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或虎
2023年12月1日 23:26
荒野を一人行く旅人がいました。旅人は女の子でした。とても短いスカートを履いています。それを見て太陽が言いました。「ねぇ、北風くん」「なんだい?太陽さん」「僕と勝負をしないか?」「勝負?どんな?」「”どちらがあの子のスカートを脱がせることができるか”」「ふーん、面白そうだね。でもいいの?」「何が?」「絶対に僕が有利だよ?だって僕北風だよ?」「そう思うかい?じゃあ勝負するね?」「
2023年12月2日 01:25
「役員の半数を女性に変えろ!分かったな?!」 会長の命令は絶対だ。私は今日まで、会長の言葉に疑いを抱かず、そのまま受け入れててきた。私だけじゃない。ここにいる役員全員がそうだ。脳死状態で、会長の命じるがままに行動してきた。だがしかし――。「考え直してください」「逆らうのか?山本、説明した通り、我が社には、女性目線の価値基準が致命的に欠けている。変わらねばならんのだ!このまま、旧態依然とした経
2023年12月10日 14:14
見てるぞ メモを手に、動きが止まる。履きかけの靴、踵を潰したまま、玄関のドアポストを見る――誰だ?!こんなメモを入れたのは? ”見てるぞ”――脅し文句?悪戯?爪先をとんとんして踵を靴に押し込む。 翌朝、出勤しようと玄関を出る。廊下にパンをトーストした匂いが漏れている。階段へ向かう。途中で立ち止まる。振り返る。ドアポストに紙が挟まっている――昨晩帰宅した時には無かったはずだ。戻る。引
2023年12月26日 00:13
仲間は皆、とっくに飛び立っているというのに一羽だけ水面に浮いている。早く暖かな場所へ移動しなければ凍え死んでしまう。だが羽を怪我している。 水がきんきんだ。水掻きが冷え切って感覚がない。でも動かすと痛い。餌も少ない。見上げる。どうして空はあんなにも高いのだろう。どうして神さまは、優しくないのだろう。障害のある鳥のために、もう少し小さな空をつくってくれたらいいのに。 視線を水面に戻す。仲間が