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ストーリー作法の基本⑦ストーリーの”練り上げ”とプロットの“熟慮”(ストーリーを「一気に」仕上げることはできない)

 前回は「テーマを決め、それに沿ってストーリーを考える」という方法で、平凡な現代の若者を主人公とする中編小説或いは90分以内の劇映画のストーリーを試作してみました。ありがちで途中から先が読める話だと思われたかもしれません。しかし、そう思われる方は、1980年代くらいまでのハリウッド映画やエンターテイメント小説の代表的な作品を観たり読んだりしてみれば、まさに「ありがちで途中から先読みできる」話が多いことに気づかれるでしょう。
 先が読めないストーリーは、受け手に知的な「謎解き」を要求しているのであり、それを求める人々の需要に応じていると言えます。しかし、そのような「謎解き」的な要素がテーマと釣り合わないほど多ければ、受け手は混乱するか途中で飽きるかするでしょう。また、現代の平凡な都市生活者を主人公とする日常的なストーリーが、「ありがち」な話になるのは、ある程度は避けられません。
 しかし、どんな舞台設定をしようが、どんなジャンルを選ぼうが、あなたが天才でもない限り、最初に思いつくのは大抵、「ありがち」なストーリーです。テーマに沿って作られたストーリーに新奇さを与えられるとすれば、それはストーリー自体の練り上げとプロット構成の熟慮によるしかありません。「一気に」長編の傑作が書き上げられるなら、誰も苦労したりはしません。

 今回は、ストーリーに新奇さの印象を与える方法について述べます。それは大別して、ストーリーの構成要素を明確化してより意味深くするやり方と、プロット構成がテーマに沿うよう工夫するやり方に分けられるでしょう。

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