おおだこの正体見たり……


タコ刺しと怪談

 我ながら酷いタイトルだ(笑)。一応、元ネタのリスペクトはあるし、575の定型を守ってるから許していただきたい。
 で、今回の話は北海道に法事に行った時の話です。普段、そういう場所でわざわざ怪談を聞いたりはしない。しかし、法事後に父と叔父に連れていかれた寿司屋の大将にタコの刺身を頼んだ時、そういえばと言って、大将が話してくれたのが今回の話になる。

大将の語った話

 大将がまだ10代の頃、恐らく昭和の中葉から1970年代前半くらいだろうか。彼は海に遊びに行くことが多かったらしい。中でも、ある橋から海に飛び込むことが度胸試しとして流行っていたらしい(ちなみに叔父と父は度胸が足りなくて飛び込んだことがなかったらしい)。
 さて、大将が飛び込もうとしたある日のこと。下を見ると、黒い、タコの触手のような何かがうごめいている。しかも、でかく、大群を作っているようだ。その街では水タコが市場で売られており、巨大なタコを見る機会は多々ある。そんなタコより大きいということは目測で5メートルくらいはあったのではなかろうか(水タコは足を広げると3メートルから5メートルくらいになるという)。そんな海に彼は意を決して飛び込んだ。
 飛び込むと、脚に何かぬるぬるとしたものが絡みついてくる。さっきのタコか。はたまた幽霊か。
 大将は意を決して足に絡まっているものを見た。

 大量の昆布だった。

おおだこと昆布

 正直なところ、私はその話が嘘だと思った。まさか昆布とタコを見間違えるわけがないと。見間違えて海に飛び込んだところで、脚まで絡むということはなかろうと。ところが、父や叔父の感想を聞いているとそうでもなさそうなのだ。
 聞くに、橋の欄干から海まで相当な距離があったらしい。曇りなどのやや天気が悪い日なら見間違えることもあるだろうか(あと、北海道の海は栄養が豊富なため、海の明度が低いイメージもある)。加えて、父や叔父も同意していたことだが、北海道の昆布は本州のそれと比べて巨大で大量らしい。叔父が本州の海を見た時、昆布がないことに驚いたとのこと(これはこれで本当かどうか気になるところだが)。
 とにかく北海道と本州はいろいろ違うようだ。

感想

 半ば、ギャグのような話だが、考えてみると中々恐ろしいのかもしれない。水中で何か絡まったとき、地上にいる時よりも重く、しぶとく絡みつくのは想像に難くない。しかもそれが、大量の昆布となれば……
 海の怪談なんかで誰かが足を掴んでいたというものがあるが、正体はこんなものかもしれない。
 おおだこの正体見たり海昆布といったところか。
 
 最後までくだらなくて申し訳ない。

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