即興劇は進化できるハズ。でも本職の人達は進化しようとしている?
色んなわらじを履いているあまおち総統です。
しばらくアナログゲームとかの活動ができなかったのだけど、先日やっと復帰したので、久しぶりにnoteを更新してみようと思い立ったので、いま書いています。
というのも、活動潜伏中にAHC主催での舞台公演があって、主催者にも関わらず現場に行けないという自分としても非常に悔しい思いをしたので、その想いをぶつけてみようと思う。
だってすごくいい舞台を作り上げることができたと言えるので。
斯くして我は独裁者に成れりやその舞台については、AHCのサイトをご覧ください。
インプロ・即興劇の新しい船出
インプロ・即興劇とはどうあるべきなのか。
嘘偽りないオレの正直な気持ちを言えば今回の『斯くして我は独裁者に成れり-将軍家最後の五日間-』で、ついにこの即興劇は、他の台本舞台などと並び立つコトが出来たと思っている。
これはある種のゴールであり、そしてスタート地点に立ったのだ。
事故るインプロ・即興劇からの脱却
何がゴールなのか。
それは「インプロや即興劇はたまに事故るけど、それが即興劇だから許してね」という甘えから脱却したという点。
事故とは、会話が続かなくなってしまって変な間が開いてしまったり、前後の物語の整合性が全然無いのに強引に進めてしまったり、面白くもなんともない平坦なただ進行していくだけの何のために見に来たか分からないストーリーになってしまったとか、そういうヤツ。
インプロショーにしても即興劇にしても、ある程度そこは「即興なんだからたまにはそういうこともあり得るでしょ」「だから許してね」と客に甘えていた点があった、いや今でもあるんだよね、残念ながら。
『Vote Show』に関わってからこの数年、オレはインプロショーや即興劇を、多いとは言わないけどそれなりに見て来たつもりだけど、どこもやはりある程度は「許してね」というのが前提として、共通認識としてこの業界には存在している。
こう言うと猛反発する関係者がいるかもしれないが、しかしオレはこれはもう業界の中だけで隠さずキチンと言うべきだと、何より実際に存在してしまっているのだからお客様のために隠さず言うべきだと思っているし、そしてオレはこれを前提にしているコト自体がイヤだったのだ。
ましてショーによっては、それすらネタにする、つまり「スベり芸」にしていたフシもあるワケで。
でもそれって三流芸だよね。
オレは今回、「舞台我独」に主催者という立場に立ち、最も大きな権限を振るうコトで、この「事故る」からの脱却を目指した。
そのために数々の仕掛けを仕掛けた。
これまでの舞台経験から、台本がないけどスムーズに会話が続き物語が前に進む、そのための装置を様々なところに散りばめた。
その結果「舞台我独」は、ゲームマーケット公演も含め全9公演、どこも1度も1回も事故らず、ストーリーある舞台として全く問題なくお客様に観劇していただくことができたと、主催者として自信を持って言える結果を残せたと思っている。
「本当に台本ないの?」
これまで過去の我独舞台を何度も見ていただいている常連さんにすら、今回の公演後に
「本当に台本ないの?」
「カードの出し方はある程度パターンを決めていたんでしょ?」
「こうなったらそうするっていう粗々の台本があったんでしょ?」
と聞かれた。
そしてそれは一人だけでなく何人にも聞かれたし、それは総指揮を務めてくれた稲垣杏橘さんも多くの方に疑われた…尋ねられたらしい。
しかし何度聞かれても残念ながら台本は本当にない。
今回は第1ゲームの部分は台本を用意してゲームの流れをそれで説明したのが、しかし第1ゲームの投票とカードの破棄の部分はすでに台本はなく、その時点から即興が始まっていた。
そしてもちろんそれはゲーム終了時まで続き、当然として「誰がどう勝つか」という結論も決まっていない。
いつも通りゲーム部分は完全に役者に即興でプレイしてもらっているのだ。
それなのに今回は、台本の存在が疑われるぐらいスムーズに物語が進行したのだ。
正直これは、これまでのインプロ・即興劇の歴史に新しい1ページを刻んだと言っても過言ではないと思っている。
「インプロ・即興劇は事故る」というのがある程度常識になっているこの業界において、しかしそれを良しとしなかった業界人ではないあまおち総統は、今回の舞台でひとつの実績を持って歴史に名を刻んだのである。
「事故らない」はゴールではなくスタート
