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OZU ~小津安二郎が描いた物語~ 『出来ごころ』田中圭が演じた喜八は駄目という言葉ではくくれない、どうしようもなく愛くるしい人でした。


連続ドラマW 
OZU ~小津安二郎が描いた物語~

小津安二郎生誕120年記念。
小津監督の初期サイレント映画6作をリメイクしたオムニバスドラマ。



予告編


田中圭さんは第1回の『出来ごころ』に出演している。


喜八は妻と別れ、息子の富夫と2人で暮らしながらも、酒や博打に夢中になってしまうダメ親父。そんな喜八を演じる田中は「原作を見て、無声映画というのにも驚きましたし、自分とキャラが違うので、どうしようかと思いました」と戸惑いを見せるが、演じる喜八について、「憎めない“駄目なヤツ”みたいなところが普遍的なんだよなと感じ、演じていてやりがいがありました!」と感想を述べている。


私はこの作品を観た後でオリジナルの『出来ごころ』も観た。

活弁入りの無声映画など観たことのない私だけれど、コチラの喜八さんもめちゃくちゃキュートで次郎さんはめちゃくちゃ格好よくて、台詞はないのにこんなにも引き込まれるものなんだなと驚いた。

「出来ごころ」は、90年前に公開され、1933年のキネマ旬報ベスト・テン第1位を獲得。喜八という庶民の生活を描いたシリーズ“喜八もの”の第1作で、下町の軽妙なユーモアと人情を描いた傑作だ。喜八のキャラクターは、後の「寅さん」シリーズをはじめとする“松竹大船調”の原点とも言われている。

既出のTVガイドwebより引用


城定監督の手により作られた『出来ごころ』はオリジナルのエピソードや台詞などを大切にしながら今見ても違和感のないかたちで現代に蘇らせている。

ラストシーンの展開の違いなどもあるけれど、まさによく出来てやがらぁな作品である。

時折モノクロになるオリジナルのオマージュも素敵だった。

だけどやはりあの作品の喜八役を田中圭が演じる事になるとは想像もつかない。

キャスティングの裏側。

圭さんがかつて生きた役がつなげてくれた縁だっただなんてすごく素敵なエピソードだ。

田中さんの名前があったんですけど、役的にどうかなと。そんななか夜中に『死神さん』の再放送を見て、変な田中さんがいるなと。こういうキャラも行けるんだと。勢いで松竹さんとWOWOWさんに『田中圭さんでどうですかね』と提案して」とオファーの舞台裏を明かした。

素敵な作品をつくり、田中圭さんの魅力をギッシリと詰め込んでくれた城定監督に厚く御礼を申し上げたい。

死神さん×田中圭はコチラ


喜八さん寄りの感想

時代設定はハッキリとしていないが何処か懐かしく、でも親しみのあるノスタルジックな世界観。

ランドセルの色がカラフルなのはわざとなのかしら。

はるか昔のように感じたり、自分の子供の頃を思い出したり、今もこんな場所があるのでは。
と思わせられるそんな映像だ。

人付き合いが気薄になった現代と比べて人情味あふれる下町の光景に心が温まる。

田中圭さん演じる喜八は男手1つで小学四年生の息子富夫を育てている。

決して裕福ではなく酒や博打に溺れてしまうようなダメな所もありつつも、人情があって憎めない。
つい手を差し伸べたくなるような人だ。

憎めないクズ。
そんな役だとは聞いていたけれどクズという言葉に違和感を持ってしまうほどに愛くるしい。

舞台挨拶より

喜八というキャラクターが、憎めないクズという感じなんですよね。なぜかは分からない、体感的なものではありますが、憎めないクズの役ならばできなくもないな、という感覚を持ちました。


浅黒く薄汚れた肌にボサボサに乱れた髪。
すこし丸まった背中。

いつだってどこからどう見ても格好いい田中圭なのに、喜八という役を生きる姿はなんだか情け無くて格好悪い。

めかし込んだスーツ姿のシーンにおいては、いつだってどんな服だって着こなしてしまう田中圭なのに、なんだか服に着られているような滑稽さがあってクスリと笑ってしまう。

春江ちゃんと初めて会った時に自分のことを見ていると勘違いするシーンでの表情も、ザ・眼中にない男としての可笑しさが滲み出ていてあの一瞬で女好きの駄目男みたいな彼の人となりが伝わってくる。

田中圭×コメディの相性の良さを感じる一方で、時折みせる儚さや哀愁ある表情が胸に突き刺さる程に格好良くてズブズブと沼にハマってしまう。

彼をこうさせたのには理由があるはず。
田中圭の演じるいわゆるダメ男役を見る時、どうしたって憎めないし、なんとしてでも許す理由を探したくなる、そんな魔法にかかってしまうのは私だけだろうか。

喜八と富夫の親子のシーンではお酒に溺れたりギャンブルをしたり駄目なところもあるトーチャンだけど、お金はなくても精のつく物を食べさせてあげたいという親心。

ジャンケンの強さ、手作りした人形、そして手の指の話や海の話、よく出来てやがらぁと顔をクシャクシャにして心から感心したような表情を見せる喜八さんは子どもを全力で肯定してくれる。

情けないけどピュアで可愛くて、富夫がお父さんの事を好きな理由がよく分かる。

そんな親子を温かく見守る次郎さんやおとめさんもまた喜八さんの事が好きだし。
困った時にきっと喜八さんも不器用ながら全力で守ろうとしてくれるだろう。

登場人物みんなが温かくて思いやりがあり、どのシーンも見ていてすごくホッコリする。
すごく素敵な作品。


お気に入りのシーンはたくさんあるけれど、やはりラストシーンの長回し。

苦しそうにもつれそうになりそうな足で必死に走る姿。

当たり前かもだけれど、走り方や息遣いまでもが圭さんがこれまで生きてきたどの役とも違う。

ちょっぴり情け無くて、でも真っ直ぐな喜八さんらしい走り方。
頑張れ!頑張れ!と見ているこちらにも力が入り感情を揺さぶられる。

頭の良い富夫の行動と、真っ直ぐな喜八の行動が重なるとき、馬鹿野郎と言いながらも大切そうに富夫を抱きしめるその表情を見ていると安堵の気持ちでいっぱいになる。

切っても切れない。
切ってはいけない。
そんな親子の絆。

きっと2人は時が経っても2人らしくお互いを思いやりながら仲良く過ごしていくんだろうな。
この親子の物語をまた見てみたい。
そんな余韻溢れるラストシーンも素敵だった。

あれから何度も何度も観ているが私はまだまだ余韻のなか。

老若男女たくさんの人の心にきっと残る作品。
無料配信期間中に多くの人がみてくれますように。





そしてこの初回作品をきっかけに全6話WOWOWで見る人が多くいますように。

私もWOWOWに加入して全力で待機しています。


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ほんと田中圭さんって素敵な人ですよね。

格好いい田中圭も、格好悪い田中圭も、色っぽい田中圭も、悪い田中圭も、これからも沢山の素敵な役を見せてもらえますように。

雨音





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