「バスケ選手の競技力」を構成する4つの能力
バスケはとても複雑なゲームなので、あまり1つの要素にこだわり過ぎると、ゲームに必要な要素に欠ける偏った選手になってしまうかもしれません。
例えば、将来的に「ボールの扱いはとても上手だが、ゲームを理解しておらずプレーは稚拙」といった選手になってしまう可能性もあります。
このようなタイトルの本も書かれています。
もちろん細部にこだわることはとても重要ですが、同時に引いた目で全体を見ることも忘れてはいけません。
そこで、「バスケの全体像」を捉え続けるために、これから紹介する4つの要素の観点を持つことをお勧めします。
4つの能力と「競技力の木」
バスケ選手の能力を大きく分類すると、次の図のようになると考えています。
技術🤹
戦術🧭
身体💪
精神🧘🏻
僕はこの4つの能力の関係を、「競技力の木」として次の図のように捉えています。
この分類はバスケ業界ではあまり聞きませんが、サッカー業界では使われることが多いようです。
試しに次のキーワードをネットで検索してみてください。
たくさんの図が出てくると思います。
「Mental Physical Tactical Technical」
これはただの「見方」なので、どのように考えてもよいのですが、僕はバスケ選手もこの4つの能力に分類して捉えるのがちょうど良いと思っています。
続いて、それぞれの要素について簡単に説明します。
技術的能力 - Technical
技術的能力は「こうしよう」と思ったことを身体で実行する力です。身体的な運動では「分かる」ことと「できる」ことは異なります。例えば、「あそこにパスするべきだ」と分かったとしても、そのための技術が身についていなければプレーとして実行することはできません。
技術は、実際に表現されるプレーそのものです。シュートやドリブル、パスといったボールを使ったものだけでなく、走る、止まる、跳ぶといったこともバスケの技術です。バスケにおける「良い走り方」「良い止まり方」といった、「身のこなしの良し悪し」があると思います。
そういったものを含めて、身体の動作の巧みさや、できることの多さのことを技術的能力と分類しています。
戦術的能力 - Tactical
戦術的能力はバスケにおける「判断力」そのものです。「ゲーム理解度の高さ」とも言えます。
これは「決断力」とは全く異なるもので、ゲームの目的(勝利)のために最適な選択をする力のことです。
最適な選択をするためには、「バスケとはどんなゲームか」をよく理解している必要があります。
例えば、身体能力が高く、精神状態も万全、技術にも優れているといった選手がいたとして、ルールを知らなかったために決定的なミスをしてしまうということがあり得ます。
反対に、身体能力が特別でない選手でも、バスケをよく理解していれば活躍することができます。これはバスケの大きな魅力だと思います。
戦術的能力の高い選手は、適切な時に、適切な場所で、適切なプレーをすることで活躍します。さらに、戦術的能力の発揮の方法は、自分がプレーするだけではありません。自分が動かなくても、チームメートに優れた声かけをすることでチームを導くということも可能です。これはベンチからでもできる貢献の方法です。
バスケは、力と力の真っ向勝負ではなく、駆け引きをして「相手の想定の外」でプレーするべきものです。
そのためには、ゲームをよく理解した「賢い選手」になる必要があります。バスケにおける賢さとは「ゲーム理解度」のことです。このような力のことを戦術的能力と分類しています。
戦術的能力は「バスケはどんなゲームか」についてよく学び、考えること高めることができます。
これらのnoteはまさにそのために書いています。
身体的能力 - Physical
身体的能力はいわゆる身体能力のことです。
この要素は、パフォーマンスをするための身体的な可能性だと考えています。
例えば、ジャンプしてリングに手が届かない人は、いくらボール扱いや身のこなしが上手でもダンクできる可能性がありません。
バスケはスポーツですから、身体的な能力は競技力の大きな要因です。
個人の身体的能力を高めて、パフォーマンスの可能性を広げることはバスケ選手にとって重要です。
この要素については情報が多く馴染みもあると思うので、あまり補足は必要ないかと思います。
精神的能力 - Mental
精神的能力は、バスケ選手にとって望ましい精神状態でいる力だと考えています。
ゲーム中はやるべきことに集中していることが理想ですが、実際はなかなかそうはいきません。余計なことを考えてしまったり、感情が揺さぶられたりすることが多いのではないでしょうか。
例えば、試合が始まる時には集中できていたとしても、劣勢になったり、ミスが続いたりすると苛立ったり、不安になったりするということがあると思います。
バスケでは、やるべきことに集中するのが難しいからこそ、精神的な能力が重要になります。
4つの能力は「一体」である
これらの4つの能力を完全に切り分けられません。互いに強く関係しています。
例えば、良い精神状態でプレーができると、持っている技術を最大限に発揮できます。反対に、高い技術を持っていることが自信になり、良い精神状態でプレーできるということもあります。戦術についても、頭では「こうするべき」と分かっていても、それを実行できる身体と技術がなければ、実現させることができません。
このように、それぞれの要素が互いに影響し合っています。
こうした要素のつながりを表したのが、「競技力の木」です。
このように、4つの要素は、木の部位のように互いに影響し合っています。
何かひとつを切り離して高めるような取り組みにこだわることは、あまり有効ではありません。
この4つの要素があることを理解しながら、互いのつながりや全体像を捉えて日々の活動に取り組むべきです。
「心・技・体」との違い
日本で馴染みのある「心技体」の切り口では、技術と戦術が一体になっています。
「心技体」は武道に由来する言葉らしく、個人戦を前提にされたものだと思います。個人戦では発揮する技術は本人の判断と結びついており、パフォーマンスに直接反映されるため、理にかなっています。
バスケも捉え方によっては同じなのですが、おそらく「戦術」の要素をもう少し大きく捉える必要があります。
大きな違いは一度にプレーする選手の数が10人と多いこと、そして、身体以外に「ボール」や「ゴール」という戦術的な要素が加わっていることです。
個人種目でさえ奥が深いのに、バスケのようにプレー人数が多く、道具も使うとなると、起きる出来事の可能性が膨大になります。例えば、バスケは10人でプレーするものなので、判断は常に10ヶ所で行われています。そして、その組み合わせの結果がプレーに表現されます。これだけでもチームゲームの複雑さがイメージできるのではないでしょうか。
もう少し具体的な例では、パスの技術に優れた選手「A」と、キャッチの技術に優れた選手「B」がいたとします。Aがコートの状況を読んでBにパスをするべきだと判断しても、Bが同じパスをイメージして動かなければそのパスは実現しません。これは、技術は持っているが、戦術の要素に欠けたためプレーが成功しなかった例です。
もちろん個人種目でも同じようなことが起きると思うのですが、判断の要素の多さや、ゲームの結果への影響の大きさから、バスケでは「戦術」を個別に取り上げる価値があると思います。
これが、バスケでは「心技体」ではなく、4つ要素に分類する理由です。
おしまい
今回は、バスケ選手の競技力を4つに分類する観点を紹介しました。
冒頭でも触れた通り、細部にこだわり過ぎて全体像を見失わないために、この「4つの能力」という考え方を使ってみてください。
ではまた。(塩野)
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