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50秒小説『ぐるり』

「お客様、もうおよしになった方が――」
「あ?いいから注げ!何ならボトルごと寄越せ!」
「これ以上はお体に障りますよ?」
「あん?誰が俺の体に”触る”って?お前ぇか?お前が俺の体に触るってーのか?お前そーゆー趣味があんのか?」
「いえ、ございません」
「じゃあ俺と同じだな?ん?待てよ。同じってことはつまり2人とも同じ趣味ってことか?うん。じゃあどうだ?この後俺の部屋で――」
「ご冗談を――」
「冗談だよ!当たり前だ!そんなこたーどーでもいい。兎に角もう一杯だ」
「すいません。これ以上は――」
「んだとこの野郎!いいよいいよ。せっかく気に入ってたのによーこの店、マスターのせいで台無しだよ。よし、当てつけに、この店から世界一遠いバーで飲み直してやる!」
「……そんな遠方まで?」
「なぁに、隣のバーにな」

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