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【読感文_11】母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。

11冊目は少し趣向を変えて漫画に。

今年の母の日は、テレビ電話で遠い埼玉の地に住む実家の家族と話をした。
と、いうのも偶然最近この本をもう一度読んで何となく自分の母は"ものを渡す"、というより直接電話をして声を届ける方が喜んでくれる気がしたからだった。

そんな母の日をめぐって私を悶々と考えさせたのが、ふと手に取った宮川さとし氏著の「母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。」。

内容は癌にかかった母親の最期をみとった著者の心と死生観の移り変わりを漫画と言葉で紡ぐ。

初めて死をテーマにするので言葉選びを慎重に、感想を記したい。

(また今回は尊敬し大切に思っていて現在もバリバリご健在、今日も快活にヨガに勤しむ私の母の死を前提にして記事にするのは、どうしても私の心が許せなかったので、大切な人の死と定義を広げて、その意味を考えてみたい。どうかご了承を。)

本の感想 - 「大切な人」の死が何をもたらす?

まず、私は個人的に宮川氏の漫画が大好きで、この漫画も以前に買っていて、何度か友人にも勧めていた本だった。
売り文句はもちろん「母に圧倒的感謝ができる」から。

ただ、改めて読むと普段ありきたりに向き合っている"母に感謝する気持ち"が反射鏡になり、ふと"大切な人がいなくなった世界"を想像させた。

"大切な人がいなくなった世界"ー私は1人暮らしになって2度目の母の日を迎えるにあたって初めてそれを考えた。
母がいなくなったら、父がいなくなったら、自分にとって大切な人がいなくなったらー考えればきりはないが、この本は「大切な人を失って初めて得られるものは何か」を教えてくれる。

人はいつしか例外なく死を迎える。
もし、自分の大切な人が亡くなった時に自分は何を感じるのだろう。
そして、その死は自分に何をもたらすのだろう。

私は人の死が何かをもたらすものをあまり深く考えたことはなかった。
一方で、大切な人がいなくなった時に私の心のありようがどのようになるか、この点についても深くは考えたことがなかったことに気付いた。

宮川氏は漫画の中で終盤こんなことを語っている。

死にはエネルギーがあるような、そんなことを感じるようになったんだ。
親の死には子供の人生を動かすような大きな力がある。
(中略)ある日の別れの経験が君の重かった腰を持ち上げるんだよ。

実際、宮川氏は母の死をきっかけに岐阜から上京し、漫画家として現在も活躍されている。
宮川氏にとってトリガーとなったのが彼にとって"大切な人"だったお母様だったのだ。

人は誰もがいつか死ぬ。
でもその死が誰かの背中を押してくれることを知れば、
その死には意味が生まれる。

自分にもそんな時が来るのかな、とふと思った。

まとめ

この本を読んで、自分にとって大切な人を私は本当に大切にできているのかと考えた。

普段何気なく接している家族や友人、彼らに私は何をもたらせているのか。
死をテーマにしている本を読むだけに少し気持ちがマイナスに、内向きになっているのを感じた。

それでも、人生は続く。
人は死に向かって今日も生きている。
それまでは後悔なく周りの人を大切にしたいと感じた。

とりあえず、私は明日おばあちゃんにも電話してみます。


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