人生デザイン講座(7)仕事探しの落とし穴


●エリートでも就活に全滅する

スティーブ・ジョブズとビルゲイツは、履歴書を書いたことも、合同就職説明会に行ったことも、完璧なカバーレター(履歴書に添える自己PRのための挨拶状)の完璧な第一分野完璧な文体に悩んだこともない。ライフデザインの辞書に完璧と言う言葉はないし、アメリカの求職者が職探しに用いる標準的なモデル(成功率5%未満とも言われる方法)も間違いなく完璧とは程遠い。そう、アメリカ人の9割が、成功率5%にも満たない職探しの手法に頼っているわけだ。



●ネットは本当に究極の就活ツールか?

どういうわけか、インターネットが究極の就活ツールと言う考え方が主流になったが、これもう行き詰まりの思考の1つだ。

この思い込みは大きな失望につながる。やる気の喪失とセットで。


夢の仕事と言われるような最高の仕事はまず公開募集されない。いつか次世代のGoogleやアップルに化けるような新興企業のもっとも面白い職は、ネットに公開される前に埋まってしまう。社員50人未満で、まともな人事部のないような企業は、ワクワクする職場であることも多いのだが定期的に求人募集をしない。大企業の場合もっと興味深い職は社内のみで求人募集が行われているので、外部には公開されていない。そのほか多くの職も、口コミや人脈を通じて埋まらなかったときにはじめて公開で募集される。だからネットでは最高の仕事は見つからないのだ。あなたのいとこの友人の兄がネットで仕事を見つけたといくら熱弁を振るっても、それが事実だ。

ネット就活に頼っていると、見栄えの良いカバーレターを作ったり、応募する色に合わせて履歴書を修正したり、何時間ものオンライン上を管理したりするのに膨大な時間をとられてしまう。それだけの時間と労力をかけても、帰ってくるのはせいぜい耳をつんざくような無言ばかりだ。

ネット就活で前向きなフィードバックを帰ってくる事はあまりにも少ないので、就活と言うただでさえつまらない活動がもっとつまらなくなってしまう。ネットだけで職を探すのは究極の骨折り損だ。そのため、ネットだけに頼って職を探すのはオススメしないが、そうはいってもネットには毎週無数の求人情報が掲載される。ネットの求人情報をかき分け、仕事の選択肢を広げたい人のために、ネット就活の成功率を上げるヒントを「関係者目線で」いくつか紹介しておこう。


●職務記述書(求人票)のからくり

誤解しないで欲しい。世界中の人事責任者に悪意があるわけではない。プロセスに問題があると言いたいのだ。

中、大規模の平均的な企業は、年に何百回も求人募集、面接、採用を行うので、一回一回にそんなに時間をかけられない。だれだって有望な候補者を逃したくはないので、企業はかなり一般的な説明をつけてネットに求人情報を出し、なるべく多くを集めようとする。こうした採用活動は、人事責任者の日常業務に加えて行われるので、正確な情報の掲載に時間と注目が追加されることは少ないのだ。「私の履歴書はこの職務記述書(求人票)にぴったりだ!」と思って応募したのに、履歴書を受け取ったという確認の連絡さえ来ないなんて経験は何度あるだろう?

関係者目線で採用プロセスについて理解していれば、より納得がいくと思うし、余計な気苦労をしなくて済むだろう。


①普通、ウェブサイトに公開されている職務記述書(求人票)は、人事責任者や、実際の仕事についてきちんと理解してる人が書いているわけではない。

②職務記述書(求人票)を読んだだけでは、採用に必要な条件はまずわからない。





具体的に説明するため、ネット上の実際の職務記述書(求人票)から抜粋した(または参考にした)文章について分析してみよう。ほとんどの募集要項には、企業の求める人材について説明する2つか3つのセクションがある。

文章について分析してみよう。ほとんどの募集要項には、企業の求める人材について説明する2つか3つのセクションがある。

【セクション①】 導入部分

これは職務記述書(求人票)の冒頭部分であり、次のような内容が含むことが多い。

「〇〇社では次の条件を満たす候補者を探しています。」

・高い文章力とコミニケーション能力

・高い分析スキル

・ビジネスプランや報告書の高い作成スキル

・高いモチベーションと想像力

・物事に優先順位をつけ、素早く行動する能力

・高い自発性、行動力、細部への注意力

・イノベーション能力と市場の知識

・顧客の役に立ちたいと言う情熱

こうした条件はとても一般的なものなので、その仕事については実質的には何もわからない。優秀な従業員のスキルではなく、特徴に過ぎない。履歴書を見ただけでそういう人材をふるい分けるのはほとんど不可能でもある。


