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読みかけ「ノートルダム・ド・パリ」 進捗 15 決着


ほぼ決着がつきます。
あと1回だけ、後日譚+読了報告して終了とします。

長かった。2年越しで取り組んだ作品だったのに、ここに投稿するようになってからサラッサラ読み終わったので、読書の経過報告やTwitterの読了ツイートなどは、ものすごく読書のためになる、ということがよくわかった。



目次はこちらです。

まとめ 読みかけ「ノートルダム・ド・パリ」進捗 1~14まで

グーテンベルクのリンクです。(英語版フランス語版
フランス語は読めないので英語の翻訳で挑戦。
訳したのはIsabel F. Hapgoodさん

前回までの記事

注:この記事はすごくすごくネタバレです!



階下の大乱闘中に、エスメラルダの所にフロロと詩人君が到着。
グランゴワール君はエスメラルダよりも山羊のことをずっと心配していたようだ。
愛情をこめて強く抱きしめる(→山羊を)
固い友情で結ばれている様子。山羊ちゃんの喜びっぷりがちょっと可愛い。割となついてた。

なんとかエスメラルダを助け出し、セーヌ川に漕ぎ出す3人&山羊。
グランゴワール、山羊にちゅっちゅしてる。どんだけ可愛いんだやぎが。
フロロはフードを深くかぶっているので顔は見えないが、エスメラルダはなんとなく不吉な予感がして詩人君のそばに寄り添っているのに全然興味なし。見もしない。
これだけ沢山の男性を虜にしているエスメラルダなのに。

Moreover, he had not yet uttered a word or breathed a syllable. No other noise was heard in the boat than the splashing of the oars, mingled with the rippling of the water along her sides.

一言も喋らないフロロ、この描写はまるでシーンとした中に水音だけが響く様子が耳に聞こえてくるようだ。

争いがここにも迫ってきて、グランゴワール君はヤギの方を抱っこして逃走、エスメラルダはフロロに連れて行かれる。
もうな、グランゴワールお前なぁ…。
危うく見つかりそうになりながらも何とか避けてやっとたどりついたのは、絞首刑の台のところ。

最悪!!

(最近完結したイノサンでマリーがアントワネットを助けたと見せて、向かった先が絞首台だったとちょっと思い出す)

ここでフロロは思いのたけを打ち明けて、もう一度愛を乞う。
ここではさすがに可哀想になるぐらい訴えている。
でもエスメラルダの出した結論は「less horrible」
死刑の方がまだマシと言うかマジで怖い、死ぬよりもフロロの方が怖い。

フロロ、悲しみのあまり号泣する。どうやっても通じないのか、どんなに愛しているかわかってほしい、私の心の声を聴いて欲しい。
それはまあ、あんぽんたんよりは確かにな。
自分のことと山羊のことしか考えていないし王様に訴えもしない、臆病者の書類上の夫よりもな。
カジモドはさすがにちょっと醜すぎるだろうとフロロは思っている。
でもこの中ではカジモドが一番マシというか、心が清らかかもしれない。

拒絶された果てにわずかに我に返ってフロロが思うのは身内である弟のことだった。
カイン、お前は何をした?
これは確かに聖書の中のアベルを殺したカインに対して神が語りかける言葉だ。
ということはフロロは弟の死を知っているのか。見ていたんだな。
フロロの目の前に弟の体は落ちてきて地面に投げつけられたらしい。しかもその弟の死の理由を作ったのは自分だ、この女のために!
逆恨みの炎が燃える。
(いや、単純に自業自得だと思いますが…なんであの人そこにいるのっていうか…)

His voice grew ever weaker; he repeated many times, yet, mechanically, at tolerably long intervals, like a bell prolonging its last vibration: "Because of her.--Because of her."

ストーカー気質というより、こんな思考の人は多いような気がしてる。

--After all, if a man loves a woman, 'tis not his fault!--

世界で起きてる酸攻撃を思う。
フロロあきらめきれず、一言だけ優しい言葉をかけてくれと嘆願する。
少しというか、だいぶ妥協した。もう愛は乞わないからと。

エスメラルダの答え。

"You are an assassin!"

これは、確かに隊長の後ろから忍び寄って刺したのでアサシンなのだが、訳としては「人殺し!」だろうか。

怒り狂ったフロロはエスメラルダに襲い掛かる。
これはまじもんでかなりやばい。

汚らしいからさわるな、と叫ぶエスメラルダ、フィーバスの名前をまた出すのでフロロも逆上、すぐに追手に見つかるところまでエスメラルダをひきずっていく。
最後の問い「自分のものになるか?」「NO!」→「じゃあ死ね」

フロロは追手を呼ぶ。
そしてここでエスメラルダ、逃げようとするのだが実の母(尼)に取っ捕まえられて放してもらえない。
「死ね!吊るされろジプシー!わたしの子供を返せ!!!!」
その一点張り。

(ここでいまさらだが説明すると、この尼は半地下みたいな所に住んでいて、鉄格子から外を見てはジプシーを呪っているという設定。その半地下の鉄格子から手が伸びてきてエスメラルダをとっ捕まえてるわけ)

とにかく子供を返せ返せの一点張りで何の話も聞いてもらえない。

ここで尼がずっと子供の形見といつくしんでいた子供用のくつの片方が、エスメラルダのかばんからぽろっと転がり落ちてきて、こんな切羽詰まった状態で涙の再会!
ここでかよ!やっとかよ!

