宝塚の『ポーの一族』


N緒ちゃんが「私の好きな娘役さんがメリーベルをやるの!」というのでチケットを用意してくれたので観に行ったのがその昔、東京宝塚劇場『ポーの一族』。

そしてまた、スカイステージで改めて見てしまいました『ポーの一族』です。

宝塚はコミックの舞台化は苦手ではないはずですが(天下のベルばらあるし)、実はコミックよりも古典小説の舞台化の方が相性がいいのではと思っています。宝塚にはどーんと重いのをばーんとやってほしい派!の私はコミック原作の舞台はややライトに感じてしまう……。

世界の文豪の傑作たちのコテコテ感はやっぱり宝塚にあうと思う。
プーシキンの『大尉の娘』の「黒い瞳」然り、レマルクの『凱旋門』然り、ツルゲーネフの『はつ恋』然り、トルストイの『アンナ・カレーニナ』然り、スタンダールの『赤と黒』然り。あと、『新源氏物語』とかね。

でも、『ポーの一族』に関しては違いました。おおおお!すごい!って思ったです(偉そうな私)

①宝塚は進化している
ヴィジュアルの作りこみ方がスゴイ。ヴィジュアルを原作に寄せつつ、でも宝塚にする。おお、原作まんまですね!のエドガーの明日海りおさんとメリーベルの華優希ちゃんの再現度にびっくり!

②明日海りおはすごい
非常に今更山の今更田太郎ですが、数年に一度しか宝塚を観なくなっていた私にもこのひとすごいんだなあとわかりました(すみません。平たい表現で)。ビリビリした緊張感に並々ならぬものが。すごいぞ、宝塚!って思いました。

③小池修一郎の熱意
小池先生はキャリアを積まれて一時期、もう宝塚でやりたいことはなくなっちゃったのかなあ?などと心配になった時期もありました。敢えていつ頃、とは言わないけど。
『ポーの一族』に関しては構成、テーマや台詞の選択が原作をなぞる以上の情熱がはみ出していた。意外なとこですがシーラをトップ娘役に割り振って思想(一族の繁栄)をもたせるとか、いいっすね!
細かいところだけど、ゆうるり、とか原作の言葉を効果的に拾ってきて原作リスペクト&小池スキルを見せつけられました。あの場面、いいっす!

④アランの生々しさ
柚香光さんのむき出しの存在感みたいなのが、対エドガーとして生きてる感じ。作りこんだエドガー(非人間)の明日海さんに対して、無邪気な存在感が生々しくて。キャリア積んだらこういうの、消えていってしまうのかしら……。

いつか、宝塚で『トーマの心臓』もやるのでしょうか。小池先生。どうなんでしょうか。その時、宝塚にはどんなスターがいるんでしょうね。

今回、映像はありますが、『ポーの一族』を見返して思ったのは、やっぱり小池修一郎はうまいよな。ただのコミックの舞台化に終わらせない感動を届けてくれたもの。原作に舞台エッセンスを加えて世界を立ち上げて、原作とはまた違った肌触りの感動をもらいました。

『天は赤い河のほとり』も『はいからさんが通る』も楽しくて大好きですが、『ポーの一族』は圧倒的なパワーだったな、としみじみ。

『ポーの一族』はいくらでもいろんなヴァージョンが作れる原作ではありますが、明日海さんエドガーなくしては成り立たぬ……!という舞台だったと思う。他キャストが思い浮かばないっていいですよね。また、こういう舞台が観たいです。


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