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【DX#4】Walmartのカーブサイドピックアップ備忘録2024

1. はじめに

 アメリカでは近年、オンラインショッピングと配送サービスの利用が急増しています。この傾向は、新型コロナウイルス感染症のパンデミック期間中に一層加速しました。人々が外出を控える中、店舗での買い物リスクを避けるためにオンラインでの購入を選択する動きが広がったのです。

 このような状況の中、Walmartは2015年から徐々にカーブサイドピックアップ(駐車場で車のまま受け渡し)サービスを導入し始めました。2020年のパンデミック初期には、このサービスが顧客から高い評価を受けるようになりました。

2. サービスの仕組み

 カーブサイドピックアップは、Walmartのアプリかウェブサイトで商品を注文し、指定した店舗の駐車場にある専用スペースで受け取るサービスです。利用する際は、オンラインで注文した後に到着予定時刻を設定します。店舗に到着すると、スタッフに連絡して荷物を車に積み込んでもらえます。
連絡する際は、駐車場の番号、車の色などをアプリから伝える形です。

 サービス対象商品は食料品や日用品、一部の家電製品などの広範囲に及びます。対応店舗は米国内の多くのWalmart店舗に広がっており、一部の都市部では同日受け渡しも可能になっています。

3. 利点

 カーブサイドピックアップの最大の利点は、顧客が車から降りることなく買い物を済ませられることです。これにより、買い物にかかる時間を大幅に節約でき、特にパンデミック期には接触機会を減らせるメリットもありました。Walmartにとっても、このサービスの導入は販売機会の増加と顧客満足度の向上につながります。オンライン注文の伸長や、店舗売り場での混雑緩和にも役立っています。

4. 課題と解決策

 一方で、カーブサイドピックアップには注文の精度や商品の状態管理、スムーズな受け渡しなどの課題もあります。Walmartはこれらに対し、専用の注文ピッキングシステムの導入やスタッフの教育、事前の受け渡し準備強化などの対策を講じています。また、積極的に顧客フィードバックを収集・分析し、ピックアップスペースの増設やデジタルサイン導入など、継続的なサービス改善に努めています。

 実際にカーブサイドピックアップを利用した顧客からは、「店舗での混雑を避けられる」「荷物の運搬が楽」「スタッフの対応が良い」などの前向きな評価が多く聞かれます。一方で、「ピックアップの待ち時間が長い」「品切れ品が多い」という指摘もあり、改善が求められています。

 そこに対し、2023年には、Walmartの入り口正面にあったカーブサイド専用駐車場が裏にある搬入搬出口に変わりました。実際に従業員にインタビューを行いましたが、入り口正面の駐車場をカーブサイド専用駐車場にすることでクレームがあったこと、Walmartスタッフが裏側で商品をピックアップしてから入口正面の駐車場に行くまでの時間がかかるなど、様々な問題があり、そこを解決した形になっているようでした。

5. 結論

 カーブサイドピックアップは、Walmartが先駆けて導入した革新的なサービスです。このサービスは、パンデミック期の需要増加を受け、顧客にとっての利便性を一層高めました。課題もありますが、技術革新と継続的な改善により、これからも成長が見込まれます。消費者の新たなニーズに対応し、利便性と満足度を高めるという点で、カーブサイドピックアップは小売業界の重要な革新事例と言えるでしょう。

あとがき

 筆者は、年数回アメリカに渡米し、ロサンゼルス、シアトル、サンフランシスコ、ニューヨークなどを定点観測しておりますが、カーブサイドの利用頻度に関しては、時期や天候により大きく異なると感じています。実際に雨の少ないロサンゼルス(アナハイム、ラハブラ、ブレア、フラートン、ビラパークをよく視察している)では、TOP画像のように誰も利用していないケースが多く、逆に雨季のシアトルでは常に8~9割は駐車場に車が止まっている状態でした。いまいち人気のサービスなのかが掴み辛いですが、今後も買い物の多様化を大切にしているアメリカ小売業の調査を行って参ります。
どうぞよろしくお願いいたします。

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