購入した。
ここでもまやさんは財布を出してくれたが、支払いが発生するたびに現金を受け取るのは面倒なので、今回も夜ご飯の時にまとめてざっくり計算で半分よりも少な目の金額を払ってもらうことにした。
最近は専らキャッシュレスなので小銭を触るのに少し抵抗を感じるようになってきている。

園内に入ると、家族連れと遠足で来ているであろう子供たちが目立っていた。やはり平日ということもあり、どのコーナーもそこまで混雑していることはなく、快適に観て回ることができた。
サイ、シカ、カワウソ、ゾウ、カンガルー、レッサーパンダ、アシカなどなどいろんな動物を観たが寝ている動物が多かった気がする。
温かい日差しに照らされて気持ちよさそうに寝ている動物たちはみんな可愛くて「平和だね~」なんて言いながら二人とも癒された。

動物を観ていると、時折疑問に思うことがある。
「ゾウは水を飲むとき鼻から吸って飲んでいるのか?」など素朴な疑問だ。
まやさんは疑問に思うことがあるたびにスマホで検索していて、出てきた情報を僕に伝えてくれた。僕もわからないことはすぐに検索してしまう癖があるので、その気持ちはすごくわかるし一緒に勉強している感じがして楽しかった。ちなみに、ゾウは鼻の中で水を溜めて口に向かって噴射して水を飲むらしい。

園内のフードエリアで昼食を済ませて、残りの動物たちも同じような感じで見て回った後に、動物園のすぐ近くにある展望台に登った。
展望台からの景色は雲が少なくとても綺麗な夕焼けで、ここで告白してもいいかなと思ったが、周りを見渡すと小学校低学年ぐらいの子供たちが時折奇声を発していたのでやめた。

動物園と展望台を満喫した僕たちは駅へと戻り、予約していた焼肉屋さんへと向かう。お店に着くとホームページで見た通りの少し薄暗くて席が横並びの個室へと案内された。コースもあったが僕とまやさんは牛タンが好きなので牛タンを計4人前ぐらい注文して、あとは適当にサラダとか少し高めのお肉とかを注文することにした。
お酒も飲んで少しイチャつきながら牛タンもいっぱい食べられて幸せだった。

注文した料理を全て食べ終わり雰囲気もいい感じになったところで、まやさんにちょっと言いたいことがあるんだけどいい?と言った。

「まやさんのことが好きです。よかったら僕と付き合ってくれませんか?」と告白した。
お酒が回っていて少し酔っていたがそれでもめちゃくちゃ緊張した。

まやさんは笑顔で「うん」と頷いたあと、「こんなにちゃんと告白されたの初めて」と少し照れていたのが可愛かった。

こうして僕とまやさんは付き合い始めることとなったが、付き合い始めてから6日後の夜にまやさんからラインが届いた。

流石にそのままラインの内容を載せるのはどうかと思うので、要約すると
元カレとの未練が断ち切れないので別れて欲しいのと、ラインは用件があるとき以外したくないし、会う頻度も1週間に1回か、2週間に1回でいいし、私のボケに突っ込んでくれないのが合わないと感じているといった内容だった。

びっくりである。まさか付き合って1週間も経ってないのに別れ話が出るなんて思わなかった。

僕は用件がなくても今日あった出来事とか話したいことがあればラインでやり取りしたいと思っているし、会う頻度も1週間に2回ぐらいは会いたいし、ボケに関してもつまらないと感じたものに関しては、スルーしてしまうことがあったりするのでそれは合わないなと思った。
僕がまやさんと合っていると思っていたのは、まやさんが全て僕に合わせていてくれただけだったことがはっきりした。

実はまやさんはとの間に何となくだが温度差を感じるところがあった。

例えばラインの返信速度だが、基本的にまやさんは昼間はほとんど返してくれず12時間以上返ってこないことが頻繁にあった。
しかし夜になるとちゃんと返してくれるし、テンポよくやり取りもできていたのでまやさんの生活習慣や人柄を考えたら少しモヤモヤしつつも仕方ないかと思っていた。

このモヤモヤしてる部分について話すと、どんなに忙しくてもトイレ行ったときとかに返信できるよね?という持論があるからである。むしろ付き合いたてでお互い好きな状況なら、返信する時間ぐらい捻りだせるはずだと思っている。

僕は普段アップルウォッチを付けているのでお風呂とか寝ているとき以外はほぼ100%通知を即座に確認している。必要な用であればすぐに返信するし、必要な用でなくても12時間以上も放置することはほぼない。
誰であろうと送られてきたメッセージはすぐに確認して返信する内容を考えたいのだが、これを用件があるとき以外ラインをしたくない人に話したところで恐らく理解されないだろう。

あとは付き合ってから夜に会う時間を作って少しだけ桜を見に公園へ行ったことがあったのだが、ベンチに座って話をしているとまやさんは寝てしまった。寝たフリとかではなく、繋いでいたまやさんの手が時折ピクッとなっていたので本当に寝ていた思う。

よさこいの練習とバイトで疲れているのは分かるが、好きな人と話していて眠くなって寝ちゃうとかそんなのある?と思った。
しかもベンチに座ってしゃべり始めて15分とかそこらである。
僕もその日はいろいろお出かけしてまやさんほどではないにしろ、疲れていて眠気はあったが本当に眠ってしまうほど眠くなる気は全くしなかったし、眠ってしまったらせっかく時間作って会ってるのにもったいないと思う。

これについても、もっと仲良くなったうえでのことなら特に気にはならないが、付き合いたてということを考慮すると少し気になってしまった。
その日はまやさんが目を覚ましたタイミングで、今日は帰ろうかと言って帰った。

まやさんとのやり取りに話を戻す。
とりあえず聞きたいことが多すぎて電話で話をしたかったが、電話だと上手く話せないからと言われたので全部メッセージでやり取りをした。
「元カレともラインは用件のない時にしかラインしてなかったの?
告白してくれたときはどういう気持ちでオッケーしてくれたの?」
と聞いてみたら一言

「そういうとこも嫌なの」

と言われた。

あまりにも幼稚な一言に正直あきれてしまった。

そもそもいきなり別れたいではなく、不満にあることがあったのなら素直に相談してどうしていくかを決めるべきだと思うし、こういう大事な話はメッセージではなく電話でもいいので直接話し合うべきだと思う。
相談もなくいきなり不満をぶちまけて別れたいはさすがに自分勝手すぎる。

だがそういった相談もなかったということは端から僕と付き合っていく気がなかったとも思える。
ならどうして告白をオッケーしてくれたのか、本当に謎である。

まやさんと話し合うことはもう無理だと悟ったので、自分の勝手な勘違いで勝手に好きになってごめんなさい、話してくれてありがとうさようなら的な感じで返信をして、彼女とのお付き合いはたった1週間で幕を閉じた。


ツイッターで祝福してくれたみんなにはこんな不甲斐ない結果で終わってしまい非常に申し訳ない気持ちでいっぱいです。どうかお許しください。

今はアプリを再開させる気は起きないですが、恐らく時間が経てば再開させていると思うので新たな出会いがあれば、また書き留めていくつもりです。

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