演劇とゲームのハザマで
ゲームとしては不利にしかならないし、ガチで考えればナシなんだけど、演劇として、そのキャラクターの生の人間の感情としてはアリなのではないか、即興舞台ゲームショーの難しさと試行錯誤の一端のお話。
◆noteはじめました
突然noteをはじめてみました。
いまだ自分でもnoteっていうものがよく分かっていないんだけど、まぁブログとフェイスブックとインスタを組み合わせたものなのかなと。
投稿者とかジャンルとかをフォローできるみたいだし。
オレとしてはnoteを利用するにあってメインとなる話題は、「アナログゲーム」と「インプロ・演劇」と「写真」になるのかなぁと思っている。
頑張って続けるつもりはあるので、つもりはあるので、皆様末永いお付き合いをよろしくお願いします。
◆即興舞台ゲームショーVote Showとは
さて。
今日はインプロ・演劇のお話。
私あまおち総統は、稲垣杏橘さん率いる「座・シトラス」という表現者集団とタッグを組んで、これまで「Vote Show」や「斯くして我は独裁者に成れりOnStage」という即興舞台劇を公演してきた。
詳しくはAHCのサイトなどをご覧いただければと思うが、いよいよ今週末に迫ってきた『Vote Show - The Unknown -』の稽古でのお話をひとつ。
この公演、ゲームのルールを基礎に敷いていて、そのルールに則りながら話が進むんだけど、どのようにストーリーが進むかという台本はなく、それぞれの役者が自ら作ったキャラクターの性格や背景などが舞台上でぶつかり合って生まれる人間ドラマを楽しんでもらうという趣旨の舞台劇となる。
この形で有名なのは人狼ゲームを舞台上で見せるっていうヤツだろう。
舞台の進行はルールに従って進むが、そこで何を話すのかはその場の役者の力量に任されているという、そういう舞台だ。
で、いま人狼を引き合いに出して説明したが、もちろんVote Showは人狼とは違うもので、では何が一番違うかと言えば、ゲームのルール部分も違うわけなんだけれども、もっと違うのが「お芝居の度合い」。
人狼の舞台もいくつ種類があり、中には本当にゲームだけをやっているもの、プレイヤーはそのまま素のプレイヤーとしてゲームをプレイし、それをお客さんに見せているっていう舞台もある。
この場合どっちかと言えば、競技を見せているって言った方がいいのかもしれない。
また人狼舞台の中には、設定や演技に力を入れているところもあり、団体や公演によってその種類はなかなかに千差万別である。
◆カメの葛藤
その中でVote Showは、かなり演技部分を重要視している舞台だ。 個人的には、数ある人狼舞台の中での演技よりのものに比べても、最も演技寄りだと言いたいぐらいは演技寄りである。
これは監督の稲垣杏橘さんも日頃から「キャラクターとしての思考をしろ」「素の自分で台詞を吐くな」「幕が下りるまでキャラクターとして振る舞え」と口酸っぱく言っているところで、役者としてはそのキャラクターとしての演技の上に、ゲームに勝つための思考を巡らせ議論を行わなければならないので、なかなか大変な作業ではあると思うが、しかしそれがVote Showなのだ。
そんな舞台を直前に迎えた先日、このようなことが起きた。
・PC1は「自分の命を救ってくれた人のために力を得たい」と願った。
・PC2が「お前(PC1)は、もしかしてあの時のカメ!」と、即興で話を膨らませ、これまで設定になかったPC1をカメにしてしまう。
・PC1も「まさかここにいらっしゃるとは。私は貴方の為にこのゲームに臨みましょう」と、その設定を肯定し上乗せした。
ここまでは即興劇であるVote Showによくある光景だ。
役者同士の掛け合いによって新たな設定が生まれ、違う関係が発生して、予期せぬ人間ドラマが生まれる。
これこそがVote Showの醍醐味である。
ただしこれまで違ったのが、このしばらく後、PC2が「自分はジョーカー(裏切者。人狼ゲームで言う人狼に当たる)だ」とカミングアウトしてしまったことから始まる。
カミングアウト自体は、そんなにあるわけでもないが、たまに発生する程度のアクシデントだ。
しかし今回は事情が違った。
なぜなら全部で3人いるジョーカーのうち、ほぼ同時に2人がカミングアウトすることになってしまったからだ。
つまり潜伏しているジョーカーはあと1人、そのあとたった1人がカミングアウトしてしまうと、このゲームは壊れてしまうのだ。
さて困ったのがPC1。
彼はPC2がジョーカーとは知らずに「ついて行く」と言ってしまったが、このままだと自分はゲームに負けるために行動しなければならなくなってしまうのだ。
この場合PC1はどうすべきなのだろうか。
果たしてPC1は、最後までPC2のため、つまりジョーカーのために動いた。
ゲーム的に言えば、ジョーカーでない者がジョーカー側に有利な動きをするというのは、双方にとって一切メリットがない。
仮にもしPC1もジョーカーだったとしても、これではもはやジョーカー以外からの信頼もゼロになってしまうため、ほぼほぼこれで3ジョーカー全てバレるというゲームオーバー状態になる。
仮にもしPC1がジョーカーでなかったとしても、しかしこの動きではPC1はジョーカーだという前提で動かなければならなくなるので、1人の貴重な戦力を失ってしまうことにしかならない。
この動きは双方にとって全くメリットがないのだ。
◆ゲームを捨ててもよいのか?
