番外編5「神社にはお酒がよく似合う」第2話(全4話)
第1話はこちら
酔っ払った巫女さんが雑用係に迫る話(たぶん)。(今回の文章量:文庫見開き弱)
「だ……大丈夫ですか!?」
俺は慌てて駆け寄る。袴は狭い歩幅でしか歩けないので、慣れるまではバランスを崩しやすい。
もちろん、雫が慣れていないはずがない。
雫は、俺が差し伸べた手をつかむと、表情一つ変えずに起き上がった。この子が氷の無表情なのはいつものことだが、さすがに様子がおかしい。
お礼の一つも言わないことも、らしくない。
そのときになって俺は、雫の机に、昨日のウーロンハイが置かれていることに気づいた。プルタブは開いている。
まさか──。
「あれを飲んだんですか」
「ジョギングの後でシャワーを浴びて、喉が渇いてましたから。わたしが買ったお茶ですよ。飲み終わったと思ったのですが勘違いしていたようで、まだ残ってました」
なんてことだ──俺が伝え忘れていたばっかりに。
「おはよう」
兄貴が事務室に入ってきた。急いで事情を話すと、切れ長の目が大きくなる。
「雫ちゃんの一家は酒豪ばっかりなのに。酔っ払うなんて信じられない!」
「そういう問題じゃないだろう!」
「宮司さまのおっしゃるとおり、わたしの一家はみんなアルコールに強い。わたしだって、お酒を飲んだことはないけれど強いはずです」
力強く言い切る雫は、いつもとなんら変わりなく、確かに酔っているようには見えなかった。
でも、いつもは俺が兄貴に敬語を使わないと注意するのに、なにも言ってこない。
「それで? 壮馬さん、好きな人はいるんですか?」
質問の内容も、完全に酔っ払いだ──って、待て。
酔ってこんな質問をするのは、しらふのときも気になっているからじゃないか?
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