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No.2 アメジスト
アメジストとは紫水晶のことである。
水晶と聞くと占い師の前に置いてある透明な丸い球を想像しやすいが、水晶とは学術的にはクオーツという鉱物で、このクオーツの変種の一つがアメジストなのだ。
アメジストにはギリシャ神話にて「酒の神バッカスが自身のせいで石に変えられてしまった少女をあわれみ、償いとしてその石に葡萄酒をかけたらアメジストが生まれた」という伝承がある。嘘か本当かは定かではないが、今回のアメジストはまさに伝承をそのまま体現したように瑞々しく鮮やかな紫色をしている。食べたら葡萄の甘く澄んだ味がしそうな素晴らしい結晶だ。
ルーペで拡大してみると、結晶の中に細かいクラックが入っている。これが繊細な輝きを放っているため全体的にうるうるとした潤いを演出しているのかもしれない。
また一部黄みがかっている部分もあるが、これはこれでまた味である。
余談だが、このアメジストは行きつけの鉱物店の片隅でひっそりと当時540円という価格で売られていた。実はアメジストという石は社長室に置いてあるような子供の背丈ぐらいの物の原石ならともかく、手のひらサイズであれば意外と安く手に入る。
これを聞き「なんだ、安物じゃん」と思った方もいるだろう。
確かに、これはリーズナブルな安物だ。だが私個人としてはこのアメジストには値段以上の魅力があると思っている。
鉱物の良さというのは値段では測れない。石自体の個性や自身の好みによって良さが大きく左右されるからだ。当然中には値段が高くとも「あまりいい品とは思えない」というものもあるし、逆に「どうしてこんないい物がこんな安いの⁈」といった掘り出し物に出会うこともたくさんある。
要は鉱物に限らず、物の良さというのは値段や周りの評価だけでは決まらないという事だ。だからこそ世間の評価に左右されず、このアメジストのように「自分が好きなんだからいいんだ!」と胸を張って言えるような勇気を持ちたいものである。
だが、実際に私はできているのだろうか。ちょっと疑問に思う今日この頃。
【補足】
クオーツは日本語で訳すと石英である。水晶というのは石英が大きな結晶化したものを指すため、鉱物の名前ではない。
【参考書籍】
「ネイチャーガイド・シリーズ 宝石」
ロナウド・ルイス・ボネヴィッツ 文
伊藤伸子 訳 化学同人 2015年
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