【セクション②】スキル

その次に、普通は必要なスキルを細かく記したセクションがある。

応募者に必要な経験

・(その企画と同じ分野における)10年間の経験と学士号、修士号、または、博士号

・(その企業で使用されている古いプログラム・プログラムに関する)五〜十年の使用経験

・(その企業の従業員しかやり方を知らない業務に関する)三〜五年の実務経験


職務記述書(求人票)どこの部分は、常に前任者の持っていたスキルで、つまり前例をもとにしている。職務内容が将来的に変わる可能性や、半年後に会社が別のソフトウェアプラットフォームに移行し、条件に指定されている知識が不要になる可能性を考慮していない。また、健全な成長企業では事務手続きや業務の手法が絶えず変化していくと言う事実も無視している。

【セクション③】 候補者に必要な特別な資質

まだ終わっていない。職務記述書(求人票)をよくよく見てみると、おもしろい部分が隠れている。この記述書を書いている人事担当者や管理者が、説明のなかにうっかりと真実を漏らし、次のような条件を加えてしまうのだ

・この役職は気弱な人には向きません。根性のあるひとだけ応募してください。

つまり、「どうしてもこの仕事がしたいひとだけ応募してください」という条件だ。「この仕事は最悪なので、イヤな仕事にも耐え抜いてきた根性のあるひとだけ応募してください」という意味だ。

・理不尽なほど激しいスケジュールのなかで、信じられない量の仕事をこなせるスーパーヒーローを求む。

「スーパーヒーロー」という条件は、「この仕事は不可能なので誰にもできません」と読み替えられる。

・エレガントで刺激的な解決策を生み出せるだけではなく、戦略を分析し、同僚と話し合う際に、発想力や説得力を発揮できる人物を求む。

わたしたちはこれを「希望的観測」条件と呼んでいる。求職者はだれしも、自分は発想力があり、エレガントで刺激的な人間だと思っている。全員がそう考えていると言う事は、候補者を振り分けるのにはあまり役立たない。これらは私たちの創作ではない。大企業の求人サイトから直接引っ張ってきた言葉だ。そして、企業にとって賢明な策とは言えない。こうした職務記述書(求人票)がかかる仕組みを知っていれば、ネット就活の成功率をアップする方法はいくらでも考えられるのだ。

●目立つ前に「フィット」させよう

面接の候補者として検討してもらうには、最終的にあなたの履歴書が他の履歴書の山の1番上に来なくてはならない。となると、最初にしなくてはならないのは、相手の求める条件にうまく「フィット」させることだ。とはいっても、嘘をつけと言う意味ではない。履歴書の山の中からあなたを見つけ出してもらいたいなら、会社が使っているのと同じ言葉で自分を表現することが必要なのだ。いかに、ネット就活をより効果的にするコツをまとめてみた。参考にして欲しい。


コツ①求人募集で使われているのと同じ言葉を使って履歴書を書きなおす。

求人募集で使われているのと同じ言葉を使って履歴書を書き直す。

例えば、先程の例で言えば、

「文章が得意で、コミュニケーションに自信があります」を

高い文章力とコミニケーション能力」に、

「顧客中心の姿勢」を

「顧客の役に立ちたいと言う情熱」に書き換えよう。キーワード検索で発見してもらえる可能性が高くなる。

そして、惜しみなく自己アピールをしよう。今は遠慮している時ではない。「やる気」や「想像力」は誰でも持っているはずだ。

コツ②「必須」とされている具体的なスキルを持っている場合、ネットの求人募集に書かれた通りに履歴書に記載する。


そのスキルを持っていない場合は、キーワード検索でヒットしそうな単語を使って、あなたのスキルを説明する手を考えよう。

コツ③履歴書を記載されている職務に一致させる。

たとえ職務記述書(求人)が漠然としていても、をすることであなたの履歴書が検索でヒットする確率がます。そうしたら、相手の言葉をなるべく多く用いて、あなたが会社に貢献できるスキルを説明しよう。その仕事があなたに合う理由ではなく、あなたが会社に対して貢献できる内容に着目すること。履歴書や初回の面接では、マルチな才能アピールするより、会社のニーズに応えることに専念したほうがいい。相手の求める最低限のスキルを持っていると納得してもらえたら、次はスキルの深海アピールする。「目立つ」べきなのはその時だ。


●「スーパーヒーロー求人」にご注意

私たちの経験から言うと、企業が現在の社員では、見出せないような求人条件を掲載することがよくある。この経営者の希望的観測は、アメリカの企業会を蝕む病理といえる。

「スーパーヒーロー」求人を出し、キーワード検索で履歴書を集めると、電話で候補者を選別する。面接の日取りを設定し、次々と候補者を面接するも、「スーパージェーン」は一向に現れない。そもそも、その新しい職務記述書(求人表)に一致する人は、ジェーンと同じ給料で働くわけがないだろう。このような面接プロセスは初めから半ば破綻している。面接チームと候補者の両方ともが燃え尽き、結局は誰も採用されない。あなたがこのような面接プロセスに巻き込まれたら、すぐに察知しないといけない。1つの方法は、その求人情報の掲載期間を確かめると言うもの。まともな雇用市場なら、求人情報が4週間以上も残っている事はまずない(最長でも6週間)。もう一つのては、今までの面接人数を尋ねると言うもの。どちらも、舞台裏で起きている事を知る手がかりになるだろう。確かめるのは意外に簡単だ。面接チームの1人に尋ねてみればいい。永遠と採用者が見つからない状況に陥ったら、相手もどこかがおかしいと気づき、不満を持ち始めるので、きっと教えてくれるだろう。もしかすると、会社を辞めたいと告白しだすかもしれない。そういう例はあなたが思う以上に多いのだ!

