見出し画像

 今日8月9日は長崎への原爆投下の日です。私の母は長崎出身で、私は被爆者三世にあたります。
 母から聞いた話によると、その日、母のいちばん上の姉(私からみて伯母)が庭先で遊んでいると、空が急にキラキラと輝きだしたそうです。それをお母さんに見せてあげようと、伯母は家の中に飛び込み、
「母ちゃん、空がきれかとよ! 早く来んね来んね!!」
と引っ張ったのですが、お母さん(祖母)は裁縫をしていてすぐには立ち上がらず、グズグズしているうちにどおんと爆発したのだそうです。
 
 そのとき祖母がグズグズしていなかったら、母も私もこの世にいなかったかもしれません。ありがとう、ほとんど覚えていないお祖母ちゃん、グズグズしてくれて。サッと立ち上がって子どもとの感動を大切にする良いママだったら、もっと重篤な被害を受けていました。そのグズグズが私たちを生んくれたのです。そんな素晴らしきグズグズ遺伝子を、私が大切に守り継いでいきたいと思っています。グズグズ万歳。戦争反対。

 絵が好きだった伯母は晩年、焼け爛れた町で見た黒焦げになりひっくり返った馬を絵に残し、この世を去りました。伯母から原爆の話しは聞いたことがありませんでした。今になって聞いておけば良かったと後悔しています。
 長女だった伯母は看護師となって母たち弟妹を経済的に支えてくれたそうです。伯母は酒飲みで、我が強くて、本が好きで、定年後は旅行にたくさん行きました。そんな伯母が大好きでした。
 ミルコが学校に行かなかった時期も、「よかじゃなか?」と言ってくれた唯一の親戚でした。
 酔っぱらうと大胆に体を動かしたくなるようで、平和記念像によじ登ったという伝説が親戚の間でまことしやかに残っています。被爆者なのに。大好きでした。
 原爆のことだけじゃなく、もっと伯母さんと話してみたかった。
 あのとき伯母が「お母さんにもあのキレイな空を見せてあげたい」と思わなければ、母も私は生きていなかったかもしれない。
 ありがとう。
 
 いつも戦争とか世界平和とかについて考えているわけじゃないけど、伯母のことを思い出すから、私にとって8月9日は毎年少し特別な日です。 
 核兵器なんていらない。
 今日くらいは声を大にして言います。
 

最後までお読みくださりありがとうございます。記事は無料で書いていくつもりですので、コメント・応援・サポートなどいただけると、とても嬉しいです!