【短篇小説】台所に生えたカビに花と名付ける桃見ちゃん

桃見ちゃんは、お腹の出来物に「必ずや叶う光の曲芸」と名付けて、心底愛した。
白髪を引っこ抜いて、「光のつゆだく、汚れの隠滅」と名付けて、机の引き出しの上から二番目の取手にくるんとかけた。
桃見ちゃんはいつも、道を歩いている中で、何か、桃見ちゃん的にウワアとなる物を見かける度に、愛の想いでそれに名前を付けるのであった。

ある日、黒猫が前足で顎を掻いている所に向けて、ペットボトルを蹴ってぶつける男を見かけた。
黒猫はすぐに走って去っていき見えなくなった。男は歩きながらスマホをポケットから取り出し、それを眺めながら進んで行った。
一部始終を見ていた桃見ちゃんは、怒りで我慢が出来なくなるも、この悪魔な男に愛の想いを存分にぶつけた名前を付けるポリシーをなんとか奮起させ、「鬼鬼鬼鬼鬼鬼鬼鬼鬼鬼鬼鬼鬼殺し多分おいしっ!!!!!!!!」と、飲んだ事のない鬼殺しを褒めて、桃見ちゃんは自分の心をなんとか治めた。

それから、桃見ちゃんが初めて鬼殺しを飲んだ時、「ああ、やっぱ正しかったな」と、ムカつきながら酔ったのであった。

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