見出し画像

日本マドンナというヒーロー

日本マドンナというパンクバンドがいる。
スリーピースのガールズバンドだ。
可愛い見た目とは違い、激しいライブパフォーマンスや抉るような楽曲はまさにパンクバンドと言えるだろう。

彼女たちは、私のヒーローである。

2009年に高校生だった彼女たちがRO69 JACK09/10に並んだ時のインパクトは未だに覚えている。

当時、私は大学で軽音楽サークルに所属してコピーバンドを組んでいた。それまで女子部員がコピーするガールズバンドは椎名林檎やGO!GO!7188、チャットモンチーが主流で、恋愛をテーマにしたものが多く、曲が被らないようにしてライブを行なっていた。

ガールズバンドを聴いていないわけではなかったけれど、みんなが歌う愛やら恋やら失恋やらはなんだか恥ずかしくて、私はコピーをする気になれなかった。キーボーディストとして他のバンドの手伝いのような形でサークル活動をすることが多かった記憶がある。

そんな中、日本マドンナの楽曲を聴いて驚いた。制服を着た女子高生が生理やら幸せカップルファッキンシットやら叫んでいるのだ。

私の中で、ミドリで歌う後藤まりこ氏以来の衝撃を受けた。同時に、強く憧れを抱いた。

そうだ、これだ。

可愛いだけじゃなくて、勿論可愛くもなりたいんだけど、それ以上に何と表現したらいいかわからない気持ちをうわあああ!!!!とぶちまける感覚。恋愛をしたいとも思うけれど、いつもそれだけで頭がいっぱいではないし、お腹は減るし、妬みもするし、生理痛はつらいし嫌なことだって沢山ある。全員死ね、全員殺す、みたいな感情でぐるぐるすることだってある。私の吐き出したい言葉はこれなのだと、そんな風に感じた。

それから、彼女たちは私のヒーローとなった。

大学四年生の最後の卒業生追い出しライブで、どうしても日本マドンナのコピーバンドをやりたくて弾けないギターを頑張って練習した。殆ど話したことのなかった一年生のベースとドラムの女の子を誘って「どうしてもやりたい」と頼み込んだ。
それまで可愛い楽曲をやっていた後輩、特にベースボーカルをやってくれた女の子の彼氏からは「『生理』だけはやめてもらって良いですか?」なんてクソみたいなことを言われたりして楽曲決めが難航したけれど、何とか三曲演奏することが出来た。
色んなコピーバンドを組んだ中でも、私の中で日本マドンナのコピーをできたことは人生の中で満足度が高い出来事だった。

その後は、気心が知れたOBOGで年に一度やるようなライブで弾き語りという形で日本マドンナの楽曲をコピーしている。特に「田舎に暮らしたい」という曲はとても好きで毎回のように歌っていたから、後輩には「先輩のテーマソングみたいですね」なんて言われるようになった。
数年前、新しいアコースティックギターを買った私は勢いのままスタジオに入り「田舎に暮らしたい」を録った。その動画をこっそりツイッターに載せて翌日には消すつもりで眠った。
本当に偶然ではあるけれど、その動画をたまたま日本マドンナのベースボーカルのあんなさんが観てお気に入り登録をしてくれたことがある。
普段は過去を振り返ることはないのだけれど、と自身のツイッターに書いてくれたのは私の中で宝物になるくらいの出来事だった。目覚めてから驚き、悩みつつも前日決めた通りにツイートを消した。
まだ私はそのギターを使い、コピーに勤しんでいる。私のテーマソングを増やしているのだ。

解散からの復活を遂げた日本マドンナは、新しいアルバムを出したり精力的に活動をしている。CDを買ったりライブに行ったり、出来ることで応援を続けていきたい。

日本マドンナの楽曲は、「女だってやっていいんだ」ということをたくさん教えてくれた。
私は彼女たちよりだいぶ歳上だけれど、彼女たちが進む限りその背中を追い続けていきたい。

彼女たちは私のヒーローである。

#音楽 #コラム #エッセイ #日本マドンナ #パンク

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?