やっぱりこの母と娘の再会は、最終局面まで持ち越した。

娘の危機を察した母親は、すさまじい火事場の馬鹿力を発揮して鉄格子を破壊。
娘を半地下に引きずり込んで追手から隠す。
突然の母親マッチョ化にこれは笑っていいのか…でも切羽詰まってるし、再会は感動だしでもう、どんな顔していいかわからない状態で読んでいた。

追手と母親の息詰まる一問一答。
こいつは手に汗握る。
今までのジプシー嫌いが幸いして、「いや~この尼がまさか、魔女をかばうはずはないし」と、なんとかやり過ごしたの…に!
そこにフィーバスの声がする。

エスメラルダ、我を失って激しく名前を呼ぶ。

ばか
ばか
ほんとばか
もうそれはない。

これはあれだ。
雉も鳴かずば撃たれまいに。

しかも声はフィーバスには届かない。聞こえないまま隊長は去っていく。(届いたとしてもどうだっただろうだが…)

ついに見つかってしまったエスメラルダ。
最後の母親の抵抗、追手を前にしての大演説に、さすがの兵士たちもためらう。
ここで処刑を王から直接厳命されたのはトリスタンという部下なのだが、彼も思わずももらい泣き。
しかし命令は命令なので捕らえて処刑台に連れて行く。

エスメラルダのささやき「おかあさんたすけて」

お前よういうわ。
あほ

母親は娘にしがみついてどうしても離れようとせず、死刑執行人まで涙する。(でもやめない)
縄が首にかけられたところで
「やだ、やだ!」
やるせない娘の叫びに母親は心臓が破れて昏倒、そのまま死んでしまう。

見なくて良かった。
わたしも先に死にたい。



ノートルダムではカジモドが狂気のようにエスメラルダを探していた。

今更だけど フロロガエスメラルダを探すためにグランゴワールがどうしても必要だったのは 、自分だけだと付いてきてくれなかったからだと気がついた。

カジモドの狂乱ぶりがすごい。 エスメラルダが寝ていた布団ちょっと匂いを嗅いでみたり、頭を擦り付けたりとか 若干キモい。
フロロがエスメラルダを連れ去ったと動物的な本能で悟る。
今までのことが走馬灯のように記憶を流れ、思い返した挙句こんな一コマが

Nevertheless, such was his respect for the priest, such his gratitude, his devotion, his love for this man had taken such deep root in his heart, that they resisted, even at this moment, the talons of jealousy and despair.

弟を可愛がっていたように、フロロに人の心は確かにあった。

Some tardy stars were fading away at various points, and there was a very brilliant one in the east, in the brightest part of the heavens. The sun was about to appear; Paris was beginning to move. A very white and very pure light brought out vividly to the eye all the outlines that its thousands of houses present to the east. The giant shadow of the towers leaped from roof to roof, from one end of the great city to the other. There were several quarters from which were already heard voices and noisy sounds. Here the stroke of a bell, there the stroke of a hammer, beyond, the complicated clatter of a cart in motion.

人々が動き出す。
一日はまた始まる。

狂乱の夜が明ける。朝焼けのパリの描写が美しい。
悪夢は覚めた。何かが終わった。エスメラルダの死を幕引きにして。

あれほど緊迫したシーン、あれほど手に汗を握っていた情景が穏やかに落ち着いて、奇妙な静けさと穏やかさの中でこのドラマの終焉を待っている。

絞首を見届けたフロロの口から、最早人間ではない笑いが漏れる。
カジモドは怒りのあまりフロロに飛び掛かるが、投げ落とす感じではない。
どこかのネタバレでは、「ぶんなげた」と書いてた。(ネタバレ読んだんかーい)

どん!と押す感じ。

フロロはエスメラルダの絞首を見たくて、欄干に膝ををかけて乗り出してたからそこを押された。
雨どいに引っかかって必死で登ろうとするが御影石がつるつるで無理。ごらんのとおりかなり垂直だし。
ノートルダムが彼を拒否したのだ。

カジモド、一応手を差し伸べてる。
でもフロロの方をよく見てない。
上の空で処刑台の方に気を取られている。

フロロが捕まっている雨どいの鉛のパイプが重みで曲がる。
すごく視覚的な描写だ。
もう目の前に見えるよう。ぶら下がった雨どいが曲がる、こんな映画のシーンよくある。
エスメラルダの処刑も縄が旋回したり体が痙攣したりと視覚的だった。

作者、最後の最後にこのフロロという男をめちゃゆっくり殺す。
最後の緊張感あふれるシーン。

下で人々が、あれは首を折るぞ?などと言ってるのが聞こえる。
フロロのついに落ちた時の落ちっぷり、書いてる本人が落ちたことがあるような描写がすごい。
落ちているときのポーズまで表現する。

近くの屋根に吹き落される。
まだ完全には死んでない。
破風に爪痕をつけながらすべり落ちていき、敷石(pavement)に落ちる。
もう動かない。

奈落が彼を飲み込むのを待っている。

カジモドの独白

all that I have ever loved!

目を上げてエスメラルダを見て、目を落としてフロロを見る。
わたしが今まで愛したものすべて、というわけだ。

フロロはノートルダム大聖堂からまっさかさまに文字通り地獄へと投げ落とされた。





続く

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