am9.

疲れた時はアイスを食べるかお酒を呑みましょう

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疲れた時はアイスを食べるかお酒を呑みましょう

マガジン

  • 誰かのお話

    横断歩道の向かい側の人へ

  • 詩を書く授業をとりました。その記録です。

最近の記事

水槽の中で

窓の外を見ながら電車に揺られている。 海が見えたりしないかなとはじめは期待を抱いていたが今は何を求めて外を見ているのかわからない。雨でアスファルトが濡れて街灯が反射している、ロイヤルホストをみるとほうれん草のソテーを思い出す、それくらい。 今日は休日だからこの時間は人が少なかった。変わらず外を見ながら電車に揺られているとふと自分の顔が映った。 自分の顔ではなかった。私の後ろの人と目が合った。 怖くなかったのが不思議でずっと見た。 車窓に映る風貌と背格好で話し方が分かるような

    • 忘れなくていいこと

      いろんな最後に遭遇すると今までを肯定できる何かを探してしまうけどそういうことじゃないのはわかっているけど無意識にそういう何かを求めている自分です。 少し前に書いた文章を見返すと別れは本当に大切な人が明確になるとか書いてたけど、今の私はすぐにでも目が潤みそうになるほどいろんなことに愛おしいさを感じてしまうそんな弱さが漂っているように思います。今は誰かに頼りたい。靴は踵を踏まずに歩きますから。ちゃんと。

      • なにもないけど

        雪が降った 耳が痛くなるほどの寒さを誰かと共有しておきたくて声に出してみるけど近くに誰もいないからスマホを取り出すけど誰が見るのかと恥ずかしくなって電源だけつけて見つめてみた。天気なんて別にどうでもいいし気にしてるから気分が上下してしまうし憂鬱になるけど天気がどうとか話せるってとても穏やかに感じるのはなぜだろう。雪が降ると少しの光でも反射するから夜でも明るくていつもより静かで雪と水の匂いがして瞬きをしたくなくなる膜のようなものを感じる。無駄にカーテンを開け閉めして外を眺めて

        • 循環

          レシートが長いなと感じたので 少し焦って眺めると半分以上は割引券でした ああと声を漏らして捨てました 捨ててあったくしゃくしゃのレシートを取り出して まっすぐに伸ばして 綺麗に折って財布に入れました

        水槽の中で

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        • 誰かのお話
          17本
        • 12本

        記事

          朝靄

          ざらついた くすんでいる にじむ それくらいがいい 見えすぎてもいいことない それくらいがいい

          開いたままの玄関から

          お久しぶりですと正座をしながら挨拶をして 大きくなったと声を掛けられて 時間の流れは速いなんて話して 若いうちに何でもやりなさいと言われて 座布団を並べながら部屋に漂うお線香の香りに包まれ 冷えた足が沈む畳 部屋全体を見渡してこの空気を吸ってみると 戻るんです 背伸びしなくても届くようになりました

          開いたままの玄関から

          臨時で犬がいる

          私が家を出る分、もう1人増やすのはどうだろう 7時間勤務という言葉におびえ終えて店を出ると日が落ちていた 顔が瞬く間に冬に覆われた  家に帰ったら犬がいるらしい お試しでおばあちゃんの家から来るらしい わんと吠えられたら 慣れていないです吠えられるのに という顔になりそうです 臨時で犬がいます 今日も私の視界に犬がいます 人間みたいだなと思います 来世は犬になる

          臨時で犬がいる

          ガムに噛まれた奴

          擦れたかかとに気を取られていると 目の前に車が止まった 行く道を邪魔してきたような気がして いらいらした私は バックミラーをばれないように軽く殴った

          ガムに噛まれた奴

          銀のスパンコールと少し伸びた睫毛

          シャンプーの匂いがすると言われた日は 自然と前を向くことが出来る 寝ている睫毛を指でなぞると冬になるから 一緒に布団にもぐりたくなる 自分と同じタイミングで鳥肌が立つ人がいる 嬉しさを噛み締めながらの帰路 いつもより高めの珈琲を頼むあのときめきと 年末の自分への甘やかしを どうかお許しください 顔を見て微笑み合う日常 そんな銀幕の世界がくることを願って

          銀のスパンコールと少し伸びた睫毛

          靴下が濡れた話

          時計を見飽きた頃 雨に降られた と言って非常口から入ってくる じめっとした味が好きなの コーヒー片手に語る時間は湿地のようで 私たちはどろどろに溶けた

          靴下が濡れた話

          手のひら

          目を開けると大きくて 目を擦ると声が聞こえる 上から見ている2人を思って呟く 畳と線香と布団の匂いが混ざり合う おはよう おはよう

          手のひら

          二重構造

          カラオケの履歴を無意識に見る 前のお客さんは50歳くらいの人かな 前を向くとピンクが笑っていて私も笑ってみる うまくやってるじゃん と感心してきてどんどん相槌をして 聞き上手に成り上がってみたり 手持ち無沙汰な時間を無駄にしていない気がするように文字を書いてるふり 洗濯物が揺れている

          二重構造

          慈しみのあの感じ

          鼓膜が膨張して 世界の音がねじれて 金箔が舞うあの光景は あまり慣れない 流すのか発するのか 今日も合図を待っている人がいる

          慈しみのあの感じ

          32

          黒のずっと奥 背中に流れる 水のように形を変えていく  まだわからなくて 気がつくと夏になった

          湯船

          手のひらで触れたそれはひんやりと冷たく 同時に鼻の奥がつんとした 私と正反対なあなたは 私の無意識という演技に気がついていて 時計の針の音を大きくして あなたを感じた日 白く濁ったお湯の中に頭まで沈んだ

          とりとめのないやつ

          気がつくとサンダルを履いた私は夜の道を歩いていた。 財布が突っ込まれたポケットは大きく膨らみ、右に傾いているようにも見える。夜のあれを求めて歩いていたのだろう。と今読み返した私は思う。友達からもらった古本の背表紙にはコーヒーの染みのような跡があり、受け取ったときにあっ、と思ったその時のよく分からない困惑を思い出して少し面白くなりながらその日は27ページまで目を通して眠りについた。 奥歯で噛みしめた味がずっと残っている気がして、いつもより多めにうがいをした。その時には103ペ

          とりとめのないやつ