自己紹介|あどけない話

はじめまして。雨立といいます。東京在住の大学生です。
普段考えていることのアウトプット、日記等を投稿していければと思います。よろしくお願いします。


血の中の故郷

東京に来てから、郷愁の念がますます強くなってきた。
東京のムシっとした夏は嫌いだし、空間にも心にも余白がない街だといつも感じる。
それと比べた故郷の、ゆったりと流れる時間、山で感じる涼しい潮風、どこまでも吸えそうな空気、山脈のおかげで台風なんか怖くないとかいう根拠のない自信。
「橋」は「は↑し↓」で、歌は「1題目、2題目」。
18年暮らしてきた故郷は僕の血とともに流れ、この土地に拒否反応を起こしている。

昨年の春、小学生の時の通学路を歩いていると、三菱のカーディーラーがなくなっていた。
昔、トイレにどうしても行きたくて無断で立ち入り、オーナーに怒られた場所。遠くからでも見えた看板は僕のランドマークだった。
心に穴が空いたように感じたが、何度も訪れるにつれて悲しみはようやく薄れてきた。

東京は嫌いだが、大学卒業後しばらくは東京で働くのだろうと思っている。もしかすると、故郷にいた期間と同じだけ東京で暮らすのかもしれない。
就職した後しばらく、それこそ18年は故郷に帰れないのかもしれない。
大きな時間の隔たりを超えて故郷に着いたとき、僕の血はどうなっているのだろうか。

雨立は東京に空が無いといふ、
ほんとの空が見たいといふ。
私は驚いて空を見る。
桜若葉の間に在るのは、
切つても切れない
むかしなじみのきれいな空だ。
どんよりけむる地平のぼかしは
うすもも色の朝のしめりだ。
雨立は遠くを見ながら言ふ。
二上山の山の上に
毎日出てゐる青い空が
雨立のほんとの空だといふ。
あどけない空の話である。




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