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【読感文_8】ある外交官の見たニッポン

今回読んだ本は1989年発行の「ある外交官の見たニッポン」。
筆者は元駐日ブルガリア大使のトードル・ディーチェフ氏。

元大使のディーチェフ氏の日本との馴れ初めからその苦悩、日本での日々、そして自身にとっての日本まで赤裸々に語ったもの。

社会主義国らしく(失礼)、固い内容も多いが、彼の日本独特の文化に悪戦苦闘するエッジの効いたエピソードが同じくらいあり、飽きずに読み切れた。

今回はなかなか内容も濃かったので、要所要所で目に留まったディーチェフ氏の記述を「感想① - 異文化理解の根」「感想② - 国際政治って難しい」と大きく2つに分けて抜粋、紹介してみて、感想としたい。

感想① - 異文化理解の根

まず、私が感じた本著の興味のフックになっている理由として日本文化に悪戦苦闘するディーチェフ氏の数々の泥臭いエピソードである。

例えば言語面でいえば、ディーチェフ氏は先生が漢字を紹介した際に中国語のクラスだと勘違いする、
つまり日本語で漢字が使われることを知ったところからのスタート
そしてその人が大使として国際的に活躍する。
正直、外国語学習者としてこんなに勇気が与えられる話はない

他では、初めて日本を訪れた際のエピソード。
当時はインターネットもなければ国際電話も高額。ブルガリアから極東の情報を得る事は至難の業で、ディーチェフ氏は「日本人は挨拶でハグ、キスをせずにお辞儀をするらしい」程度の情報しか持っていなかった。

それでも我が身一つで異国の地に飛び込み、食べ物や景色、価値観に戸惑いながら(たくさんの失敗談があるが割愛)も、
1つ1つの課題を理解してクリアしていくことで彼は日本という国を少しずつ理解し、大使として友好維持に尽力した。

私も1年間アメリカに留学していた経験があるが、そのようにTry&Errorを繰り返しながら順応していくことは今昔問わず異文化理解の重要かつ唯一の方法だなと感じた。語学がんばろ。

感想② - 国際政治って難しい

さて、国際関係では目に留まったのは2点。
彼の日本に対する見方極東国際軍事裁判(東京裁判)に関する言及であった。

本著を読み進めると、元外交官というだけあって日本の政治や経済まで幅広く理解されていることが分かる。
特に、「日本人は他国の技術を真似する卑しい民族」と非難する人たちに対して日本の技術力や資源力、労働の構造に関するところまで追求した上で「日本の未来はエキスパートの集団を多数輩出することにある」と断言。
皮肉にも現実はそれを他国に奪われているが、1989年の時点で世界の情勢を踏まえたうえで、ここまで詳細の提言が出来るのか、と驚いた。

また私は先日も触れた東京裁判に関して興味深い記述があったため、ここであえて改めて触れておきたい。
と、言うのも本著の前に読んだ「読感文_7 おじいちゃん戦争のことを教えて」で筆者の中條高徳氏は東京裁判を痛烈に批判していたからだ。

以下、本著よりディーチェフ氏の言葉を抜粋。

極東国際軍事裁判が下した判決は、一つの歴史である。大事なのは、この歴史が忘れられてはならないということで、そのためには思い起こす必要がある。私は一度ならず考えたものだー。
「心理はどこにあるのか。若い、もっと正確に言うなら、つぎつぎとつづく世代は事実を思い起こし、知らなければならないのか、それとも安隠に暮らすまでいいのか?」と。

前提として、ディーチェフ氏はブルガリア人、戦勝国であるソビエト連邦の衛星国であり、いわば連合国寄りの親日家である。

ディーチェフ氏は本著で東条英機の証言を引き合いに東京裁判を「仕方ない」としてはいるが、何がおこなれたのか、何が真実だったのかを知る必要がある、という曖昧な表現をしている。

私はここに国際政治の難しい部分を見た気がした。
なぜなら国際的に東京裁判が成立してしまう理由が「日本が戦争に負けたから」という至極簡単なものに帰結してしまっていると私はディーチェフ氏の言葉から感じてしまったからだ。

結局、国の政治的主張を押し通す為に戦争は利用され、当時日本が諸外国に合わせて無理に進めた当時の帝国主義の「負の遺産」として日本に背負わせるために東京裁判が行われたに過ぎない。

ただただそういう複雑な思いを子供たちには経験させたくはないなー、率直にと感じた。

まとめ

長くなったが、本の厚さ以上に濃密な内容だった。
まとめることも正直難しい。

それでも、日本と世界の歴史を学ばなければならないし歴史を知らなければ何も分からないなと痛感した。これは感想①②に共通することかと。

本の感想として全くうまくまとめられていないが、この自分の実力の無さも今後の自分への期待という事で。


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