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姉の呪縛から逃れられない話

突然だが最近、ハンサムショートに憧れている。

厳密に言うと、色っぽい女性に憧れている。

顔の骨格だとか普段の服装だとか、躊躇う理由はいくつかあるが、そのなかでも最も比重が大きいのが、"姉が似合っていた髪型"であったということだ。

もう数年前の話にはなるが、ある日黒髪のハンサムショートボブにしてきた姉をみた時、私は大きな衝撃を受けた。ーー驚くほど似合っていたのだ。痩せ型で顔の整った、言ってしまえば堀北真希似の姉の、クールでアンニュイな感じと見事にマッチしていたのを覚えている。

姉の話はまた別の機会にしようと思うが、とにかく妹である私は、"姉が似合っているもの・得意なもの"に対するコンプレックスが尋常ではない。

例えば、絵を描くこと。姉は昔から絵心があって、すらすらと上手に描いてみせていた。私も絵を描くことが好きだった。好きだったし、幼い頃は負けん気が強かったので、歳が離れている分を取り戻そうとたくさん描いた。だけど、やっぱりどこかに"姉に敵わない"という思いがチラついて、人前で描くことは少なくなっていった。

あとは、本当に最近まで、カーキ色の服を避けてきたこともそうだ。言わずもがな姉がよく着ていたからである。大学生になって、はじめてカーキ色のショートトレンチコートを買ったときの、あのなんとも言えない感じは、きっとずっと忘れることはないのだろう。

何をしなくとも家族に愛され、人に構われる姉が羨ましかった。美しさも才能もあるくせに、それを磨こうともしない姿を、いつも心のどこかで軽蔑していた。だけど、姉のことがとても好きだった。

現在の姉といえば、大学卒業後、就職はせずに基本的に自室で過ごしている。食器洗いと洗濯が仕事の家事手伝い状態である。(ちなみに家族仲は全く悪くないのだが、このあたりもいつか書きたい)

私は、一足先に、大人になろうと思う。

兄弟姉妹の関係は、その人達にしか分からないところがあるし、きっとどちらかが、あるいは誰かが悪い、ということはないんだろう。姉のことは好きだし、正直憧れている部分は今でもあるが、いつまでも姉の影に囚われている自分がいい加減可哀想にみえるのだ。一人暮らしを目標として、就職してきっちりお金を稼いで、色んな経験をしていきたい。姉の知らない私を、何より自分が知らない私を、どこかの街で見つけていきたい。そうして、言い方はアレだが、ちょっとずつ"一人っ子の自分"になっていきたいと、そう思う。

その偉大なる一歩として、まずはハンサムショート。似合わないと言われれば大成功だ。これから似合わせいけばいいのだから。頼んだぞホットペッパービューティー 。なりたい自分に、なるのだ。