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映画『哀愁しんでれら』初回レビュー(ネタバレあり)

幸せを追い求める真面目な女性が社会を震撼させる凶悪事件を起こす姿を描いたサスペンス。

誰のレビューも見ずに感じたことをつらつらと書いて消化していきたい。
まさに書き終わるまでSNSを開きまてん!

出来るだけネタバレしないように色んな情報をシャットアウトしていたが、1つだけ目にしていたのは“ラストが嫌い“という意見。

正直ラストを見た時に裏切られたような、残念なような気持ちになった。
私もラストは嫌いだ。

映画館を出てトイレに入る。
トイレの中で小春は何故あんな事を起こしたのか考えだすが、なかなか答えが出ない。
駐車場に行きたいのに頭がボンヤリして道に迷う。
スマホケースについたスマイルマークのアクセサリーを見たくない。
なんだろう…もの凄く不思議な感覚に陥った。

この物語の冒頭に出てくる裕福ではないけれど仲が良く温かい小春の家族。
楽しそうに笑っているどこにでもあるような家族の姿。
多分だれも今が幸せだと気付いていないけれどきっとこういう瞬間が幸せなんだろう。

そこから一気に転落していく小春。
母親に捨てられた過去を疎み、あんな母親にはなりたくないと思っている。
そこに現れた外車に乗ったお医者様は、奥様を事故で亡くし、男手ひとりで子供を育ている素敵な王子様。

酒に酔って踏切で倒れた彼を助ける小春。
命の恩人の小春を精神的にも経済的にも救っていく大悟。
2人の幸せへの階段を駆け上がる様はとても美しく、こんなシンデレラストーリーがあったら。と想像するだけで幸せになる。

予告で見ていたダンスシーン。
唐突にダンス?
と違和感を感じていたが、本編で観ると、家族の幸福の絶頂の瞬間がうっとりとするほど美しく脳裏に残る。
後半と前半の幸福の高低差を描く為には、
もの凄い意味のあるシーンだった。


完璧な王子様だと思っていた大悟の人への偏見。
異常なまでの娘への愛情。
気付いているけど気付かないふりをしようとしている小春。

それに応えようと、自分の母親のようにはなるまいと献身的に努めている姿はシンデレラのよう。

少しずつ歪んでいく家族の姿、葬式に赤い靴を履いていくと聞かないヒカリへの苛立ちや諦め。

夫の大切なものを壊してしまった後、突発的にしてしまった事。

同じでは無いが、どれも似たような体感をした事のある感情だった。

自分で言うのも何だが私は温厚なタイプだ。
だけれども2歳差兄妹の子育てをするなか、2人同時に泣かれたり、遅刻寸前で思い通りに動いてくれない子供に怒りや憤りを感ることはあった。いや今もある。
自分が温厚な人じゃ無かったら…このまま子供に酷いことをしていたかも。
なんて思いながら何とか堪えたことも、堪えきれずに当たってしまった感情がある。

ヒカリを叩いてしまった後の小春を見ると、共感の嵐で涙が止まらなかった。

血のつながりとか関係なく、1人の娘が親となり、親なんだからこれが出来て当たり前だと思い込み、インスタとかYouTubeとかに映るキラキラした人を見ては自分は何故出来ないのか責める。

理想と現実が歪んだ時の空虚感。
小春を見ていると誰しもが経験する事のようだ。

そして大悟も。
かつてイジメから救ってくれなかった母親を憎み大人になった。
娘への深い愛情。
それを叶えてくれない小春への怒り。
学歴が自分を支えてくれたという揺るぎない思い。

小春も大悟もただ大切な何かを愛したい、愛されたいだけなのにその強い思いが歪みを生んでいく。

子を持つ親として、ラストシーンは許し難いものだった。

土屋太鳳さんがオファーを断った理由。
医療従事者への思い。

渡部監督!
やっちまったな〜!ぐらいの衝撃で、小2の子を持つ親としては許せない結末。

でも冷静になって考えた。
劇中に小春や大悟が言っていた“あとヒカリに何が出来るか…“という事。

ヒカリにはこれから長い人生が待っている訳で、人を殺したかもしれない噂は消えなくて、それなら皆んな消してしまおう。
それで我が子が幸せになるなら。
親なら誰でも思うことなのかもしれない。
流石にやり過ぎだが、これぞ映画!

この映画を観て人は何を思うのか、自分は何を思ったのか。
観賞後の余韻の中でずっと考えていた。

幸せになりたい。嫌われたく無い。充実したい。
そんな思いに駆られて自分が不幸だと感じた時に小春と大悟を思い出して欲しい。
完璧の先にあるものが幸せとは限らない。

いま自分がいる場所が1番幸せなのかもしれない。
幸せについて考えるきっかけになる映画。
観賞後、すぐに帰って子どもを抱きしめたいと思った。

できればボタンを掛け違いたくないなぁ〜
とにかく慎重に家に帰ろうと思った。
運転に力が入って肩がこった。

色んな人の感想を見たり、再度鑑賞するときっと全然違う思いになるのなもしれないが、ここに記したのは、まっさらな気持ちで感じたこと。
全くの的外れだったりして…
早く他の人の感想が見たいー。

最後にしずる村上さんのように一言ずつ。

渡部監督め!
ニコニコ可愛らしい顔でこんなにも私の心を振り回しやがって〜。
…ありがとう。

土屋太鳳さんの妖艶さと奥深さ魅了されました。あんなに色っぽい表情をするとは、もう子供に見えなくて困っちゃった。
本当によくこの役を演じてくれたなぁ。
…ありがとう。

COCOちゃん。
あなたは凄い。初演技なんて鑑賞中に頭をよぎることはないぐらい。
憎たらしくて、危なっかしくて、ハラハラした。いっぱい努力してくれてありがとう。

田中圭さん。
爽やかで色っぽいまさに理想的な男性。
でも時折見せる表情の変化に、もの凄い闇を感じた。
大袈裟ではなくものすごくナチュラルに出してくるもんだから気のせいかな?
なんて思ったりして。
嫌悪感を覚えるような発言や行動も全て無かったことにしたくなる。
壊れそうな大悟を守りたくて失いたくなくてどんどん小春が洗脳されていく。
罪な男を演じさせたら日本一。
心拍数を上げてくれてありがとう。


最後に舞台挨拶のライブビューイングの感想。
監督が出てきた時にちょっと涙が出そうになった。
みんなの前で披露できて良かったね〜。
お母さん来てる〜?
って…いつのまにか監督のファンみたいになっていて驚いた。
話すのも上手で人を立てるのも上手。
空気を読める人なんだろうな。

土屋太鳳ちゃんの発言には嘘がない。
出来たでホヤホヤの感情を伝えてくれるから、言葉に詰まるけれど物凄く伝わっていた。

田中圭さんは終始自由だった。
場を和ませるのが本当に上手。
安心安定時々不安定という感じが毎度好き。
退場する時に太鳳ちゃんのドレスの裾を踏んだのかドタバタして消えていったところまで、本当に飾らないひと。

大変な状況のなか開催してくれて、全国配信してくれて…スタッフさんに感謝。
この映画が多くの人に届きますように。

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