詩『球体地獄』
瞼を喪失した眼球は、剥き出しのアイを粘度の高い涙で覆い隠そうと必死でした。
そんなひ弱な眼球を一本の指が執拗に責め立てます。眼球の球体たる所以である曲部をなぜてはなぜて、でっぷりとした指の腹全体重でのしかかり、激しくそして時に激しく、永続器械運動をメタファーしました。(ここでモアイと金剛力士像の戦闘シーンを挿入)。
そして時に指は爪を立て、眼球を苛みます。その瞬間には眼球は瞼よりも脚が欲しいと切実しました。でもそんな悍ましいカトゥーンは、北斎でもSo badです。
「山頭火がTwitter(新『X』)をしたらバズる?」
かと思えばバッタが飛んできて眼球を抱える様に止まりました。指がバッタを払いましたが。それはただの独占欲の成せる業です。
飛んで行くバッタの腹が、金属のパーツでできているのを認めて、眼球は冷蔵庫のハミングに歌詞を付けた日を思い出しカナシクなりました。
眼球はもう人生を終えたいと願いました。しかし瞼が無いので幕を降ろすことができません。
仕方なく「生きよう」とノリで決意した眼球、「そうだ!SOSだ!」と電球のアイコンを浮かべ、涙腺を手繰りましたが、涙腺は既にへその緒以上に干からびていて、完全に完全にかんぴょうになっていました。でも仄かにキャラメルの匂いがします。ちょっと笑いましたよ。
いつしか指は無数となり、眼球は果てることも乾くことも赦されずに、世界を凝視し続けるのです。
嗚呼
「瞼さえあれば――」と憤りに似た悲しみ。
永遠に次ぐセンセーションの連なり。
三歳の柴犬。
きっと瞼の野郎今頃、南の浜辺でビーチパラソルだ!
眼球が血管を漲らせる。出来るはずの無い黙祷を捧げる為に。
他人事?いえ、読了した=貴方の眼窩で起こった現実。
すべての眼球が球体地獄。その事実、あと3秒間だけ持続して幕。
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