中谷宇吉郎の森羅万象帖
面白かった。
なんとも言えない読後感。
福岡博士が寄稿しているので手に取った著作だったけど、
氷の研究をされていた中谷宇吉郎さんのエッセイから辿った世界観に
引き込まれた。
「雪は天から送られた手紙である」
名言だったそうで、
浅学の私は知らなかった。
雪の結晶を調べることで上空の状態がわかるという意味らしい。
(福岡博士はそれだけじゃないと述べられていますが)
この本には
理化学研究所で寺田寅彦氏助手となり、火花放電の研究をしていた中谷さんが、
北海道大学に赴任したことにより風土に根差した研究という方面から
雪の研究に従事された流れ、
今のように便利な時代ではない時にどのようにして研究が為されていくのか、
研究に対する思いや、哲学的な思い、
それを
苦労話ではなく、
とても軽いタッチでシンプルに伝えている内容に
ぐんぐん引き込まれてしまった。
失敗した、綺麗じゃない写真にもフォーカスし、
美しくない結晶にこそ価値があると書かれている。
氷の結晶の写真はとても美しい。
水の結晶の写真と同じである。
美しくない結晶にも ではなく
美しくない結晶にこそ である。
この言葉。
美しすぎる。
科学とは
「ほんの少しだけ何かをする前に、ちょっとだけ、考えてみること」
これは何に対してもそうで、
考えてみたらわかりそうなのに
全て鵜呑みにする現代社会にとても大切な響きだと思う。
自然の神秘と
現象的な物理は深い淵で共に存在している。
それは、実験で明らかにする、というよりは、
明らかにできない部分で繋がっているのだと思う。
日本の古代に限らず、
古代の地球ではその深い淵で繋がったココロが存在していたはずで、
それらに触れる時、
何かしか自分の中のヒビキが反応する。
この森羅万象帖をよんで
今、えもいわれぬココロに満たされているように。
説明できない。
でも、ここにある何か。
それを、再認識できた読書タイムだった。
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