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No.61 アルマンディンガーネット

61アルマンディン

ただの黒い石のように見えるが、光に透かすとワインのような真紅色が現れる。このギャップが非常に萌えなアルマンディンガーネットだ。
だがしかし、黒っぽい。
この黒っぽさの原因はズバリ、中に過剰に入り込んだ鉄である。
鉄という物質は宝石業界にて嫌われ者であることが多い。サファイアやアクアマリンなどの鉱物にインクルージョンとして入り込むと、色が黒ずんだりくすんだりしてしまう。
もちろん対策として加熱により取り除くことが可能だが、加熱処理をした石はどうしても無処理の石より価値が下がってしまう。非常に厄介である。
だが必ずしも宝石にとって不要な物質であるわけではない。クオーツの中に鉄がなければアメジストは生まれないし、アクアマリンだって微量の鉄によってあの水色が実現しているのだ。そしてアルマンディンガーネットは結晶構造的に鉄が必要不可欠である。鉄があるからこそアルマンディンガーネットという鉱物は成り立っているのだ。同様にアキシナイトやベスビアナイトも結晶構造に鉄が必要な鉱物である。だから必ずしも宝石にとって鉄は不要なものではないのだ。
とはいえ、やはり宝石の黒ずみの原因の大半は鉄だ。
宝石として鉱物を扱うのであれば、鉄とどう向き合うかが大きな課題となっていくのかもしれない。


【補足】

〈加熱処理〉
基本的に鉄が溶ける温度(だいたい450℃)で加熱し、中にある黒ずみやくすみを落とす処理のことだが、ジルコンやゾイサイトなど色味を買えるために加熱処理を行う場合もある。このような加熱処理を「通常加熱(Heat)」と呼ぶ。もちろん価値は無処理のものよりも劣るが、通常加熱の温度は自然界であり得る温度であるため、宝石としての価値は認められている。
しかし、ルビーやサファイアなどのコランダム系の鉱物はかなりの高熱に耐えることができるため、完全に真っ黒で宝石にならないような原石をコランダムが溶けるギリギリの温度(1600〜1900℃)で加熱し、中にあるインクルージョンをすべて焼き尽くすことによって無理やり宝石に仕上げる処理方法がある。これは「高温加熱(Burn)」と呼ばれており、こちらは自然界では想定しにくい温度であるため、高温加熱を施したサファイアやルビーは宝石として価値はないとされている。


【参考書籍】

「決定版 宝石」
諏訪恭一 著  世界文化社  2013年

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