dawn

piano improvisation, poetry/yuri
artwork/souya

落陽は言葉を遮った。丁寧に積んで並べた積木の赤を見つめる。

静謐に見せかけた世界は何時も憂いを見つめた少女の夢のなかで。

ひとしきり閃いた光に汚された睫毛を不憫に思うことでさえ許されぬ世界。

植物は濁った太陽のひかりに誘われ、狂ったような甘美な花を咲かせては目抜き通りでシャッターの音を電子音に変えている。
たくさんの音は重なり合って、目の前の現実を偽装し、解像度をあげた電子の花が仮想世界に並んでゆく。
スワイプで千切られた花はドライフラワーになることはない。
何時でも鮮度を保っていなければ、其処に意味は持たないのだから。

劣化した第六感で、音を、匂いを、風を感じて。
存在しない空間に消えていく過程で、青い飛沫をあげて情報の雨の中に溶けていく「時」。

デジタルの夢を、音を、光を、かつての直感に戻して。
砂時計は気まぐれに私の時を遅らせたり早めたりして、桜の開花を迎える前に私をこの暗然の夜に閉じ込めた。

ベンゾジアゼピンの夢は、何時も貴方をかき消そうとする。

静謐に見せかけるごとに濁っていく視界。
ここは苦海でしかないのに。
人ではない、そして、天使でも悪魔でもなく、何者でもない知能が肉体と結ばれないままの意識に審判を下して夢を裁く。

私は懊悩の渦に飲まれて。
最後の望みをお願い、耳元できかせて。
水のように透き通った瞳へ。

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