マガジンのカバー画像

73
運営しているクリエイター

2024年6月の記事一覧

散文詩『ありふれてあふれている光』

 群れなす電子音に紛れ改札を通り過ぎた時、魂が微かに欠けた。睨むべき先も見当たらず、憂さ晴らしに"人濁流"(じんだくりゅう)などという造語で人民を罵倒してみるが尚足りず、仕方なく台詞を吐き出す、点光源のように。
「地上へ」
 言わずもがなだ。私は地下鉄の駅から這い出て会社に向かっている。私だけじゃない。多分この濁粒子の一つ一つ、行き着く先こそ違えど、ひとまずは地上を目指さしているはずだ。誰も敢えて

もっとみる
詩『コーヒー岡田.2024.06.22』

詩『コーヒー岡田.2024.06.22』

腹を満たすというより時を満たす為
生活の治外法権にあるカフェ
タマゴサンドをこぼし
ブラックコーヒーで苦笑い
中年一人男に相応しい席は無く
4人掛けの角 5番目の椅子
存在しない対角の席を見つめ
ドレッシングの酸味
冷水の甘味
表情筋をOFFって
スマホの中に身を潜める
信号待ちのバイク音
誰も居ないグランド
カフェイン染みた電子文字
ポケットに手を入れ
車のキーに触れる

詩『穀物學校2024.06.26』

詩『穀物學校2024.06.26』

聞き取れない声の群れ
肉声そして肉スピーカー
フォークが皿を打つ
こめかみで揺れる眼鏡
グラスと氷のセッション
死体は常温のお絞り
暖色に染まる卵殻
イギリスパンの破裂音
すべてが吹き抜けず籠もっている
AMからPMへのグラデーションに

『テーブルの上の交差点』
時に渋滞し
時に激突し
時にすれ違った言葉
感情
テーブルの上の交差点
ダウンライトが照らしている
時間
手をかざす
陽に似せた波長

もっとみる