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おばあちゃんのおひざもと 第10話 リヤカーに乗せて

「『このリヤカーに二人とも乗せたらいい。体弱ってるんでしょ。ホラッ。』って隣のおばあさんがお父さんと孝江おばちゃんをリヤカーに乗せて、東にある診療所まで連れて行ってくれた。お父さんと孝江おばちゃんの下痢がなかなか止まらなくてねえ。3日経っても水みたいなうんちが続いて、痛がるし。医者に連れて行きたくても車なんかない。おじいちゃんもいない。下痢がひどくて歩けば汚しちゃうし、第一、ろくに食べてないから体力がなくて長い距離は歩けっこないでしょう。困って隣のおばさんのところに相談に行ったら、すぐにリヤカーを出して家まで来てくれた。それで子供二人をそこに乗せて診療所まで小一時間かけて一緒に行ってくれたの。本当にあの時は有り難かったねえ。お医者さんに診てもらったら、「赤痢の可能性があるから、このまま2、3日ここに泊って隔離しておいたほうが安全でしょう。」って言われてさ。伝染病だと人に移るといけないからってことで、確実ではないのに、子供を置いていくように言われてびっくりしたよ。二人一緒だったから独りよりはまだよかっただろうけど、診療所に泊まるのも心細かろうとかわいそうだった。だけど仕方がない。「先生のいうこと、ちゃんと聞くんだよ。毎日来るからね、ごめんよ」って言い聞かせてね。3、4日は入院したんじゃないかな。毎日、朝夕往復して着替えやおかゆなんか持って会いに行ったよ。」


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隠されたメッセージ。いろはかるたの小説版。最初から最後の章まで、各章の頭文字を書き出していくと、最後にこの本の核心が明らかになります。かるた同様、お遊び感覚でも楽しめる本です。

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