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今日、どこかの教室で #5

新型コロナウイルスで休校になった学校を舞台にした創作ストーリーを会話形式で綴っています。2000文字ほどですぐ読めます。

※完全一話完結です。この記事だけでも是非読んでください。

#4はコチラ !!
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欧米でもアジア人差別が話題になっていますが、同じように穏やかでない教室もどこかにあるかもしれません・・・。

3月6日 ○%☆中学校・2年3組
生徒・劉宇辰(14)、相澤光喜(14)と先生・橋本善(51)の場合。

橋本「光喜・・・いいから入って来いって、寒いだろ・・・」

光喜「嫌だ」

橋本「大丈夫だって。劉君はちゃんと検査して陰性になってるんだから、そうだよね?」

宇辰「はい」

橋本「ほら」

光喜「でも本当かわかんないよ、中国の検査なんて」

橋本「ちゃんと日本で検査したんだよね?」

宇辰「はい。中国でもちゃんとした検査してますよ」

橋本「それは、そうだね」

光喜「・・・寒いから入る」

橋本「ふぅ・・・」

光喜「劉君端っこ行って」

宇辰「わかった」

橋本「劉君・・・ごめんね」

光喜「先生だって本当は怖いんでしょ?中国人と一緒にいるの」

橋本「そんなことないよ」

光喜「嘘だね、僕たちが仲良くしないと教頭先生に怒られちゃうから仕事として仲良くしてるんでしょ?」

橋本「いい加減にしろ光喜」

光喜「なんで怖がっちゃダメなの?」

橋本「感染してないからだよ」

光喜「でもどっかで中国人が悪いと思ってるでしょ?今回のこと」

橋本「いや、しょうがないと思ってるよ。病気なんだから誰かのせいなんかじゃないと思ってるよ」

光喜「中国じゃなきゃもっと抑えられてたとか思わない?」

橋本「それは・・・こうなっちゃったんだからしょうがないと思ってるよ」

光喜「しょうがないって?」

橋本「たまたま中国の田舎の方でウイルスが発生しちゃって、医療とかも発達してなかったから上手く抑えられなかったんだよ。不運だったとしか言いようがないよ」

光喜「でももっと早く中国の一番偉い人が対策とってればよかったんじゃないの?」

橋本「そんな中国なんて広い国で、技術も発展しきってないんだから、日本みたいに上手くはいかないよ」

宇辰「先生」

橋本「あぁごめんね劉君。中国の仕組みがたまたま遅れてただけで、中国人が悪いとかましてや劉君は馬鹿だとかそういうこと言ってるんじゃないからね」

宇辰「いろいろ違いますよ、先生」

橋本「え?」

宇辰「まず。中国が遅れてるとか、全然中国の人思ってないです」

橋本「そうなの?」

宇辰「詳しいことはわかんないけど、コンピューターの分野では日本より優秀な人たくさんいるってお父さん言ってました」

橋本「人がたくさんいて、賃金が安いから工場が集まって経済が潤ってるって勉強したんだけど・・・」

宇辰「多分昔の話です」

橋本「ごめんね・・・」

宇辰「あと、武漢全然田舎じゃないです。毎年帰ってるからわかります」

橋本「そうだったの?」

宇辰「北京、上海、広州、成都とかの大きな町どこでも同じくらいの場所だから、海外の会社とかいっぱいあるし、学生もいっぱいいます」

橋本「知らなかったよ・・・」

光喜「先生なんも知らないじゃん、担任のくせに」

橋本「ごめんね・・・勉強する時間なくて・・・」

宇辰「大丈夫ですよ。僕と僕の家族は日本好きで来てますから」

橋本「ありがとうね」

宇辰「武漢の大学、桜が有名。日本がくれたらしいです」

橋本「へぇ」

宇辰「僕の親戚も家から出られなくて、大変な思いしてるけど、春になったらあの桜またみられることを励みにしてるって」

橋本「なんか・・・本当に申し訳ないよ」

光喜「でも日本にきた中国人のせいでこんな大変なことになってるんでしょ?」

橋本「だから違うって、誰のせいとかじゃないって。それにこれまでに日本に来てくれてた中国からの観光客のおかげで日本にいっぱいお金入ってきたんだよ?それは合ってるよね、劉君?」

宇辰「はい」

橋本「だからもうそういうこと言うのやめようよ・・・」

宇辰「僕わからないよ。相澤君なんでそんな怒ってるのか、学校休みになって楽ちんだし、相澤君友達そんなにいないから、さみしくはなさそう」

光喜「うっ・・・」

橋本「こらこら・・・」

宇辰「なんで困ってるの?」

光喜「教えない!」

橋本「やったTWICE振替いける!!」

光喜「TWICE?」

橋本「なんでもないよ。勝手にスマホみてたりしてないから」

光喜「先生K-POP好きなの?」

橋本「ああそうだよ。気持ち悪いよね、おじさんなのに」

光喜「全然そんなことないよ。いいよねK-POP」

宇辰「僕も好きですよ」

光喜「あ、そうなの?」

宇辰「宇宙少女、中国の人メンバーにいる」

光喜「え、マジ?宇宙少女しってるの?」

宇辰「知ってるよ、好きなの?」

光喜「まぁ、コンサート行ったことあるくらいだけど・・・」

橋本「めっちゃ好きじゃん!もしかして怒ってたのって・・・」

宇辰「宇宙少女もコンサート延期になっちゃったもんね」

光喜「違う!」

橋本「なんで中国人メンバーにいるのに中国嫌いなの?」

光喜「中国人じゃなくて、ソンソとソニとミギだよ・・・」

橋本「それだよそれ!」

光喜「え?」

橋本「中国人じゃなくてそれぞれ色んな人がいるんだよ!それをわかってるならなんであんなこと言うんだい?」

光喜「お父さんとお母さんがいつも言ってるから・・・宇宙少女のファンしてることは秘密にしてる」

橋本「それは、大人を代表してごめんだよ。これからは劉君と仲良くできる?」

宇辰「一緒にライブ行こうよ!」

光喜「わかった・・・お父さんとお母さんにもちゃんと話する・・・」

宇辰「やった!」

橋本「よかったよかった」


ー了ー

生徒たちは登校できませんが、僕は毎日投稿していくつもりです。

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