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No.32 タンザナイト

32.タンザナイト

今をときめくタンザナイトの原石だ。しかも非加熱である。
一般的に流通しているタンザナイトはほとんど褐色のゾイサイトを加熱して渋みを消し青くしたものなのだが、こちらは加熱処理せずとも青かったらしい。非加熱のタンザナイトは珍しくなかなか出回ることが少ないのだ。
このタンザナイトには多色性があり、見る角度によって青や藤色に色が変わって見える。クラックからこぼれるキラキラもよい。微妙に緑っぽい部分もありなかなか面白いタンザナイトである。
だがこのようなタンザナイトの多色性は欧米人には好まれていないようだ。日本人は多色性があるものを好むが、欧米では多色性が少なく青味の強いものが好まれているらしい。
このように地域によって好まれる石が異なるという事は少なくない。
例えばルビー。フランス人は色が濃いものを好むが、イタリア人と日本人は若干色が薄いものを好むそうだ。他にもオパールは欧米より日本で好まれる傾向があるようで、特にブラックオパールは日本で非常に人気が高い。
また男女によっても好みが異なる場合があるようで、アクアマリンは男性よりも女性の方が色の薄いものを好む傾向があるようだ。
その他時代によっても好まれる石は変化する。例えばスピネル。かつては「ルビーの偽物」というレッテルを貼られ、ルビーやサファイアよりはるかに人気がなかったが、現在ではその美しさが見直されてルビーやサファイアよりも人気の高い品となっている。逆にオパールはかつて「愛の石」と呼ばれ人気が高かったのだが、18世紀に「オパールを持つヒロインが不幸になる」という内容の小説が出た影響で一気に「不幸の石」として扱われるようになってしまった。現在でもこのような理由でオパールを嫌う人は多いらしい。
性別や地域、さらには時代によっても好まれる石は異なる。だからこそ鉱物収集、特にルースに関しては流行や評判に流されずに好みを貫く必要があると私は考えている。
参考までに私の事例をあげると、私は原石やルースを買う際に必ずこだわるポイント絞って選んでいる。裏を返せばある程度はこだわりのために妥協して選んでいるという事だ。
例を挙げると、タンザナイトは色が濃く輝きが強いものが人気だが、私個人としては色が淡い方が好きだ。むしろ色より輝きの方が大事だと考えている。そして加熱かどうかについてはあまりこだわっていない。何故ならよっぽど厳密に鑑別しなければ加熱かどうかなんてはっきりと差が出ないからだ。
こんな感じでこだわるポイントと別にこだわらなくていい所を決めて選ぶと99%安くて好みの品が見つかる。
もちろんこの考え方は他の鉱物や宝石でも応用が可能だ。結婚指輪で宝石を選ぶ際にも透明感や輝きなど、一つだけこだわるポイントを見つけてその他をほどほどに妥協すれば、おのず手ごろな値段で好みの宝石が見つかる。ちなみに宝石を売る方としても「高くていいからいい物を!」と言われるより「〇〇な〇〇が欲しいです、その他〇〇などはこだわりません」といった感じで具体的なイメージを言ってくれた方が助かるそうだ。
大切なのは「いい物より好みのものを選ぶ」という事だ。
この考え方は鉱物や宝石の他にも応用が利くかもしれない。

【参考書籍】

「決定版 宝石」
諏訪恭一 著  世界文化社  2013年


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