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時期を失うべからず

「いつはじめるかを考えている間に、はじめるにはすでに遅くなっている」

ローマ帝国時代の修辞学者マルクス・ファビウス・クインティリアヌス(35〜100頃)が著書『弁論家の教育』の中で述べた言葉。
「いつはじめようか、いつはじめようか」
と思っているうちに遅くなってしまうというわけだが、
これも教訓的な話である。

この逆を行くのがシーザーで、彼は準備を整えてから戦争を始めたことがない。
相手がどんな大軍であっても、とにかく手持ちの駒で戦争を始めてしまう。
その中で考え、勝ちに導いていくのである。
天才だからできたことかもしれないが、それがシーザーのやり方だった。

考えているうちに遅くなるということは、私の人生を振り返ってもあることだ。
「あれをまとめておこう」
と考えていて、書きはじめないままになっているものもある。
今から始めようとしても、もう遅すぎたというのは多々あることである。
《渡部昇一・著》

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