第28回劇作家協会新人戯曲賞 最終審査員の希望投票について

 2022年6月1日(水)より、第28回劇作家協会新人戯曲賞の応募が始まる。この戯曲賞においては、最終審査員が応募者の投票で決まる。投票対象は日本劇作家協会の会員であり、7名選出される。そのなかから、応募者は2名を投票することができる。また今年度は、名簿で編みかけとなっている会員は対象外となるそうだ。詳細は上のリンクより確認していただきたい。
 念のため最初に申し上げておくが、私は日本劇作家協会の会員ではないし、私には所属団体がなく、現在演劇公演等の活動を一切していない。一人の、戯曲を書く「戯曲賞ウォッチャー」としての記事であることを留意していただきたい。


結論を言うと、私は以下の二名に投票をする。(敬称略)

・黒川陽子

・柳美里


また、もう1名、投票の候補に考えた方がいる。(敬称略)

・田辺剛


 さて、まず私はこれまで、と言っても短い期間であるが、戯曲賞について様々な発信をしてきた。2021年のAAF戯曲賞からはじまり、劇作家協会新人戯曲賞、かながわ短編演劇アワード2022など、リアルタイムで審査会の感想をTwitterにおいて発信するばかりでなく、2021年度のことをまとめてnoteも書いた。

 これについては様々な方面から反響があり、「長年自分が言語化出来ていなかったことを言ってくれた」というような評価もいただいた。また、過去に劇作家協会新人戯曲賞を受賞した方からもコメントをいただいた。そしてここに書いてある通り、私は劇作家協会新人戯曲賞最終審査員のレベルの低さを悲観している。
 明確に申し上げてしまえば、私は、坂手洋二氏や渡辺えり氏を審査員から落とすべきだと考えている。このように直接的に書くと反発を覚える方もいらっしゃるかもしれないが、私はこれを政治の選挙と同じくらいの熱量で考えている。戯曲賞の審査というのは私たち若手作家のこれからの活動に密接に結びつくものであり、選評というのはネットに半永久的に残り続けるものであり、それは演劇界のアーカイブとして何十年後も重要な意味を持ちうるものである。誰が、誰の、どの作品を、どのように評価し、どのような言葉で批評するのか。このことをなんとなくで考えてはならない、と私は考える。衆議院選挙において、「あいつは落ちるべき」と言うのと同じテンションで、私は言っていく。(この例の是非は問題にしていない。)
 また、この2名を名指ししたのは、審査会における発言や選評のレベルの低さのみならず、渡辺氏のメディアにおいてのハラスメントに対する発言や、両者様々な方から聞く発言・行動、審査会における態度等を総合して、最も審査員として不適切であると考える二人だからである。

 昨年度の第27回劇作家協会新人戯曲賞に関しては、上記のnoteにおいて詳しく書いているので参照していただきたい。

 次に、投票する審査員の選出理由を記す。

・黒川陽子氏

 黒川氏は劇作家協会新人戯曲賞において受賞歴があり、また一次審査も継続的に行ってきた。そして、私は黒川氏のトークや、演劇祭の講評を聞いたことがある。そのときの論旨明快に話している様子や、着眼点の鋭さ教養の高さに感銘を受けた。
 戯曲賞を受賞したさいの選評を読んでみても、珍しく圧倒的な支持を得ての受賞であり、「劇作家が選ぶ戯曲賞」の審査員としても申し分のない実力作家だ。黒川氏の所属する"劇作家女子会。"がハラスメント対策に関連した活動を行っており、そのメンバーの一人が劇作家協会の審査を務めるということも若手にとって希望に映るかもしれない。このようにあらゆる観点から考えて、まず、第一に黒川氏に投票することを決めた。投票対象が1名であれば一択である。

参考資料
第13回劇作家協会新人戯曲賞 http://www.jpwa.org/main/activity/drama-award/record/42-2007
劇作家女子会。note https://note.com/gekisakujoshi
黒川氏が立ち上げたチャンネル 文学等の解説動画 https://www.youtube.com/channel/UCxTElJIGKbQFdYJ2Y0VJ6KA


・柳美里氏

 柳氏は資料を見るに、今年度より劇作家協会の会員となったと見られる。ということであれば、つまり、これまで劇作家協会新人戯曲賞の審査員をし得なかった。そして応募者の中には昨年度の審査員等を参考にする可能性も高く、知名度とは裏腹に、柳氏の名が会員名簿にあるのにも気が付かないかもしれない。これは投票しなければならないと考えた。
 というのも、岸田國士戯曲賞の選評において圧倒的な筆力を見せていたからだ。これまで劇作家協会新人戯曲賞においては全てではないが当たり障りのない、あるいはまったく的外れな選評も書かれてきたことを思えば、柳氏のような充実した選評を書ける人物がこの賞の選評を書くことは、長い歴史と伝統のなかで、何十年何百年と残っていくものとして、とても価値があることだと考えた。
 もちろん戯曲賞において大切なのは選評だけではない。柳氏の選評から感じられる熱量を考えるに、ともすれば、劇作家協会がこれまで築きあげてきた"内輪ノリ"の雰囲気を、焼き尽くしてしまうかもしれない、とも考えた。その点については、そもそも協会が制度改革を行っており、変わっていくべき時が来ていること、また、柳氏と交流のある平田オリザ氏が最終審査員希望対象であることなどを踏まえ、投票を決めた。