しかしこれを読んで、「舞台なんだから「事故らない」って普通じゃね?」と思った人がいるかもしれない。
そう思った人、正解。
当たり前だよね、舞台劇なんだから事故っちゃダメだよ、そんなの最低以下のレベルじゃんって思うのは当然の感覚だと思う。
オレだってそう思う。
だからこれは「スタート地点」なのである。
これによりやっと即興劇は「特殊舞台劇」から「普通の舞台劇」に肩を並べることができるようになったのだ。
「即興だから仕方ないよね」という言い訳を使わずとも、普通に楽しめる普通の舞台劇にすることができたのだ。
インプロ・即興劇業界にとって、これは歴史的一歩なのである。
しかしそれは果たして誇れるのか
もちろんこれは誇れることではない。
業界にとっては大きな一歩だと思っているが、そもそもとして業界の人間が、いまこのオレの文章を読んで喜ばしい気分になっているのかと言えば、むしろ不快に思っているだろうから、誇っているのはオレと今回の関係者だけなものだろう。
まして、今まで甘えでやってきたコトが普通のコトになっただけなのだから、誇るというレベルの話では本来ないハズなのである。
よって正しい評価は「やっとスタート地点に立つコトが出来た」なのだ。
そして同時に、スタート時点に立った時点で、即興劇は大きな武器を持った、台本舞台劇のライバルになり得る存在になったと言えるだろう。
なぜなら、即興劇が普通の舞台劇と肩を並べた時点で、実は即興劇にしかない大きな魅力である「毎回違う内容の公演が楽しめるから」という、台本舞台には絶対に不可能な武器をアピールするコトができるようになるからだ。
対等な位置に立ったからこそ、対等に別の武器で戦うことができるようになったのだ。
即興劇のアドバンテージをどう自覚し、どうアピールするか
即興劇が即興劇として存在するため、その存在価値を、提供する側にではなく客に対して示さなければ意味を成さない。
そしてそれはひとつ明確に示すコトが出来る。
生ものである舞台はそれが台本劇であったとしても毎回違う楽しみ方ができるが、さらに即興劇はそれに輪をかけて毎回違う展開を楽しむコトが出来るのだ。
全く違うストーリーで、結末すら違う物語を、同じ公演内で見せることができてしまうのだ。
これはどうあがいても台本舞台には真似できない点だ。
すなわち、即興劇が毎回普通の舞台劇並のクオリティになれば、即興劇の方がよく多くの楽しみ方で観劇するコトができる、とてつもなく魅力的なコンテンツになり得るワケなのだ。
今後について
とは言え、当然として練りに練られたシナリオ台本に、その場即興で考えるシナリオが勝てるワケもなく、深い話を楽しみたい場合は台本舞台を観に行った方がいい。
ここは棲み分けとして得手不得手があるワケで、むしろ違いがあった方がいい。
その上で即興劇とは何を客に提供するのか、その魅力はどこにあるのか、それを今後とももっと深く深く考えて考えて、その立ち位置を確立していかなければならないのだ。
即興劇の魅力は、「毎回ストーリーが違う」だけではないハズだ。
これも今後、この業界に身を置く人達は、シッカリとシッカリと寝る間も惜しんで寝てる間すら即興劇の魅力を考えて、そしてその魅力を発揮できる環境を整えて欲しいと思っている。
オレの公演は、果たしてその一助になっただろうか。
今後、この公演がインプロ・即興劇の歴史にどう関わったと評価されるだろうか。
そして過去何度も言っているように、オレは演劇の世界に身を置いているワケではないので、今後どうするかは今後ゆっくりと考えようと思っている。
毎回舞台に関わる度に「2度とこんなコトやるかぁぁぁぁ!」と思っているので、もうやらないかもしれないし、またなんかアイデアが沸き起こってきて、なんかやりはじめるかもしれない。
もしくは、誰かが「これを一緒にやりましょう」と持ちかけてくるかもしれない。
それはその時に考えよう。
しかしどちらにしても、インプロ・即興劇がもっと盛り上がり、社会的地位も高くなり、いっぱしの文化として認められる未来になってほしいとはいつも思っている。
頑張ってもらいたい。
当日の公演は、現在YouTubeのAHC公式チャンネルで無料配信しております。ぜひご覧ください!
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◆舞台我幕2021再生リスト
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