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デジタルノマド日記―私がデジタルノマドになるまで

はじまり

小さい頃から色々な国を見てみたいと思っていた。父は学生時代に海外渡航経験があり、母はオーストラリアでワーホリや就業経験があったりと、どちらも海外に対する興味関心は強い方だった。私が小学生のときは家族で「日立 世界ふしぎ発見」などの番組をよく観たものだ。海外の有名な児童書も翻訳版でよく読んだ。自身が流行のものに疎かったこともあってか、当時流行りのドラマを観ていたクラスメイトの話題についていけないということは時折あったものの、それでもこのとき楽しく観ていた番組や読んでいた本は間違いなく後の進路にも影響を与えた。

海外への興味を強めた学生時代

中学・高校に進むと、私と同じような興味を抱いている人たちにも多く出会ったし、帰国子女のクラスがあり他国で育った友人が増えたことで、より海外という言葉を身近に感じるようになった。近所で個人が運営している英語教室に通っていたこともあり、英語という教科には少しばかり自信があったし好きな科目だった。読書好きだったので、文章を読むことはあまり苦にならず、国語や英語を学ぶうえで役に立ったと思う。こうした「好き」や「得意」、周りの環境もあって、大学では何か海外に関係することが学びたい、留学がしたいと思うようになり、外国語を強みにしている大学を志すようになった。
周り、特に家族のサポートもあって受験を乗り越え、希望の大学に進むと、さらに世界が広がった。他地域、他国の言語や文化、社会などについて学びたいという共通の思いを持ち、似た興味関心を抱く人に囲まれる心地良さがありながら、その対象、つまり対象の地域や国が異なり、多様な文化、価値観が一つのキャンパスに集合しているワクワクもあった。この大学で、優秀な、そしてユニークな友人たちに囲まれて勉強するのは本当に楽しかった。念願だった留学もして、就職活動を乗り越え、恵まれた学生生活を無事終了した私は社会人生活を迎えることとなった。

社会人生活、新型コロナ感染症、そしてモヤモヤ期

新卒では、英文翻訳者として雇ってもらえることとなり、4月から研修の日々が始まった。周りの同僚や先輩、上司の方は尊敬できる方ばかりで、いわゆるホワイトな職場だったので、このような恵まれた環境で言語に関わる仕事に従事していた自分は恵まれていたなと思う。読み慣れない文書の翻訳に難しさを感じながらもやりがいもあり、順調に経験を少しずつ積んでいたのだが、2年目に入る年で大きな変化があった。
 
新型コロナ感染症だ。日本でも感染者が増え始め、完全リモートワークへと移行した。職場環境自体は駅近で素敵な建物にはいっており非常に良かったのだが、通勤に対して嫌気が差していたこともあって、リモートワークは歓迎であった。職場の人に会えない寂しさはあったが、起床してメイクなどの身支度に大幅な時間を割くこともなくパソコンを開くだけ、仕事が終わればすぐに家事やご飯の用意を始められる。通勤がなくなり空いた時間で勉強したりできる生活スタイルは自分に合っていると思った。しかし、このような情勢の中で色々な息苦しさはあった。規制や要請などに対してどれくらい気をつけるかといった尺度や考え方の個人間の違いもあり、世の中がギスギスしていた。
 
そしてその頃、私は仕事に対しても、「好きだし向いているとは思うけど、なんか違うような気がする」というモヤモヤを感じ始めていた。
「大学生のときに感じていたワクワクはどこだろう。」
「でも、まだまだ新米なのに。こんなことを考えている暇があったら仕事で向上する努力をもっとすればいいじゃないか。」
「でも、また海外に滞在してみたい。」
「海外駐在・就職を目指しての転職も選択肢としてあるが、そもそも自分が望むものが不明確な状態で転職活動してもこのモヤモヤが解決するのだろうか。」
「もし、子供を授かったり持ち家について考え始めたり、近い将来に自分たちを取り巻く状況が変わったら(私はこの時すでに大学時代に出会って結婚した夫と二人での生活を始めていた)、海外滞在の難易度は経済的にも難易度が増すだろうな。」
今振り返ると、悩みの軸もよくわからないしウジウジと思い詰めていたとは思う。しかし、これがこの時私の頭の中をぐるぐる巡っていたことであり、檻に囚われているような気がして、精神的に落ち込む理由ではあったのだ。他人から見れば十分恵まれて自由な生活を送っていたとは思うが、それでも自由になりたかった。

決意

夫とは元々結婚前から一度長期で色々な場所を旅してみたいねと話していた。悩んでいる私を見た夫が、やるならまだ二人だけで時間的・経済的に自由がきく今やろう、と提案してくれたので、夫婦での話し合いを始め、デジタルノマドプロジェクトを決行することにした。子供が独立してからとか(まあまだ子供はいないし授かることができるかもわからないのだけれど)定年退職してからとか(定年まで生きている保証もないし)では、あちこちを飛び回ったり環境が頻繁に変わるスタイルの旅行をしたいと思うかどうかもわからないし、したくても出来る気力や体力、経済的余裕がないかもしれない。今したいことは、今しよう。ここから私のデジタルノマド生活はスタートした。

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