参考資料
第65回岸田國士戯曲賞に寄せて|柳美里 https://www.genron-alpha.com/gb065_02/


 また、投票の候補として悩んだ田辺氏についても言及しておく。

・田辺剛氏

 田辺氏も劇作家協会新人戯曲賞の受賞歴がある。また、人間座「田畑実戯曲賞」の審査を継続的に務めており、選考経過の書き方もこなれているし、批評を書く力がある人物だ。第4回全国学生演劇祭の講評においても、かなり読み応えのある充実した講評を書かれている。劇作家協会新人戯曲賞の審査を務めるの相応しい人物であることは間違いない。
 元々名簿が公開される前は、黒川氏と田辺氏に投票しようと考えていた。柳美里氏が名簿にあったことで、柳氏への投票を優先することとなった。だが、田辺氏の書く批評が優れているということは、演劇界においてもっと広まっていいはずだ。

参考資料
第11回劇作家協会新人戯曲賞 http://www.jpwa.org/main/activity/drama-award/record/40-2005
第4回人間座「田畑実戯曲賞」選考コメント https://ningenza.com/2021/07/news-336/
第4回全国学生演劇祭 講評 http://jstf.jp/interview/%e5%af%a9%e6%9f%bb%e5%93%a1%e8%ac%9b%e8%a9%95-%e7%94%b0%e8%be%ba%e5%89%9b-%e6%b0%8f/


 ここからは現実的に審査員の顔ぶれがどうなっていくかについて考えたい。まず、劇作家協会新人戯曲賞は、審査員のジェンダー・クォータ制を導入している。審査員7名のうち男女それぞれが3名以上となるということだ。
 正直なところ名簿を見て、私は絶望した。土田英生氏、横山拓也氏が希望対象外となっている。これまでの男性審査員の顔ぶれが安定していること、またクォータ制を導入する以前は男性審査員の方が多かったことから考えても、これまで務めている男性審査員の票は盤石だと推測できる。男性と女性を切り分けて考えることに意味があるかどうかは分からないが、枠が決まっている以上考えざるを得ない。
 おそらく担当されていない年は断っていたと思われる平田オリザ氏が、今年度は希望対象となっている。このため平田氏はほぼ確定と見ていいだろう。男性審査員は残り最大3名の枠がある。そこに入ると思われるのは、これまでの結果から考えて、川村毅氏、佃典彦氏、坂手洋二氏、マキノノゾミ氏の4名が有力候補となるだろう。私としてはぜひここに土田氏、横山氏に加わっていただきたかったのだが……。
 他に可能性のある候補としては、知名度から考えると、中屋敷法仁氏、成井豊氏、西田シャトナー氏、横内謙介氏、谷賢一氏辺りが考えられる。私はこの中に審査員をやっていただきたいと思う方はいない。中屋敷氏については私は直接女性を蔑視する発言を聞いており、強く反対する。さまざまに考えてみても、田辺剛氏を強く推したいところである。黙っていても柳美里氏の票が集まるならば田辺氏に、と思うが、初ではそうもいかないだろう。ほか、受賞歴のある男性会員としては、刈馬カオス氏や夏井孝裕氏は信頼が出来る印象だ。ただ、これは印象に過ぎない。長谷基弘氏も信頼している。
 有力候補の4人の中から3人を選ぶならば、川村氏、佃氏、マキノ氏になっていただきたいが……。このように私が書くことによって、坂手氏が俺に入れろと色んな人に伝えてしまっては、もうどうしようもない。そうなったらごめんなさい。

 女性審査員についても考える。これまでの傾向から考えておそらく3枠になると考えられるが、投票数が2票となったこと、男性は票を集めると思われる平田オリザ氏が対象であること、女性は永井愛氏が対象ではないことを考えると、女性審査員が4枠となることも、夢ではないように思う
 ここで揺るがないのは渡辺えり氏だろう。私は強く反対するが、知名度でどうにもならないように思う。これまでの選評を読んで、あるいはその他演劇祭やコンクールでの講評等を聞いて、どうして渡辺氏に入れたいと思うのか理解しかねるが、ともあれ知名度というのは政治同様に強く反映されるものらしい。
 これまでのメンバーと会員名簿を見て、有力候補は、瀬戸山美咲氏、赤澤ムック氏、わかぎゑふ氏だろう。わかぎゑふ氏についても強く反対する。第26回の戯曲賞の審査をしていたが、選評において自分の趣味を書いているだけで、審査員としては話にならない。瀬戸山氏の批評力については以前のnoteにも書いた通り疑問もあるが、現会長として業界を牽引していく人物に相応しいことには間違いなく、審査員に入っていただく価値がある。赤澤氏はあまり自分の意見を強く出さず、説得力に欠けると思われる点もあるが、大きく外すようなこともなく、無難であると感じている。個人的には、この二人と柳美里氏、黒川陽子氏の4人が審査員をやってくれることに期待するが……。篠原久美子氏や石原燃氏が協会を辞めてしまわれたのも惜しい。

 このように様々考えてみて、全面的に賛成する理想ではないが、今回の対象者で、私が希望を持てると思える最終審査員の顔ぶれはこうなる。(敬称略)

男性 平田オリザ、田辺剛、マキノノゾミ

女性 黒川陽子、柳美里、瀬戸山美咲、赤澤ムック


 どうですか? ここまで読んで、納得がいくようでしたら、参考にしていただければ幸いです。

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