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小説(1分以下)

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小説(1分以下)
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#私の作品投稿

10秒小説『豆腐メンタルジャーニー』

10秒小説『豆腐メンタルジャーニー』

 御社を志望した動機は、自分を変える為です。自分に対する周りからの評価を変たい。真剣にそう思っています。
 学生時代私は、"豆腐メンタル"というあだ名で呼ばれていました。バイト先でも店長から"お前の精神は"豆腐のように脆い"と指摘されました。
 御社に入ればきっと変えることが出来ます。
 御社の下で私は、”固い豆腐”を作ります!歯が欠けるほどに!もう誰も「頭をぶつけて死んでしまえ!」なんて軽々し

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40秒小説『背に腹は変えられぬ?』

40秒小説『背に腹は変えられぬ?』

 金満家の老人が死んだ。若い妻との情事の最中に、心臓発作を起こして。
 遺産は遺言通り、すべて慈善団体へ寄付される。事件性は無いと思われたが、刑事が妻のもとを訪れ、形式的な質問をする。
「夜の営みをされている最中に亡くなられたと聞いていますが、奥様から誘われたのですか?」
「いえ、私は止めたんです。夫は心臓の薬を飲んでいたので。でも"俺は死ぬ時は、お前の腹の上で死にたい"と言われて」
「そうですか

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40秒小説『盲点』

40秒小説『盲点』

 最低一人はスタッフをリストラするよう、本店から指示があった。店長の私は抵抗した。だが上層部の考えは揺らがなかった。
 私は悩んだ。スタッフは皆優秀でしかも情熱に溢れている。
 「君は、今日でクビだ」「明日から来なくていいよ」「君はうちの店に必要ない」なんて台詞、絶対に言いたくない。彼らはこの店にとって、一人として欠けてはならない存在なのだ。

 私は、スタッフの優秀さを証明しようと考えた。彼らの

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10秒小説「キャンディー」

 新発売の飴。
 商品名「初キッス味のキャンディー」
 発売と同時に飛ぶように売れ、「口に入れた瞬間、懐かしい記憶と感覚が蘇る」とバズりまくる。
 だが好評だったのは一瞬。直ぐにクレームが相次いだ。その理由。
「2個目から味がしない!」

10秒小説『looser』

10秒小説『looser』

「お手拭き何枚お入り用ですか?」
「ちょと聞いていいですか?」
「はい?」
「お手拭きって、最大何枚までお願いできるんですかね?」
「え?」
「だから、MAX何枚までお願いできます?」
「特に何枚までとか決まりはありませんが……」
「じゃあ、何枚でもいいんですか?」
「はい、まぁ」
「じゃあ、とりあえず5万枚」
「嫌です!」
「ええー!さっき何枚でもいいって言ったじゃないですか?!」
「ええ、何枚

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10秒小説『けんてい』

 『さかなのこ』が好評らしい。釣りガールてのも流行ってるそうだ。魚に詳しいっていいかも?そんな矢先、さかなクンが監修した検定試験『さかなクン検定』なるものが出来たと聞き、早速テキストを取り寄せて勉強開始した私。
 
第一問
 さかなクンの本名は?

 え?さかなクン検定って・・・

30秒小説『episode-1』 

 ノートを拾った。黒い革の装丁。『DEATH NOTE』って書いてある。高そうなノートだ。表紙をめくると、裏に何やらゴチャゴチャ書いてある。説明書き?馬鹿にすんな!ノートの使い方くらい知ってる。
 拾った物は俺の物。日記帳にするかメモ帳にするか――でも待てよ、持ち主が現れて「返せ」とか言われたら面倒だなぁ。特徴のあるノートだからなぁ……そうだ!最初のページにでっかく自分の名前を書いておこう。ふふふ

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1分小説『注文を聞かない寿司屋』

1分小説『注文を聞かない寿司屋』

「大将、イカ握って」
「……」
「大将、イカお願い」
「……」
「大将、イカ」
「……」
「聞こえてる?イカ握ってって!」
「……」
「え?無視?」
「……」
「イカ!握ってよ」
「……」
「無視しないで!」
「……」
「え?なんか急いでるの?用事?」
「……」
「待って!イカ握ってからにして」
「……」
「俺、客だよ?客が注文してんだよ?」
「……」
「自分の用事より客が優先だろ?」
「……」

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30秒推理小説『未必の恋』

30秒推理小説『未必の恋』

「順を追ってお話しします。妻が料理を作ってくれました。ここ半年ほど離婚話で揉めてましてね。危機的状況だったので、料理を作ってくれるなんて本当に久しぶりで少し驚きました。でも正直嬉しくもありました。『やり直せるかもしれない』って。ええ、別れたがってたのは妻の方で、僕は別れたくありませんでした。学生時代からの恋女房でしたから……すいません。話を戻します。しばらくして妻がトイレに立って、僕は自分の肉じゃ

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50秒小説『ぐるり』

50秒小説『ぐるり』

「お客様、もうおよしになった方が――」
「あ?いいから注げ!何ならボトルごと寄越せ!」
「これ以上はお体に障りますよ?」
「あん?誰が俺の体に”触る”って?お前ぇか?お前が俺の体に触るってーのか?お前そーゆー趣味があんのか?」
「いえ、ございません」
「じゃあ俺と同じだな?ん?待てよ。同じってことはつまり2人とも同じ趣味ってことか?うん。じゃあどうだ?この後俺の部屋で――」
「ご冗談を――」
「冗

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20秒小説『スージーは弟が欲しい』

「スージー、お庭にパンなんか撒いちゃダメよ!ネズミが集まって来ちゃうでしょ」
「違うのママ、私、弟が欲しいの」
「弟?」
「そう、だからパンを撒いたの。パンを食べにコウノトリさんがやって来るの。そしてお礼に可愛い弟を連れて来るの。ふかふかの籠に入れて」
「スージー。コウノトリさんは来ないの。いいからお部屋に戻ってお勉強なさい」
「はーい、ママの言う通りにするわ。だからママも私のお願い聞いて頂戴」

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30秒小説『Bad trip』

30秒小説『Bad trip』

「竜宮名物、踊り子の舞、存分に楽しんでください」
 乙姫ニッコリ微んで、大きく3度手を叩く。
 太郎想像する――美しい魚が優雅に舞う光景。

 暫くすると朱塗りの柱の裏から、大量のナニカが溢れ出てきた。
 それは鯛でも平目でもなく――
 極彩色の海鼠、海星、海月、雨降、雲丹、沙蚕、etc.
 ぬるぬる蠢く彩の氾濫、psychedelicな音と光、太郎くらくらTrip寸前。

「あのぅ、乙姫様」

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