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読みかけ「ノートルダム・ド・パリ」 進捗 14 王様論文パート+大乱闘はほぼ戦争


あと二回か?ラストスパート。それにしても長いことやってきたが(まだ終わってないけど)、これを書くのはとても楽しかった。たくさんの残したメモから読んでいる当時のどきどきワクワクがよみがえってきた。

またやろう。(まだ終わってない)


目次はこちらです。

まとめ 読みかけ「ノートルダム・ド・パリ」進捗 1~13まで

グーテンベルクのリンクです。(英語版フランス語版
フランス語は読めないので英語の翻訳で挑戦。
訳したのはIsabel F. Hapgoodさん

前回までの記事

注:この記事はすごくネタバレです!




突然舞台は変わって当時の王様の様子が延々と描かれる。
冒頭の退屈だった論文パートふたたびだ。
このエスメラルダの事件の王様はルイ11世(LouisXI.)。
フランスの王様はみんな名前がついているがこの人は「慎重王」。とても地味ではあるのだが、個人的にかなり好きな王様で、出てきた時には「おっ」と思った。

古典好きの風上にもおけないようなことを言うが、歴史論文パートやテンションの下がる長々しい説明パート、こういうのはナナメよみでいいと思います。
興味が出た時にじっくりと読み返せばいいだけの話だ。

しかしここまで読んできたが、はっきり言って一般的に思われているであろうあらすじに合致してはいる。一応、一部合ってはいる…が…、全体的にぜんぜん、想像と違う。

だいたいこんな風なんだろうね~という予想にはまらない。
別物だ。

これは古典を読んでいるときに本当によくある現象で
ちがうやん!別物やん!この説明書いた奴出て来い!
ということがよくある。


さてこの論文パートにはきらびやかな名前が並ぶ。

the Louvre, the Palace, the Bastille, the Tournelles, but simply seignorial residences, the Petit-Bourbon, the Hotel de Sens,

オテル=ド=サン庭園
アングレーム・ラモワニョン館
the Hotel d' Angouleme, etc.,
サン=ジェルマン=デ=プレ
The Abbey of Saint-German-des-Pres was castellated like a baronial mansion,

ここで唐突な新単語?「footpad」

イメージ:肉球
現実:footpad (徒歩の)追いはぎ(Weblioより

あぶないあぶない。
これだからやっぱり、ん?て思った単語は「多分肉球だろう」なんて思わずに調べた方がいいんだ。
そこまではしてられないから、スルーが殆どなんですが。

バスチーユを視察する王

The interior was hollow. It was one of those famous cages of prisoners of state, which were called "the little daughters of the king."

牢獄を視察する中で、怨嗟を含む嘆願の声が巻き起こる。
王が考えてるのは経費のことだけだった。
猜疑心が強かったという話なので、このキャラクターは間違いではないが…。
あれやこれや、節約に頭を悩ませた挙げ句に王が出した結論

死刑囚に食べさせる分がもったいない。

これどこかで聞いたことがある、正確にいうと見たことがある。
ニュースのコメント欄だ。

 早く死刑にしろ
 お金の無駄
 なぜ生かしておくのか
 税金が使われている
 ただ飯

そんな意見だったはずだ。

功利主義の狭間で切り捨てられるそれぞれの個人の事情。
王への嘆願の悲鳴は、システムと言う名前の石臼にすりつぶされていく苦しみ、声なき叫びだ。

是非はともかく、先を読み進めよう。

この王様パートで、政治というより実務に関する話が異常に長い。大乱闘の先が気になるのにたいへんもったいぶる。
でも、この冷静で細心な王の描写が長く長~~く続くうちに、だいたい見えたなという感じがしてくる。
だってページがもうないもん。

さらっと下まで見た感じ(英語テキストのよいところは、ぱっと見ではさっぱり何が起きているかわからないからネタバレ回避になるところ)
この王宮のシーンが激長であとは短いもの…。もうラストは近いんだ。

エスメラルダの救出には失敗したんだなと予想する。
というか、バッドエンドなことは最初から知っているのだ!!
ノートルダム・ド・パリを読むということは、それがどうなってバッドエンドになったかを恐怖に震えながら確認する作業だ。

