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2023年12月の記事一覧

詩『絶望製作所(株)』

詩『絶望製作所(株)』

灰色の空の下に工場がある
灰色の塀 灰色の煙突
輪郭を空に押し付け
境界線を曖昧にしている
マリー・ローランサンが描いた背景のように

「あの工場は何を作っているの?」
子供が問う 貴方が答える
「昔はね、あそこで希望が作られていた」

カラスが塀に止まる
漂ってきた煙を吸って
ぼとりと地面に
 
「今は何も作っていない」
貴方は仮面を被っている
灰色の仮面
工場の色によく似ている
「でも煙が出て

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詩『球体地獄』

詩『球体地獄』

 瞼を喪失した眼球は、剥き出しのアイを粘度の高い涙で覆い隠そうと必死でした。
 
 そんなひ弱な眼球を一本の指が執拗に責め立てます。眼球の球体たる所以である曲部をなぜてはなぜて、でっぷりとした指の腹全体重でのしかかり、激しくそして時に激しく、永続器械運動をメタファーしました。(ここでモアイと金剛力士像の戦闘シーンを挿入)。
 そして時に指は爪を立て、眼球を苛みます。その瞬間には眼球は瞼よりも脚が欲

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散歩詩『Alexa、サカナクションをかけて』

散歩詩『Alexa、サカナクションをかけて』

引き潮の河口
魚跳ねすぎ
川面にうっすら
五線譜

腹が減る
誰かに触れたくなる
本能に怯える朝

空が低い
棒高跳びが
出来るなら

Alexa
鼓動のボリューム下げて

雲を読み歩く朝
空よ
その詩
いつ考えた?

跳魚の波紋
重なりし和音
靴音と鼓動合わせ
『Native dancer』

詩『ベテルギウスでキスをせむ』

触れるほど近くに見ゆれど
彼方にありし君が唇
この心を恒星間移動しせば
待ち居給へ
ベテルギウスでキスをせむ

詩『きみがしかにしかみえない』

詩『きみがしかにしかみえない』

きみしかみえない
きみがしかにしかみえない
しかかかかしにしかみえない
しかしかかしかしかわからない
しかいがしかとかかしでふさがれている
きみがしかであれかかしであれ
ぼくのきもちはかわらない
わからない?
わかりにくいよね?
かたたたきとかつおのたたきくらい
かわりにわりにわかりやすいことばでつげるよ
あいしてる

詩『もつれた色彩』

 ビー玉のもつれた色彩、涙腺から流れる。
 ゆらめいて落つ滞空時間に、涙がビー玉をフォーカスし、色彩を転写したのだそれは、私がもっとも大切にしていたビー玉、色彩だけでなく思い出が内包されている。それを失うのだ今から、友達との勝負に負けて。
 友達の掌に、ビー玉が消えた。どうせなら涙も一緒に奪えよ、私はまだ数年しか生きていないというのに、この先これ以上の悲しみはないだろうと感じた。
 友達の掌が開い

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