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〈Column〉 海と温泉と珈琲

この文章は2018年に発行されたALUHI Vol.001に掲載されているものの再掲載です。写真や年数などは当時のままとなります。

2018年4月1日発行

「海と温泉と珈琲」


 露天風呂の縁に立ち、生まれたままの姿で雄大な東シナ海を前に、しばし感動に浸り立ち尽くす「嗚呼、この夕日まるでバリ島…」思ってはみたものの、人生で一回タイへ行っただけの僕には完全な妄想である。

 湯船で身体を温めなおしてから浴室をあとにし脱衣所で着替えていると、どこからともなく焙煎のいい匂いが漂って来た。「アイスコーヒーが飲みたい!」と頭の中の自分が叫んだかと思うと、瓶入りキンキンのコーヒー牛乳の気持ちでいた僕の心は強引かつスマートに方向を変えた。よくよく考えると温泉の脱衣所で焙煎の薫りが漂うなんて、非日常とも思える状況がここでは日常の光景となっていることに気づいた。


今となっては懐かしい当時の店内と若干若いNARUTO

 SHIRAHAMA COFFEE STANDができたのは2016年の夏、4年前にUターンした冨永成人さんが、東京で勉強した焙煎技術を基にして、エスプレッソマシーンを導入したり、深煎りや浅煎りなど焙煎をいろいろ試してみたりと、独学で研究して白浜温泉の一画にコーヒースタンドをオープンさせたのである。

 地元密着の温泉なので近所のおじいちゃんおばあちゃん達もたくさんやって来る、そしてお風呂上がりに自家焙煎の珈琲を飲んでいる。これもまたこの場所ならではの光景だと感じた。聞けばここの珈琲を飲んでからブラックの珈琲が飲めるようになったという方もいた。珈琲本来の味がしっかりしている証拠だろう。

 そしてこのコーヒースタンドがオープンしてから、若い年齢層のお客さんが急増してきている、温泉に入らずにコーヒースタンドをめがけてくるお客さんも少なくない。何故かというと、そう「インスタ映え」というやつである。この東シナ海を一望できるロケーション、外には南国風のデッキもあってゆっくりくつろげる、そして美味しくておしゃれな珈琲やラテ。これは確かに「ばえる!」インスタを見て訪れる人が多いことも頷ける。

 知らぬ間に再度方向を変えた僕は、カフェ・ラテを片手にデッキへ行き、そっと携帯のシャッターボタンを押した。

SHIRAHAMA COFFEE STAND
いちき串木野市羽島265-1
(白浜温泉みすまるの湯フロント前)
0996-35-0031
営業時間・定休日はWeb or SNSでご確認ください。

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