などと考えながら流し読みで読んでいると…。

パリに暴動が起きました!との知らせが王のもとに届いた。
激しく動揺しながらも反乱なのかと疑い、声を低くしろ!と命じるが説明を聞いて笑い出す。

武装した平民がノートルダムに押し寄せている。

王は王が誰なのか示そうとする。
秩序の帰属を明記するのはよくあることだ。
裁判所がアホな冤罪の死刑を押し通そうとしているのも同じことだ。権威を示すためにたとえそれが間違っていてもやり通す。
すべての人に問いたい。
それが本当に正しいことなのかを。

王の前に引き出された数名の中に混じってるグランゴワール!
みんな、この騒動がいったいなぜ起きたのか知らない。
お前だよ、お前!お前が王様に全部頭から説明して、冤罪を訴えればいいだけの話なんだよ!

しかし、この臆病者は、「皆が集まってるから集まった」的な答え。弱ぇ…。
首謀者として死刑になるのをおそれるあまり、王に何も説明しない。

もったいぶった王と廷臣の話がここからも長々と続く。だが、こういうターンって退屈で何の意味もないように思われながらもう、物語に心が取り込まれちゃっているのでここでやめようなどという気はさらさらなく(だって続き気になるし!!!)飛ばしてもいいのに次々に読んでいく。

正直この様のターンは本当に翻訳者さんの力を借りたいところ。
全然わからない上につまらない。沢山の有名(たぶん)貴族たちの名前があめあられと降り注ぐ。覚えられる気もないし全く興味もない。だけど読み飛ばせないこの地獄。

みんなで翻訳、私ならこう訳すみたいな参加型のオンライン読書会があったらいいのになあ。

王様が質問を投げかける「暴動の起こし方」がちょっと面白い。
「それは民の中の不満を利用すればいいのですよ」と言われてる。
そして具体例が「ちょっと奥さんこの毛皮の税金が2倍になったそうですよ」みたいな感じ。現代にも通じる。

長い長い王のターンの話の終わりにやっと出てきた暴動の説明が、致命的なダメージを与える。

"Sire, a sorceress was condemned to death by your court of parliament. She took refuge in Notre-Dame. The people are trying to take her from thence by main force. Monsieur the provost and monsieur the chevalier of the watch, who have just come from the riot, are here to give me the lie if this is not the truth. The populace is besieging Notre-Dame."

そして王様は、民は魔女が罰を免れたのを怒っているのだろうという、大いなる勘違い。
グランゴワールは逃げ出した。

ノートルダム大聖堂のことを王は「我らの貴婦人(our lady)」と読ぶ。
魔女はその貴婦人の寛大な庇護を与えるに値しないと言う王の判断。


そこで王の言葉から逆説的に導かれるのは、ノートルダムは母が無実の娘を守る姿だったということだった。
聖母マリアの自愛を象徴していた。

王様に放免されてすたこら逃げ出してきたグリンゴワールとフロロがニアミス。
やっぱり助けるつもりなのか。フロロは船まで係留させている。

疲れきってるけど自分のためには戦わないカジモド。
そんなことしないでさっさと引き渡せよとも思うのだが…このパリじゅうを揺るがす大騒動の中で出ていっても、エスメラルダは踏まれて死ぬだけだったかもしれない。

…と考えてる最中に王の派遣した鎮圧部隊が到着してフィーバス登場。
もうエスメラルダに関してはお前に何も期待してないよ。

戦闘場面が迫力満点、まるで大河ドラマ。関ヶ原を見てるみたい
たった一人の少女のためにこの大騒動だ。
多分エスメラルダが歌っていたのと同じ子守歌を口ずさみながらものすごく勇猛に戦っているクロパン。
道化のイメージまるでない。なんで道化にしたディズニーよ。
むしろ関羽みたいだよ。
クロパンとカジモドは、(たぶん)実の兄弟でありながら知らずに戦っているのだ。

しかし、鎮圧部隊に押されて暴徒の群れは負け確定。
カジモドは喜んで戻るがエスメラルダの部屋は空っぽ(!)。

一体誰がジプシーアイドルJKとヤリチンくそ男と陰キャストーカーの三角関係がこんなめちゃくちゃな大騒動に発展すると思うだろうか。
スケールでかいぜ。



続く


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