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まあお訳古今集 恋はいちごを添えて参拾参

皆さん、春☆ しちゃってますか~? 毎度おなじみ自称作家の あまおう まあお です^ ^ノ

はてさて。一部の方には長らくご愛顧いただいております、このシリーズもついに最終回を迎えることとなりましたm(_ _)m

古今集の恋歌一から始まって、二、三四、そして五と実に360首もの歌を鑑賞してまいりました……もういつからやってるのか忘れてましたけど、今調べたら2019年から断続的にやってますね。石の上にも三年、などと言いますが最初は古典文法すっかり忘れているレベルから、今はなんとなく分かるレベルくらいには到達したかなといったところ。

なんだか名残惜しい気持ちもありますが、恋の終わりの悲しいラスト、一気にいってしまいましょう> <。

恋歌五 詠み人しらず
荒小田をあらすきかへしかへしても 人の心を見てこそやまめ

その田んぼを鋤き返す。返す返す何度でも。お前の本心が分かるまで、俺はやめない。 #いちご訳

男らしさというより、ヤンデレ一歩手前。
「荒小田」とか「あらすきかへし」のイメージは力強いが「かへしても」あたりから粘着質で、男か女か分からなかったのですが、やたらしつこい男の歌と解釈しました。
実際に農業してた人というより、それを見ている人なんでしょうが。
#あきらめたまへ

恋歌五 詠み人しらず
荒磯海の浜のまさごと頼めしは 忘るゝ事のかずにぞありける

何が浜の砂ほど愛してるよ。砂の数より多いのは忘れなきゃいけない思い出の数だわ…… #いちご訳

いやこれ面白いですね。仮名序のわが恋はよむとも尽きじ荒磯海の浜の真砂はよみ尽くすともの返歌です。恋のはじめと終わりでずいぶん違うやんけ! という気持ちでチクリと刺した一首。
いやそんな昔のこと持ち出されても~、という悲鳴が聞こえてきそう。
#それは昔の話です #忘れてください

恋歌五 詠み人しらず
葦辺より雲ゐをさして行くかりの いや遠ざかる我が身かなしも

葦の生える水のふちから雲へ向かって雁が飛ぶ。あなたも私からどんどん遠ざかってゆくわ……かなしい #いちご訳

いいですねえ! 分かりやすさの中に季節の情景が詠まれて、そこに重なる心情がぴったり表現されています。
悲しいときに「かなしも」と詠む、その素直さを私は高く評価したい!
けどヒネリがないと思う人もいるでしょうけどね。ほんとに悲しい時ヒネっていられる余裕はないと思います。
#がんばれ

恋歌五 詠み人しらず
しぐれつゝもみづるよりも 言の葉の心の秋にあふぞわびしき

秋だから。時雨て木葉が色変わる。飽きだから。あなたの言葉も色変わる。ああもうダメなんだろうなあ。 #いちご訳

いやもう、諦めの境地すら感じてきますよね……
ストレートに失恋って感じで。
「心の秋」のあたりはもう少しやりようはあったのかもしれませんが、朴訥としてなおさら悲しい。もう恋歌も終わるところですからね、最終局面は「諦観」のようですよ。
#ここから先に希望はあるのか #恨む気力もない

恋歌五 詠み人しらず
秋風のふきとふきぬる武蔵野は なべて草葉の色かはりけり

秋風、吹きに吹いて武蔵野。一面の草木、全部枯れて絶望の色。 #いちご訳

うっわ……ふきとふきぬる、とかすごいですね(絶句)
もう飽きたとかそういうレベルではなくなっていそうですが。武蔵野と言っているので、これは縁の地。おそらく遠距離恋愛で討ち死になさったのでしょう。
後には何も残らなかった……この絶望感よ!
#いいことあるよ #失恋なんてかすり傷よ

恋歌五 小野小町
秋風にあふたのみこそかなしけれ わが身空しくなりぬと思へば

秋風が吹いて田の実(稲穂)は可哀想よ。飽き風に吹かれて頼みもなくなってしまった私と同じね…… #いちご訳

んん、小町さんにしては微妙?
秋風と飽き風で掛けるなら「ものさびしさ」をイメージするのに、稲穂が壊滅するほどビュービュー吹く秋風って、台風かなんかですか?
実と空しの対比はいいんですが、風が繋がってないと思います。ほんとに失恋したの?
#小町様だぞ #おそれを知らない戦士のように

恋歌五 平貞文
秋風のふき裏がへすくずの葉の うらみてもなほうらめしきかな

秋風が吹いて葛の葉が「裏見(うらみ)」せる。恨んでも恨んでも、まだまだお前に恨み(うらみ)が尽きない。 #いちご訳

恨んでも~恨んでも~躰うらはら、あなた、山が燃~え~るゥ~♪
天城越えと、だいたい同じですね(そうか?)。そうなるとなんで葛なの? という疑問もあります。葛の出る歌というと「ちはやぶる神の斎垣にはふ葛も秋にはあへずうつろひにけり(貫之)」があります。
這う感じを出したかったのかな?

