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あこちゃんの文学道中膝栗毛 #1 「私が純文学に目覚めたきっかけ、夏目漱石『こころ』について」

皆様こんばんは。純文学ナレーターのあこ(甘利亜矢子)が、文学の豆知識を紹介していく『あこちゃんの文学道中膝栗毛』が、本日からスタートします!

私は高校生のときに、国語の教科書に載っていた夏目漱石先生の『こころ』を読んだことがきっかけで、「え!夏目漱石って、千円札の顔にもなっているくらいだから、すごく難しい内容の話だと思ったら、『こころ』って一人の女性を取り合う恋愛小説なの!?」と衝撃を受けたところから始まりました。

友人2人(「先生」と「友人K」)が、一人の女性に恋をし、「先生」は敬愛する友人Kを出し抜いて、女性と結婚することに!
その結果、Kは自殺してしまい、結婚した「先生」は、何も知らない妻に打ち明けられずに生き続け、ついに自殺を決意する、という内容。

高校生だった私は、自分のエゴイズムで友人の恋路をはばみ自殺に追い込んだことを「先生」が強く悔いており、その解決に完全な自己否定である死を選んだ、という友人同士の激しい恋愛話としか読み取れておらず、「文中の明治天皇の崩御と乃木大将の殉死の描写って、何の意味があったのだろう...??」と思っておりました。

最近になって知ったことが、夏目漱石先生が『こころ』を執筆された時代背景は、明治天皇の崩御によって明治が終わり、その後を追った乃木夫妻の殉死という大事件があり、世の中ではこの殉死に対する賛否両論が巻き起こっていたそうです。

称賛していたのがベテラン作家である新渡戸稲造と森鴎外。批判していたのが若手作家である志賀直哉と芥川龍之介。
明治から大正への時代の移り変わりにより道徳観が一変し、「西洋的個人主義」という西洋の考え方が入ってきていたため、若い世代は殉死という旧式の道徳観を強く非難し、古い世代は侍の切腹文化を引き合いに出して称賛していたそうです。

そこで夏目漱石先生は、明治時代の考え方にけりをつけることをテーマに、「先生」のラブストーリーに見せかけて、明治と大正の考え方の違い、時代の変遷を『こころ』に落とし込んだそうです。ふ、深い...!!
だから「先生」は乃木大将に重ね合わせて、自分も明治時代の終焉に際し、旧式の精神と共にこの世を去ることに決めたのです。
『こころ』は明治時代の価値観を色濃く反映させた小説です。

「歴史の終わるところに、文学は始まる」
文学を学ぶことは、歴史的背景や哲学、人間心理を学ぶこと、そして、人の生き方を探究することにつながります。文学を知ることによって、あなたの人生がより豊かになることを祈っています。

あこ(甘利亜矢子)

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