その稽古ではPC1は最後まで、負け覚悟でジョーカー側のために動いたのだが、これが後のミーティングで議論になった。
ストーリーとしてはすっごく面白かったけど、やはりゲームとしては間違いだったんじゃないだろうかと。
Vote Showはお芝居もするが、ゲームもガチでやっているというのがウリだ。
これは本当に嘘偽り無くゲームをリアルでガチでやっていて、通し稽古の時も「本番と全く同じメンツ」にならないように組んで稽古しているし、その上でガチでゲームをやっている。
なので稽古ですら毎回違う展開になって、たまーに神回が出て「もったいないなぁ!!」と思うことがあるぐらいだ。
言わば「ゲーマーの方にも満足頂ける内容を用意していますよ」というのも看板のひとつなのであり、しかしこれではガチゲームプレイを前提で見ていただいたお客さんに失礼に当たるのではないか、という議論になったわけだ。
難しい問題である。
ここはどうしても感覚の問題、受け手に答えを委ねるしかない問題であり、正解は出ない問題だ。
確かに「ガチ議論じゃないじゃないか」と言われると、その通りですとしか言いようがない場面だ。
ただ、ただその上でオレは、敢えてこう言いたい。
「この結果は、そのキャラクターがガチで悩んだ上で、キャラクターが出した結果なんです」と。
例え自分の願いを賭したとしても、例え自分の命を失ってでも、それでももっと別のものに価値を見いだし、そのために行動してしまうこともあるというのが人間なのではないだろうか。
結果的にPC1はゲームに負けて命を落としてしまった(というルールなのだ)のだが、それでもオレに目には、彼はそこまでする動機と生の感情を見せて貰ったと思っている。
だから、神の座視で見るシミュレーションゲーム視点であれば間違った行為ではあったと言えるだろうけど、生の感情を持つRPG的キャラクター目線であればそれが正しい行為だったと言えるのではないだろうかと、オレはそう思っているのだ。
カメというキャラクターの魂がこの結果を望んだのであり、プレイヤーである役者もそこをキチンと見ている側に見せられたのであれば、オレはそれを正解としたい。
確かにそこに魂があったと、自らの魂も共鳴したんだ、というのであれば、ゲームの勝敗よりも大切な行動が人間として(カメだったけど)あったのだと断言するしかないハズだ。
それは本当に人間らしい(カメだったけど)行動だったのである。
◆演劇とゲームのハザマ
Vote Showも我独showも、常にこの「演劇とゲームのハザマ」で試行錯誤している。
ただゲームプレイを見せるだけなのではなく、演劇として人間の感情と熱を魅せたいという思いで毎回やっている。
よって時にこのような議論もそれなりに発生するわけだが、これも全て「かつてない演劇をやりたい」という思いからなのであり、だからこそ良いものが生まれてきているのだ。
みな真剣だから議論になるのだからね。
いよいよ今週末12日(土)と13日(日)に品川トンネル東京で開幕するので、興味を持って頂けたらぜひご来場いただけると嬉しいです。
どうぞよろしくお願い致します。
《公演概要》
◆公演名:『Vote Show3周年記念公演「Vote Show -The Unknown-」』
◆公演日程:令和元年10月12日(土)~10月13日(日) 全6公演
◆タイムテーブル:
12(土)12:30 / 16:00 / 19:30
13(日)12:00 / 15:30 / 19:00
※開場は開演の30分前です。
◆会場:TUNNEL TOKYO(トンネルトウキョウ)
品川区西品川1-1-1
住友不動産大崎ガーデンタワー 9階
JR・りんかい線 大崎駅 南口 徒歩6分
https://tunnel-tokyo.jp/Access
◆チケット料金:全席自由席/1ドリンク¥500
・前売券 ¥3,000+1ドリンク
・当日券 ¥3,200+1ドリンク
・一日通し券 ¥8,000+1ドリンク
・ボドゲセット※ ¥4,500+1ドリンク
※ボードゲーム版「Vote Show ザ・ゲーム」と観劇1回の特別前売券
◆ご予約URL:https://www.quartet-online.net/ticket/voteshow-unknown-
◆総指揮 : 稲垣杏橘
◆原作・プロデューサー : あまおち総統
◆企画・制作・主催:座・シトラス
クリエイティブAHCではボードゲームやTRPGの作成・販売と、アナログゲーム総合誌『オールゲーマーズ』の編集などを行っています。商品はBOOTH他、各ゲームショップでご購入できます。https://ahc.booth.pm/