恋歌五 詠み人しらず
秋といへばよそにぞきゝし あだ人の我をふるせる名にこそありけれ

飽きなんて他人事と思ってた。あなたが私を「お古」扱いして捨てた今、こういうことこそ飽きというのだと知ったわ。 #いちご訳

これはグサッと来るんじゃないでしょうか、貰った方は。ついつい弁解したくなりますが、だいぶ怒ってそうだし何を言っても逆効果でしょう。
こういうじめっと怒ってるタイプの人は、しつこいと思いますよ~?
無事に逃げ切れることをお祈りしておきます。
#南無 #もっとうまく別れておけば

恋歌五 詠み人しらず
わすらるゝ身を宇治橋の 中たえて人も通はぬ年ぞへにける

忘れられて久しいわ。今ちょうど渡れない宇治橋のように「なか」が絶えたの。宇治橋は誰も渡らない。あたしのところへは誰も来ない。はあ、空しい。 #いちご訳

京都の宇治橋かと思いますが、事故か工事か不明ですが真ん中がなくて通れないことがあったそうです。
で「身を憂し」と「宇治橋」で掛けた。ついでに「中」と「仲」、通わぬは橋と男が通って来ないで、トリプル掛詞ですね。
「または、こなたかなたに人も通わず」とあります。元はこっちなのかも。

恋歌五 坂上是則
あふ事を長柄の橋の 長らへて恋ひわたるままに 年ぞへにける

いつか会って言おうと思っていた。恋わずらいの熱にあてられたまま時間だけが過ぎて、恋の橋はもう渡れないんだ……。 #いちご訳

あー、完全に見送り三振パターンのやつ! 当たらなくてもいいから振れってあれほど言ったのにっ!
長柄橋は「あふ事をな」み・「長らへ」る=年経る、橋なので「渡る」、と技法てんこ盛り。そしてその技法が全部つながっているというファインプレイ。
歌はうまいのにどうして恋はヘタクソなのToT

恋歌五 紀友則
浮きながらけぬるあわとも成りななむ ながれてとだに頼まれぬる身は

このまま泡になって消えてしまいたい……浮世を生きながらえることすら辛くてかなわないから。 #いちご訳

久しぶり #tomonori ! と思ったら「水のあわの消えでうき身といひながら流れてなほもたのまるゝかな」の続編。
やっぱ失恋したか。映画もそうですが、続編の方がいい作品ってなかなかないんですよね。
うき=浮き、憂き ながれて=流れて、長(らえ)て
あたりの無難な技巧にとどまった。#辛口

恋歌五 詠み人しらず
流れては妹背の山のなかにおつる吉野の河の よしや世の中

妹山(妻)と背山(夫)を隔てるように流れゆく吉野川。はあ、夫婦の間に流れるのは涙の川ですよ。 #いちご訳

ついに恋歌最後の歌です。
妹背は山の名前で、男山女山みたいな呼び方みたいです。吉野川→よしや(仕方ないという気持ちの感動詞)に繋げました。
ここの「世」は男女の仲、妹背と言っているので特に夫婦でしょうから、要するに「離婚した歌」ということになります。
#諦めた #お疲れさまでした

……有終の美を飾りたかったんですが、なんというあきらめの境地よ! 恋歌シリーズ最初のウキウキしていたのが嘘のようにどんよりじっとりぐずぐずと恨んで終わりましたToT
まあでも、奇麗に終わる恋なんてないかもしれませんね。古今集の恋歌シリーズ、一首一首も名歌著名人の作技ありの歌が多くて楽しめたんですが、全体を通して恋が始まって燃え上がってやがてフられて諦める、という構成になっていたのが面白かったですね。

たった31字の短い和歌が、何百首も連なりながらやがて人生や歴史をつづっていく……何か巨大な人類の足跡を見た思いがいたしますToT
結論が「アキラメロン」というあたりが非常になんというかこう、世知辛い感じですが……。
というわけで、古今集は今回で終了! 長らくのお付き合いありがとうございました~☆

……で、終わると思うでしょ? なんかもうちょろっと言った気がしますが、先日から新古今和歌集の恋歌シリーズに着手しております! というわけで、まだまだ恋歌足りないんじゃ~! という方はこちらも覗いてみてくださいね! フォローはいつでも大歓迎の あまおう まあお が首を長~くしてお待ちしておりますよ^ -☆(にょろにょろ)

では今度こそ、お疲れさまでした~! またね☆

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