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音が聞こえなくなってから、どれくらい経つだろう。 遠くの方から聞こえた「みーつけた」の声も、今は聞こえなくなった。辺りはしんとしていた。それが余計に僕を混乱させた。 ドク・ドク・ドク。 心臓の鼓動は、やたらと大きく鳴っていた。胸に手を当てると、ますますそのテンポは速くなる。 ドクッ・ドクッ・ドクッ。 周囲はまっ暗だった。 まるで暗闇は、この世の全ての光を吸収したかのように、僕を包み込んでいた。目は開いているに、目を閉じているような錯覚さえおぼえた。 試
僕が見えない糸に気づいたのは、引っ越してから3日日の朝だった。その日はひどく疲れていて、体がものすごく重かった。それなのに、ベットから即座に起き上がり、部屋を軽やかに動き回って、家事をこなしていた。まるで上から見えない糸を吊るされて、操り人形になったみたいだ。 掃除や洗濯を終わらせてソファに腰を下ろすと、全ての疲労感が僕を襲った。見えない誰かに体を操られ、労働を強制させられたようなものなのだから、それも無理はない。 僕はサイドテーブルに目をやると、見慣れない本が置か