●人気企業に応募するときの注意点


人気企業に応募するときの注意点がある。人気企業は健全な業界であれば必ずある。あなたが興味を持っている業界にもおそらくいくつかあるだろう。問題は、条件を満たす候補者どころか採用後の候補者が余るほどいると言う点だ。募集人数をはるかに超える一流の候補者がいるのだ。その結果、人気企業は優秀な人材が見つかるかと言う心配は一切していない。人気企業が心配しているのは、むしろ無能な人材を雇ってしまうことだ。本当は変貌な人材を優秀な人材と思い込んで採用してしまうと、その企業にとっては悪夢でしかない。

採用ミスはほのかほど大ダメージをもたらす。近年では解雇のハードルは高いし、無事に解雇できたとしても、採用プロセス全体をいちからやり直すはめになる。

そういうわけで、企業を各人材の採用を防ぐためならなんでもする。本当は優秀な人材を見逃すこともかなり多めに見るのだ。うっかり優秀な人材を見逃しても、人気企業にとっては痛くも痒くもない。優秀な候補者はいくらでもいるので、多少取りこぼしたとしても、無能な放射をうっかり矢島よりはずっとマシなのだ。したがって、時に人気企業の採用プロセスは地獄絵図のようになる。優秀な人材がかけた理由もなく却下されることもしょっちゅうだ。もちろん、あなたにもその可能性はある。こういう企業には、現実離れした応募要件通りの人材が集まる(そんな事は現実には起こらないと話したが、人気企業は現実性もゆがめてしまう)。

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彼らは優秀な人材を見逃しても気にしない。気にする必要がないからだ。意地の悪さの問題ではない。それが人気と成功手に入れた企業の賢い京阪なのだ。これは重力問題であり、あなたにはどうしようもない。人気企業に応募しようと思うなら、相手のルールに従い、自分が勝利の条件満たしていると祈るしかない。

人気企業で働きたいと思うなら、前に説明したライフデザインインタビューを用いて、社内の人々と関係を気付こう。個人的な子子は大いに役立つ。それでも採用プロセスを突破する必要があるが、コネがないよりは有利に働くだろう。もちろん、挑戦するなとは言っていない。人気企業の社員の多くが自分の仕事を愛しているわけだから、挑戦する価値はあるだろう。ただし勝ち目が少ないことを残酷な位正直に認め、じっくりと作戦を練るべきだ。


●本当の仕事探しとは

お気づきかもしれないが、世の中にはこんな求人募集は見当たらない。

・自分の人生観と仕事観を結びつけたいと思っている人材を求む

・最高の仕事とは自分にしかない強みをうまく発揮してこそ見つかるものだと信じている人材を求む

・高い一貫性、物覚えの早さ、高いモチベーションを持つ人材を求む。残りは入社してから学んでいただきます

完璧な世界なら、こういう求人で溢れかえるだろう。しかし、現実はこうだ。企業は実際の仕事について実質的にほとんど何も語らない残酷な職務記述書(求人票)を掲載し、スーパーヒーローや根性に関する理不尽なコメントで説明を覆いつくす


私たちがネットで見つけた職務記述書の中で、本書で議論してきた問題に触れているものはひとつもなかった。人間はなぜ働くのか?仕事は何のためにあるのか?そういう深い話題について取り上げているものはなかった。そんな仕事に応募しようと思う人がいること自体、不思議だ。


ただ、思い出して欲しい。ライフデザイナーは重力問題には立ち向かわない。私たちはネットの求人情報を「正す」つもりなんてないのだ。でも、心配は無用。ネット上の職務記述書(求人票)がほとんど無意味でも、相手と会話を始める出発点にはなり得る。


「認識」はライフデザインにとって重要だ。特に、あなたがキャリアをデザインしようとしているならなおさら大事だ。あなたが採用、職務記述書の作成、履歴書の選別、面接のプロセスを雇用者側の視点から理解すれば、採用確率は格段にアップする。「共感」もデザイン重視の重要な道具だ。履歴書の山に漏れるかわいそうな人事責任者に共感し、理解すれば、より効果的な就活をデザインする方法がわかるだろう。ちょっとしたとは言え重要な視点の切り替えで、採用率はぐっと上がる。

【行き詰まり思考】自分にふさわしい仕事見つけることに着目するべき。

【こう考え直そう】適切な人材を見つけようとしている人事責任者の視点に立つべき。

あなたにぴったりと合う完璧な仕事なんてない。

でも、目の前の仕事をじゅうぶん完璧なものにすることならできるのだ。

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